情熱は睡眠欲求に勝る

Rinさん そんな中、整骨院に勤める知人から「独立開業するので待合室の壁に飾る絵を描いて欲しい」という依頼がありました。当時描いていたパステル和アートの用紙サイズは15cm角であり、ご依頼のポスターサイズを描き上げるのにとても苦労しました。そこで、パステル以外の画材も検討するようになったのです。

整骨院

私は美大出身でもないため、ほかの画材と言ってもどうしたらいいのか分かりません。習いに行くにはお金もかかります。手探り状態で、水彩絵の具やアクリル絵の具を購入して試してみたり、本を読んで学んだり、YouTubeで使い方を見て学んでみたりしながら、自分が思い描く世界を表現できるのはアクリル絵画だという結論に達しました。

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Rinさん 主婦なので、やはりなるべくお金をかけない方法を考えちゃいますよね。絵画に専念するようになったのが2016年頃ですが、そのころの生活サイクルは……家族が寝静まった夜中0時くらいから2~3時間ほど絵を描いてから就寝。6時に起床して家族を仕事や学校に送り出して私はパートに向かうという、睡眠時間の少ない生活を毎日続けていました。

社畜も真っ青なスケジュール……! 眠くて描けなくなったりしないのですか?

Rinさん 眠気よりも楽しさが勝っていました。とにかく描くことが楽しくて寝るのがもったないなくて、睡眠時間を削っても気力で動けたんです。自分の初の個展開催を夢見て、描きためていこうと作品作りに没頭しました。

決意から1年で個展開催を実現

個展の風景

Rinさん 制作をスタートして1年後、友人にギャラリーオーナーを紹介してもらい、企画展のお誘いを受けることになりました。複数のアーティストが出展する企画展の予定だったのですが、皆さんの都合がつかず、結果的に私の個展を開催することが決まりました。
また、並行してSNSに投稿した作品を見た関係者に声をかけられ、兵庫県芸術家協会主催の神戸開催イベントに参加が決まりました。このイベントつながりで、その翌月には関西と九州を結ぶフェリー「さんふらわあ」の船内で季節と海のオリジナル作品「癒しアート」枠で作品を展示しています。

自動車アート
トヨタエスティマV車体に描く

Rinさん この頃から、胸の異変をたびたび感じるようになりますが、上の子の高校受験や私の新しい仕事がすでに決まっていたこともあり、病院へ行くことを先延ばしにしていました。
このタイミングで、カフェを開業した友人に(カフェ内での)個展開催を誘われます。実はこの友人、乳腺科の看護師だったのです。休憩時間中に雑談がてら自分の胸の違和感について話したところ、すぐに検査を勧められました。しかもカフェのすぐ裏が乳腺外科専門の病院で、友人は信頼できる院長先生だと言います。私は無宗教ですが、これはもう神様が「病院へ行きなさい」と言っているのではないかと思い、受診を決意しました。

大病発覚、生きがいを手放す

Rinさん 検査した当日、先生からは「残念だけど、治療が必要かもしれない。詳しく調べてみましょう」と言われ、頭が真っ白になり病院の駐車場でひとり泣いたことを覚えています。1週間後の検査結果で、乳がんを告げられました。
私は治療に専念するために、これまで続けてきた講座や個人レッスン、イベントを一切キャンセルすることになりました。夢中になって頑張り続けてきたことをすべて失ってしまい、この時はさすがにつらかったです。

その後、標準治療をひと通り受けることが決まり、次から次へと治療の選択が迫られました。家族のこと、仕事のこと、薬の副作用による体調不良、自分の命のこと、未来のこと……頭の中は不安でいっぱいで、つらく過酷な治療の日々に、あんなに楽しかったはずの絵を描くこともできなくなってしまいました。
そんな時、娘に「絵は家でも描けるでしょ。きっとこういう時のためにママは絵と出会ったんじゃない? たくさん描いたらいいよ」と言われ、私はまた筆を執ることができるようになったのです。

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