5Gの普及がさらなる進化をもたらす

実際に自分が5メートルになったわけではないけれど、あたかも自分が巨大ロボットと一体化し、5メートルになったような感覚が得られるということですね。本来人間が経験したことのないものでも、VRならリアリティを持って体験できるのでしょう。実用化されれば災害時の復旧や救助などでも大活躍しそうです。

ちなみに2013年の米国映画『パシフィック・リム』に登場する人型の巨大ロボット(=イェーガー)が、先生のイメージには近いそうです。確かにあの映画に出てくるロボットは、人間が中に乗り込んで操縦するスタイルで、人間とロボットの動きがリンクしていました。操縦席で歩くとロボットも歩く、というように。

しかも、あの映画に出てくる操縦席の「歩く仕組み」は、岩田先生が97年に作った技術とソックリだそうです。先生の研究は、ハリウッド映画にも影響を与えているかもしれません。

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岩田洋夫教授3

課題もいくつか見えてきましたが、今後VRはどこに向かうのでしょうか。先生はやはり「身体性の拡張」だとおっしゃいます。「人間の身体感覚や認知機能を拡張するツールとしてVRは最適です。さまざまなシーンで利用できるはずです」。

例えば、バーチャル旅行。VRゴーグルでもバーチャル旅行はできます。しかし見るだけでは、旅行をしたという感覚は得にくいでしょう。やはり実際に歩いたり、触れたりすることが欠かせません。

岩田 VRゴーグルを使ったバーチャル旅行は、いわば観光バスから景色を眺めているだけ。身体性を伴ったVRが実現すれば、バーチャルの世界でバスから下車して自由に観光できるようになるでしょう。

スマホの普及が大きな転機になったということでしたが、5Gの普及もVRの進化を加速させる要因になりますか。

岩田 なります。5Gの技術はデータの往復が非常に高速にできるので、触覚なども含めた双方向(インタラクティブ)のコミュニケーションが可能になると考えられます。物理的に離れた場所で、身体性を伴ったVRを相互に体験できるようになるかもしれません。

岩田洋夫教授4

他にVRの進化にプラスの影響を与えるものはありますか。

岩田 コロナ禍で人間の身体性の大切さが再認識されました。会議だけならオンラインで十分かもしれません。しかし画面を見るだけでは、人は満足できないのです。

触ったり、歩いたり……。

岩田 そう。飛んだり跳ねたり、いろんな行動がありますよね。でも新型コロナでリアルでの接触が制限される環境になってしまいました。だからこそ、VRの出番なのです。

わかりました。本格的なVR市場の拡大は、これからが本番ということですね。VRが今後、どのように進化し、私たちの生活に溶け込んでいくのか、とても楽しみです。今日はどうもありがとうございました。

~mattoco life編集部より~
いかがでしたか。バーチャルリアリティはいまに始まったテクノロジーではなく、実は長い歴史を持っていること、さらにコンピュータやスマホといったVRに欠かせない情報技術(IT)が進化したことで、ようやく実用化に向けた第一歩を踏み出したところということがわかりました。今後は、5Gをはじめとするさらなるインフラの拡充、そしてVRへの社会的ニーズの高まりによって、さまざまな産業でさらに実用化が進むことが期待できます。

mattoco Lifeより転載)

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