金の上昇余地は大きい、米ドル・豪ドルにも注目

ロシア・ウクライナの問題が長引くのであれば、コモディティへの投資のチャンスと考えることもできるでしょうか。

エミンさん コモディティ高はしばらく続く可能性があると思いますが、すでに高くなっている資産への投資には注意が必要です。特に原油は乱高下が激しく、今後も大きな調整が入る可能性がありそうです。

有望なのは金です。金はインフレに強い実物資産であり、金融市場が不安定なときに価値が高まる特徴があります。史上最高値を更新していますが、金の上昇余地はまだ大きいと思います。シルバーも悪くありませんが、流動性を考えるとやはり金が良いでしょう。 

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昨今の相場を踏まえ、小麦やとうもろこしを持ってみるのも面白いと思います。ただし、あくまでも分散投資の一環として、無理のない金額にとどめておきましょう。

コモディティに限らず、現在注目すべき投資対象について教えてください。

エミンさん コモディティ以外では、米ドルに注目です。ロシア・ウクライナの問題は「有事のドル買い」を呼び、先ほど述べたようにコモディティ高もドル高要因になります。また、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備理事会)が金融引き締めに転じたことで、日米の金融政策の差がはっきりと意識され、対円でもドルが強くなるでしょう。ドル/円は125~130円までドル高が進むと見ています。

為替市場では、豪ドルにも期待が持てます。オーストラリアは天然ガスや鉄鉱石など世界有数の資源国であり、コモディティ高の恩恵を受けます。一方で、ロシア・ウクライナとは地理的に遠く離れており、地政学リスクの負の影響は受けにくいと考えられます。現段階ではインフレ懸念も低く、比較的安心して買える投資対象と言えるでしょう。

オーストラリアイメージ
コモディティ高の恩恵を受けながらも地政学リスクの負の影響は受けにくい豪ドルに期待
Ingus Kruklitis / Shutterstock.com

これまでにない日本株の強さを感じる

株式市場の行方はどうご覧になっていますか。

エミンさん FRBが利上げを開始し、金融相場が終わりを告げた今、割高な米国株が崩れる可能性は高いと思います。現状、世界の株式市場の50%は米国株が占めており、アロケーション(配分)があまりに大きいと言わざるを得ません。世界のGDP(国内総生産)は約80兆ドルで、アメリカは約20兆ドルであることから、株式市場でも4分の1程度が妥当でしょう。そう考えると、米国株は今から半値になってもおかしくないと思います。

それに対し、日本株は個別でも指数でも割高感はありません。しかし、米国株が大きな調整局面を迎えれば確実に影響を受けます。問題は、その時の為替の水準です。3月に日経平均株価が2万4000円台まで調整した時、ドル円は118円程度でした。仮に100円程度の円高だったとしたら、2万円を割れるまで下がったと思います。2万4000円台で踏ん張れたのは円安のおかげです。次の急落時の為替相場次第では、やはり2万円割れを試す可能性があるでしょう。

他方で、これまでにない日本株の強さを感じる部分もあります。以前は中国株や香港株が下がれば日本株も同じように下がっていました。最近はそうした傾向が見られず、香港株が5~6%下がったのに日経平均はプラスで終わった日もありました。世の中の流れが変わってきていることを実感します。米国株が大きく調整すればその影響は避けられませんが、底を見た後の日本株は力強く上昇していくと見ています。

日本株で特に有望な業種はありますか。

エミンさん 欧米を中心に新型コロナウイルスによる行動規制を緩和する動きが出てきています。知人の話では、イギリスではここ2カ月くらいコロナ以前とほぼ変わらない生活を送っているそうです。日本でもまん延防止等重点措置が解除され、少しずつアフターコロナへ動き出すと考えられます。

そうした中で、注目すべきは現在の円安トレンドです。円安は外国人観光客にとってメリットであり、訪日旅行の魅力度が増しています。コロナ禍で抑えつけられていた旅行需要は非常に強く、この夏に観光業が復活する可能性は高いと思います。宿泊に限らず、航空や鉄道といった観光関連の銘柄に期待できそうです。

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