ライフサイクルファンドの計画性について

ライフサイクルファンドの特徴は、投資の対象となる資産の割合が時間の経過とともに、「計画的に変化する」という点です。「計画的に変化する」とは、投資を開始した時点で、投資の対象となる資産の割合を「いつ」、「どんな割合に変化する」のかが決まっている、ということです。

ということですので、一部のバランス型ファンドのように、市場の動向や社会情勢に応じて「投資の対象となる資産の割合が能動的に変化する」わけではありません。
(市場の動向に応じて資産の割合を能動的に変えるタイプのバランス型ファンドは、「アセットアロケーションファンド」などと呼ばれます)

また、本稿で表にまとめたライフサイクルファンドの場合、償還(=ファンドの運用が終わる、つまり商品が終わる)の日が設けられていますが、ライフサイクルファンドによっては、償還日が明確に定まっていないものもあります。

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なお、償還の日は、投資のパフォーマンス(例えば「元本割れしない」「最低でも○%のリターン」など)を約束するものではなく、単に「商品が終わる」というだけのことです。
つまり、計画性があるとはいっても、投資の対象となる資産の割合が時間の経過とともに「計画的に変化する」だけのことです。

ライフサイクルファンド……そのコンセプトは?

先に述べた通り、ライフサイクルファンドは、バランス型ファンドの一つです。
バランス型ファンドのコンセプトは「株式の成長性」と「債券の安定性」という、異なる特徴を組み合わせる点にあります。「株価と債券価格、その傾向が真逆」という相性の悪さによって、株式の特徴である「企業の成長を数字で表した『株価』の伸び」に期待しながら、株式投資ではどうしても避けられない「価格変動リスク」を債券で抑える、というものです。

そして、バランス型ファンドの一つであるライフサイクルファンドは、当初は株式をメインに、そして時間の経過とともに債券をメインに運用する、つまり「成長」を先に、「安定」を後にという、まさに人間の成長プロセスに近いイメージを描いているともいえるかもしれません。

「未知の未来への投資」に、ライフサイクルファンドの計画性は?

ところで、ライフサイクルファンドといえども投資商品の一つですから、やはり「未知の未来への投資」という点も同じです。しかし、どの投資商品も過去の実績を調べ、過去の情報を収集することは十分に可能です。それは投資のプロにとっても、素人にとっても、変わりありません。

先ほど、筆者は「債券の安定性」と申しました。債券の安定性とは2つあります。一つは債券の利息収入のことであり、もう一つは、株価に比べれば、債券価格の上下のブレは小さい、という意味です。

ところで、分かり切った過去でもなく、未知の未来でもなく、今の債券の状況はいかがでしょうか?

長期国債の金利はゼロ%前後で推移しています。つまり、債券の利息収入がほぼゼロということです。また、債券価格は金利が低い方が債券価格の上下のブレが大きくなる傾向にあります。

ご存知の通り、日本銀行は2016年の2月にマイナス金利政策を始めました。
マイナス金利が始まって、まだ4年半ほどですから、過去の実績というには時間が短いかもしれません。
本稿で挙げたライフサイクルファンドも、販売を開始した2015年時点では、まだマイナス金利の時代ではありませんでした。

「債券の安定性」は、マイナス金利の今も通じるのでしょうか?

冒頭に申し上げた、「筆者は若い頃はバランス型ファンドに投資をしていたが、今では……」という理由は、実はここにあります。

ところで、ライフサイクルファンドで積立投資を行うと

さて、前稿ではお子様の教育資金を準備を投資で行う場合、「積立投資がふさわしい」と申し上げました。そこで、本稿で挙げたライフサイクルファンドで積立投資のシミュレーションを行ってみました。

投資期間 2015.9.30~2020.8.31
投資方法 積立投資
毎月の投資額※1 (~2019. 9.30)9,784円
(2020.10.31~)9,780円
毎月の投資時期 毎月の最終営業日
投資額の合計※1 586,996円
投資額+購入時
手数料の合計
600,000円
基準価額の平均 10,811円
取得口数の合計 545,445口
損益分岐点 10,762円
執筆時点で解約した
場合に得られる額※2
632,771円

※1 投資額は購入時手数料を考慮しています。
※2 税金等は考慮していません。なお、信託財産留保額はありません。

損益分岐点は基準価額の平均を下回っていますし、投資額+購入時手数料の合計に対して、執筆時点で解約した場合に得られる額の方が上回っています。
もっとも、積立投資の期間が5年と、筆者に言わせれば短いですし、またターゲットイヤーや償還の日はまだ先のことですから、ここで結論を申し上げることはできません。

しかし、17回目でも申し上げましたが積立投資は、どちらかと言えば基準価額の上下の振れ幅が大きな投資商品の方が向く傾向にあります。基準価額の上下の振れ幅が大きいからこそ、時間を掛け、時間の経過とともに投資する回数を増やすことで、損益分岐点を引き下げようという趣旨です。

そもそもバランス型ファンドは、性格の異なる資産を組み合わせることで、基準価額の上下の振れ幅を抑えようというコンセプトです。また、ライフサイクルファンドは時間の経過とともに、基準価額の上下の振れ幅を抑える傾向を、より強めていくコンセプトの投資商品です。
いかがでしょうか?

筆者は、ライフサイクルファンドは積立投資には向いていないのではないかと思います。

ライフサイクルファンドと純資産残高

さて、ライフサイクルファンドですが、意外にも純資産残高が少なめな商品が多いようにも感じます。ちなみに、本稿でご紹介させていただいたライフサイクルファンドも、純資産残高は1億円を少し超えるほどです。

純資産残高が少ないと、ファンドを維持、続けていくのが難しい場合が多いようです。純資産残高の多寡の目安は一概には言えませんが、それにしても1億円は少ないように思います。

また、過去に、やはり純資産残高が少ないためか、ターゲットイヤーを目前にして、繰り上げ償還を行ったライフサイクルファンドもあるようです。繰り上げ償還とは、運用を行っている会社の事情で、ファンドによる運用を止めてしまうことです。

まとめに代えて

ライフサイクルファンドは欧米では「ヒット商品」と聞いておりました。我が国ではヒット商品というイメージがありませんでしたが、やはり純資産残高が少ない商品が目立ちました。

お子様の教育資金を準備なさる場合、すでに学資保険などを契約済みの方や、家計の事情で積立投資が難しい方は、ワンショット(一回限り)で、ライフサイクルファンドを選ぶと良いかもしれません。例えワンショットでも、ライフサイクルファンドは1万円から投資することができます。

とはいえ、なるべく純資産残高が多いものを検討なさった方が良いでしょう。
また、投資額が3万円や5万円などの場合は、一万円ずつ、複数回に分けて投資なさった方が良いでしょう。

大切なお子様の将来の教育資金です。投資は未知の未来への投資であることは、ライフサイクルファンドも同じです。

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