(4)微細な表面加工を行う「エッチング」

エッチングは、最先端のリソグラフィー装置で形成したレジストパターンに沿って、ウエハー上に塗布したフォトレジストを除去する微細な表面加工の工程です。半導体の製造ではリソグラフィーと並んで重要な工程となっています。

リソグラフィー工程でレジストパターンをウエハー上に形成したあと、そのウエハーをドライエッチング装置に入れて、マスクされた部分以外の層を取り除いてゆきます。ここではエッチング時の圧力、ウエハーステージの温度、ガスの組成比、エッチング速度を均一に保つことが重要な要素となります。

以前はウェットエッチングが主流でした。これは金属を腐食させる性質を持つ液体で化学的に溶融する方法です。現在でもこの方法はプリント配線基板の製造に主に用いられていますが、しかし半導体の微細化に対応するにはこれでは精度が不十分で、1970年代から低温プラズマを用いたドライエッチングが主流となりました。

新しいNISAの“裏技”教えます! ニッセイアセットマネジメントの情報発信&資産運用アプリ

ドライエッチングは、プロセスチャンバー(エッチング室)を真空状態にして、必要なガスを導入し、化学的な反応によってエッチングを行います。

エッチングに必要な要素は、プロセスチャンバー(エッチング室)、真空システム(配管、バルブ、ポンプ、圧力調整機能)、ガス供給システム(配管、バルブ、ガスボンベボックス)、高周波電源、およびこれらを制御する制御システムが必要です。

封入したフッ素系のガス内で高周波によって放電させると、電子がガスに衝突してイオンが発生します。これを繰り返してゆくと低温プラズマが発生し、それによってエッチングや次の工程である成膜などの反応を引き起こします。

(5)ウエハー上に層(膜)を形成する「成膜」

ウエハーの上に配線や絶縁などの層(膜)を形成してゆく工程です。

LSIはトランジスターの集合体です。トランジスターは、弱い電気信号を強い信号に変える増幅器としての役割があります。また電気信号の流れを高速でオン/オフに切り替えるスイッチとしての役割を持つ、きわめて小さな電子素子です。

トランジスターは半導体からできており、非常に高速で半永久的に動作する電子的スイッチと言えます。そのトランジスターの集合体がLSIで、スイッチとして機能させるために半導体膜と電気を流すための配線膜、それに電気を絶縁するための絶縁膜を成形する必要があります。

半導体膜は、半導体デバイスの基本となるスイッチング機能の素子となる部分であり、最も重要な領域です。

それらの素子を電気的につなぐのが配線で、水平方向ばかりでなく垂直方向につなぐ部分もあります。成膜装置の構成要素は、プロセスチャンバー(成膜室)、ガス供給システム、真空システム、高周波電源、制御システムで、基本的にエッチングプロセスと同様の配備となります。

成膜装置にはいく通りもの種類がありますが、ここでは代表的なものをご紹介します。

熱酸化装置は、シリコンウエハーを熱を用いて直接酸化する方式です。シリコンの温度を900℃以上に熱して、そこに水素ガスと酸素ガスを送り込み、燃焼させることで酸化剤を発生させて膜を成形します。常圧酸化が基本ですが、炉内を高圧にして酸化の速度を上げる高圧酸化炉もあります。シリコン半導体の製造プロセスの最も基本的な部分です。

常圧CVD装置は、常温で大気圧で作動します。プラズマが不要であるため真空システムや高周波電源が要りません。その分、装置コストが安くなります。

配線の材料がメタルの場合、あるいはウエハー上に非耐熱性の膜が成形されている場合は熱酸化プロセスが使えません。そのような時に常圧CVD装置を用いることが一般的です。

難点としては、膜の形成がウエハーだけでなく周囲のチャンバー内やサセプター(固定台)にも成長するためメンテナンスに手間がかかります。

減圧CVD装置は、シリコン窒化膜やシリコン酸化膜を形成する時に使用されます。減圧下で製膜するために真空システムが必要でそれだけ高価になります。

スパッタリング法は、低温プラズマを用いてアルゴン(Ar)プラズマを発生させ、アルゴンイオンをアルミやチタンなどの金属インゴットにぶつけて金属原子をはじき出し、それによってウエハー上に成膜します。配線に金属で成膜する必要がある場合に用いられます。プラズマを発生させるため真空システムが必要です。

(6)薬品と砥石でウエハー表面を磨く「平坦化」

最先端ロジックの形成にはCMP(化学機械研磨)による完全平坦化のプロセスが欠かせません。シリコンウエハーの表面の多層配線は完全な平坦化が求められます。

CMPとは、ウエハーの表面を平らに磨く技術で、研磨材の入った薬品(chemical)と砥石で機械的(mechanical)にウエハーの表面を磨く(polishing)技術を指します。頭文字をとってCMPと呼ばれます。

ウエハーの表面に研磨パッドに押しつけて、研磨パッドに薬液や研磨粒子を溶媒に溶かした「スラリー」と呼ばれる溶液を流して、研磨粒子や研磨圧の物理的な作用と、薬液の化学的な作用でウエハー表面を研磨する工程です。

それまでもウエハーの表面はピカピカに磨き上げられていましたが、露光装置が進化し焦点深度が低下するにつれて、それをカバーして解像性能を上げるためにはより完全なる平坦化が求められるようになりました。

300ミリウエハーの全体にわたって研磨される膜が均一に残るようにしながら、下の層の膜構造を残すよう削り過ぎないようにナノ単位でピタリと止める必要があります。

300ミリウエハー1枚につき60秒ほどのCMPが施されます。研磨粒子にはシリカ、セリア、アルミナなどが用いられ、スラリーはウエハー1枚の研磨につき数百cc使われます。研磨パッドには発泡ポリウレタンが用いられ、ウエハー数百枚の研磨で交換する必要があります。スラリーの残渣が残ることを避けるためにCMP後には洗浄が必要になります。

半導体が高度に発達したデジタル情報社会を支えている

以上のような複雑なプロセスを何度も繰り返しながら、1枚のシリコンウエハーが集積回路に変化してゆきます。1枚のウエハーを完成させるために3か月くらいかかるとされており、高度に発達したデジタル情報社会を支えているのです。

洗浄装置メーカーとして世界トップのスクリーンHD(7735)、コータ/デベロッパ、エッチング、成膜装置の東京エレクトロン(8035)、露光装置のキヤノン(7751)、ウエハー/マスク検査装置のレーザーテック(6920)、電子ビームの日本電子(6951)、空圧制御機器のSMC(6273)、半導体搬送装置のローツェ(6323)、真空ポンプの荏原(6361)、超純水の栗田工業(6370)、シリコンウエハーのSUMCO(3436)、レジストの東京応化工業(4186)、CMP装置のフジミインコーポレーテッド(5384)、などこれからも注目しておくべき企業が名を連ねています。

レーザーテックと東京エレクトロンの株価推移(月足、2006年~)
フジミインコーポレーテッドとSUMCOの株価推移(月足、2006年~)

メルマガ会員募集中

ESG特集