① 金貨・金地金

●メリット: 金の現物を手元で保有できる
●デメリット: 盗難リスクあり、保管コストが掛かる、手数料が高め(少量だと特に割高)、売却益が一定額を超えると確定申告が必要

・金貨

最も手軽に金を所有する方法は金貨の購入だろう。宝飾店やデパートなどで購入できる。有名なものでは、オーストラリア・パース造幣局発行の「カンガルー金貨」、オーストリア造幣局発行の「ウィーン金貨ハーモニー」、カナダ王室造幣局発行の「メイプルリーフ金貨」などがある。

購入は1/10トロイオンス(約2万円)、1/4トロイオンス(約4.5万円)、1/2トロイオンス(約9.5万円)、1トロイオンス(約19万円)が一般的(1トロイオンス=約31.1035g、2020年6月末日現在)。

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金貨は美しいデザインのものが多く、持っているだけで金投資の実感を味わうことができる。

・金地金

金地金は「インゴット」や「バー」ともいい、平らな板状の形をしている。一般的に「金の延べ棒」と呼ばれるものがこれにあたる。表面には通常、金塊番号、販売元の商標、重量、素材、品位(ほとんどが純度99.99%(フォアナイン)の純金)、精錬分析者マークなどが記載される。

金地金は地金商や金属メーカー、商社などで購入が可能だ。購入できる地金のサイズは販売業者によって異なるが、最低は1gからで5g、10g、20g、50g、100g、200g、300g、500g、1kgなどとなっている。

1gあたりの手数料・税込の販売価格は約6500 円(2020年6月末日現在)。なお金地金の購入には消費税がかかるが、売却時には逆に消費税額を受け取ることができる。

金貨・金地金への投資では手元に金の現物を保有できるのがメリットだが、一方で大きなデメリットは盗難リスクだ。耐火金庫(小型金庫で3~10万円程度)を購入して自宅に保管したとしても、盗難リスク自体はなくならない。銀行などの貸金庫(年間手数料2~5万円程度)や、販売業者の保護預り(年間の保管手数料等で無料~3000円程度、金額は重量等によって異なる)を利用するのも手だが、追加のコストが発生する。

税金については、一般的な会社員などのケースでは、積み立てた純金を売却した場合の所得(譲渡益)は譲渡所得として課税され、その他の所得と合わせて所得税の総合課税対象となる※6。年末調整をしている会社員であっても、給与・退職所得以外の所得が一定額を超えると確定申告が必要となるので注意しよう。

② 純金積立

●メリット: 少額から始められる、自動積立ができる、盗難リスクなし、金の現物に交換できる
●デメリット: 手数料が比較的高め、保管方法により業者の破綻リスクあり、売却益が一定額を超えると確定申告が必要

金貨や金地金への投資は投資額が比較的大きく、また投資のたびに購入手続きをするのも面倒なもの。そこで販売業者(地金商、金属メーカー、証券会社、商品先物業者など)が提供をしているのが「純金積立」という方法だ。

純金積立は、申し込みをしておけば定額または定量で毎月自動的に金を購入してくれる方法で、通常1000~3000円から1000円単位で積み立てができる。定額での積み立てであれば「ドルコスト平均法」によって、定量で買うよりも購入単価を抑えることもできる。業者によっては、積み立ての月額を営業日で日割りして、毎日少額で購入してくれるところもある。

株式や投資信託などと同様、インターネット経由で純金積立の申し込みをできる業者も増えてきている。またスポット取引を利用することにより、ボーナス月などで毎月の積立額に加えて臨時で買い増すこともできる。

手数料としては、金地金と同様に売値・買値のスプレッドが掛かるほか、購入手数料、入会費・年会費(無料~1000円程度)、保管手数料(無料~年間3000円程度)がある。

特に購入手数料は2.5~3.5%掛かるケースが多くなっている。金のETF(0~0.1%)や投資信託(0~2%)の購入手数料などと比較するとやや割高といえる。

積み立てた金の引き出しや、ジュエリーや金貨への等価交換ができるのは純金積立のメリット(交換できないところもある)。ただし等価交換の場合、3000~5000円程度の引き出し手数料と郵送手数料が掛かることがある。

なお、純金積立において、長期投資の観点で最も注意しなければならないのが「保管方法」。純金積立における金の保管方法は、「消費寄託」と「混蔵寄託(特定保管)」の2パターンある。

「消費寄託」は銀行預金と同じ仕組み。金の保管会社(販売業者)が積み立てた金を使って運用することで、銀行預金の利息と同様、預けた人はその収益の一部をもらうことができる。ただし、所有権は保管会社に移っており、保管会社が破綻した場合には預けた資産が目減り・返却されないリスクがある(銀行預金は元本1000万円とその利息まで預金保険で保護される)。

「混蔵寄託(特定保管)」は複数の顧客から金を預かって混合して保管する方法。保管会社は預かった金を勝手に運用に使うことはできないので、運用収益の一部を利息として受け取ることはできない。ただし所有権は預けた人のままなので、保管会社がきちんと自分と顧客の財産を分別管理していれば、保管会社が破綻した場合でも預けた資産が戻ってくる。

純金積立ではほとんどが消費寄託での保管であり、混蔵寄託での保管は一部の販売会社に限られている。消費寄託で長期に投資をする場合には、保管会社の経営状況に注意しておく必要がある。

純金積立における税金は、金地金と基本的に同じとなる。

③ 投資信託

●メリット: 少額から始められる、自動積立ができる、証券口座で一元管理ができる、業者の破綻リスク・盗難リスクなし
●デメリット: 金を手元に保有できない、管理費用が金ETFと比較して高め

投資信託とは、投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株や債券、商品などに投資・運用し、その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みの金融商品。金の投資信託は金現物や金に連動する金融商品に投資をすることになる。

投資信託の大きなメリットの1つは、証券会社や銀行といった販売会社で少額から購入が可能なこと。最近では最低購入金額が100円となっている証券会社も出てきた。また、投資信託で運用される資産は顧客の財産として信託銀行で分別して管理されることが法令で定められているので、万が一投資信託にたずさわる金融機関が破綻しても保有している資産は保全される。加えて保有残高は証券口座に記録されるので、資産を盗難される心配もない。

一方で、金の投資信託を購入したとしても、投資信託の値段は金の価格に連動するものの、あとからその投資信託を現物の金に交換してもらうことはできない。

投資信託の主な手数料としては、販売時の手数料(0~2%)のほか、保有残高に従って管理費用(信託報酬など)が掛かる。管理費用は金の投資信託によって異なるが、年率で0.5%から0.8%(税抜)の程度の割合で保有期間に従って日割りで課金される。金の投資信託はまだそこまで種類が多くないため、株式の投資信託などと比べるとこうした手数料は少し高めとなっている。

金の投資信託の税制は通常の株式や投資信託と同様。売却益については譲渡所得として申告分離課税となるが、「特定口座(源泉徴収あり)」を選べば源泉徴収をされて確定申告が不要になる。株式や投資信託との損益通算も可能だ。

[参考文献]
※6)国税庁「No.3161 金地金を売ったときの税金」(平成29年4月1日現在)

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