使用済み核燃料は、9割「冷却プール」1割「乾式貯蔵」

どの国の原子炉も冷却プールは満杯に近い状態です。そうなると冷却期間の長い使用済み核燃料から順に引き上げられ、水冷を必要としない大きな空冷式の「乾式キャスク(容器)」に移されます。そして原子炉の敷地内、あるいは専用の集中保管施設で長期的に保管されることになります。これが使用済み核燃料の「乾式貯蔵」です。原子炉を持つ多くの国がこの方式を採用しています。

乾式キャスクによる貯蔵では、まず使用済み燃料を束ねて鋼鉄製のキャニスターに入れ、次にこれを鉄筋コンクリート製の分厚い遮蔽容器に入れます。コンクリート製容器には通気口を設け、冷却用の空気がキャニスターの表面に届くようにしてあります。

通常の乾式キャスクには、10トンの使用済み燃料が収納できます。これは100万キロワットの標準的な原発から取り出される使用済み燃料の半年分に相当します。乾式キャスクは通常、原子炉の敷地内かその近くに置かれます。

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少し古いデータですが2009年の時点で、世界中に貯蔵されている使用済み燃料はウランなどの重金属換算で24万トンです。うち90%が原子炉内の貯蔵プールにあり、10%が「乾式貯蔵」です。使用済み燃料を最も多く有しているのが米国で、2010年の時点で6万4420トンに達します。このうち「乾式貯蔵」は5350トンです。

米国に次いでカナダの4万3000トンです。さらにロシアが2万1720トン、日本が1万6910トン、フランスは1万3840トン、韓国が1万1370トン、ドイツが6810トン、スウェーデンが5820トン、イギリスが5320トンと続きます。

高レベル放射性廃棄物の半減期は数万年

放射性廃棄物
放射性廃棄物の処理は今もなお世界的な課題となっている(写真はイメージです)

使用済み核燃料では、その中の放射性物質が崩壊する時に、熱と同時にガンマ線が発生します。このガンマ線は毎時1シーベルトより大きな線量率を出し続け、これほどの量のガンマ線を浴びると成人の50%は3~4時間で死がもたらされるとされています。

再処理後の廃棄物から生じる高レベル放射能の影響を、元の天然ウランより低く自然界に害のないレベルまで小さくするのに、通常は数万年から100万年もの時間がかかるとされています。

半減期とは、放射性物質の量が半分に減る期間です。プルトニウム239の場合、半減期は24,000年とされています。少なくともその間は人間が一歩も近づけない場所に置いておくしかありません。したがってその間は安全性を厳密に設計した処分場で貯蔵し、地表の環境から隔離しなくてはなりません。

高レベル放射性廃棄物は、通常はガラスと混ぜて固めて容器に保管したあと、冷却のため数十年間は貯蔵庫に保管します。そしてようやく最終的に何百メートルもの深さの地下処分場に埋めてしまうという手段(地層処分)が各国で検討されています。

しかしそのような最終処分場を選定するのに、各国は長年にわたって非常に苦労しています。何万年、何千世代にもわたって人体に危険な物質を足元に埋めておくことに同意する住民がいるとは思えないからです。専門家の間でも、少なくとも数千年であれば放射性物質の生活圏への侵入は防ぐことができるが、しかしこれが何万年ともなると不確実性は大きく残ると考えられています。

原子力発電を人類が使い始めてまだ100年も経過しておりません。今後どうやって核廃棄物を長期にわたり人間から隔離しておくか、地球上ではまだ誰も明確な答えを持ち合わせていないのが現状です。

乾式貯蔵の場合、面積密度は1平方メートルあたり0.1トンとされています。標準的な原発から60年間の耐用年数の間に取り出される使用済み燃料は全部で1,200トン(=60年×20トン)なので、これは1ヘクタール(1万平方メートル=100メートル四方)程度の範囲の土地に収まる計算です。この程度の広さであれば、ほとんどの原発の立ち入り禁止区域の中で確保できます。

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