レアメタルの本当の問題点は希少性にあるのではない

高度情報社会、高度消費社会に暮らす私たちにとって、レアメタルはますます重要な存在となっています。レアメタルの重要性を考える場合に気をつけたい点は、レアメタルは必ずしも資源量が少ないわけではない、という点です。

レアメタルの「レア」という言葉が「希少」という意味を持っていることからか、「レアメタル」イコール「資源枯渇」という連想につながりやすいという特徴があります。しかし資源量そのものは意外と豊富に存在します

たとえばイットリウム、ランタン、コバルト、スカンジウムなどの種類のレアメタルは、亜鉛や銅などのいわゆる「ベースメタル」と呼ばれる金属類と地殻中に含まれる元素の存在量はさほど変わりません。むしろ自動車のバッテリーに用いられる鉛(なまり)の方がはるかに存在量としては少ないものです。金(ゴールド)、銀(シルバー)、白金(プラチナ)も同様に資源量は極端に少ない金属です。

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レアメタルを取り巻く問題の本質は、必ずしも地球の埋蔵量の絶対量の少なさにあるのではなく、レアメタルの一部は特定の国でのみ産出されるという地域の偏在にあります。そのために時として供給面でのリスクが浮上することが玉にきずです。

ネオジムとジスプロシウムは、史上最も強力な永久磁石を作る際に欠かせない材料です。そんな貴重なネオジムを含む鉱石は世界中に実に豊富に存在しており、現在および将来の需要量の数百年分の埋蔵量が確認されています。実質的に無尽蔵と言ってよい存在です。

そのネオジムを巡る問題は、その供給量のほぼ100%を中国からの輸入に頼っている点にあります。製錬に伴って発生する廃棄物の処理がむずかしいため、それ以外の国で採掘が思うように進まないという点がレアメタルを巡る最大のネックとなっています。

世界の環境規制の流れを考慮する限り、中国といえどもいつまでも鉱区周辺の環境悪化に目をつぶってレアメタルを製錬することが許される状況ではありません。世界の需要と供給は非常に微妙なバランスの上に成り立っています。

南シナ海や台湾海峡など、東アジア地域が直面している地政学的リスクを見ても、非常に不安定な現状がいつまで保持できるかわかりません。可能な限り現状のレアメタル、レアアースを代替する技術や新素材を開発する努力を続けるべき時期が到来しているのです。

株式市場において関連する企業を見つけだすとなれば、非鉄金属大手の住友金属鉱山(5713)、ENEOS(5020)、あるいはスクラップからレアメタルの回収技術に長けているアサヒホールディングス(5857)、松田産業(7456)、豊田通商(8015)、そして高いバッテリー技術を有するトヨタ自動車(7203)ということになるでしょうか。いずれも参入障壁が高く長期的にも注目できる企業群です。

住友金属鉱山(5713)週足、2016年~
豊田通商(8015)週足、2016年~

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