大震災直後の大腿骨骨折!

圧迫骨折で腰椎を痛め、歩行できなくなった父は、自宅で1カ月の療養生活となりました。しかし、初めてのおむつ替えに娘の私は難儀しました。
1カ月で終わるという期限付きだったから、なんとか乗り切れたものの、寝たきりの老人は「せん妄」が発症しやすく、寝室のクローゼットを浴室と思い込んで、夜中に「シャワーの音がうるさい」と私を起こしたり、何かと幻を見ては訴えるようになり、介護する私もその都度呼ばれて、安眠できません。
そのほか、いろんな要求がとどまることなく、このままじゃ、私まで朽ち果ててしまいそうでした。

発狂するイメージ
介護する自分まで壊れそうになった ※写真はイメージです

やがて、父も背中の痛みは収まってきて、少しずつ起き上がれるようになったはいいのですが、そんなおりに、東日本大震災が起き、寝たきりの父は不安から、勝手に起き上がって部屋をうろつくようになりました。
私が見てないときは、転ぶといけないからおとなしく寝ていてね」といっても、
言うことをきく父ではありません。
そして、震災から数日後、母が透析に行く日で、父から目を離していた間に、父はまた、勝手に部屋をうろついていて、遂に転んで倒れてしまったのです。

リビングに転がっていた父を起こそうとしても、どうにも動きません。
「ああ、これは骨折だな」と思っても、父は「痛くない」と譲りません。「病院に行かなくても寝てれば治る」とまでこの後に及んで言うのです。
しかし、ズボンを脱がしてみると左脚の付け根の鼠径部が真っ青に腫れ上がっているし!
またしても母のケアマネさんに電話で相談すると、絶対骨折してるから、救急車を呼んだ方がいいというので、すぐ119番しました。
到着した救急隊員の方々も、父の脚を見て「折れてますね」と!
震災後で、まだ世の中が混乱した時期でしたが、圧迫骨折でかかっていた病院に無事受け入れでもらえたのです。

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だまし討ちでリハビリ病院に転院作戦!

人生初めての入院。しかも、その前に1カ月圧迫骨折で寝ていて、せん妄を発症してたので、父の入院生活は散々なものだったようです。
手術後、一般病室には戻れず、父のベッドはナースセンターの一角に置かれていました。それだけせん妄が酷かったのです。
そんな中、父は「家に帰りたい!」の一点張り。
しかし、手術後、すぐに家に戻せば、一生寝たきり生活になるので、杖や手すりは必要だけど、ある程度、自力で歩けるようになるまでリハビリ訓練をしてからでないと退院は勧められないと病院では言われました。

もちろん、寝たきりは困ります。
もう既に介護していましたが、1カ月で私はギブアップしてましたので、これがずっと続くのなら、到底無理なことと判っていましたから!
しかも、透析している母の介護もあって、両親の介護など両立はできそうもないので、父のリハビリは絶対必要でした。
ところが……。

リハビリは、この病院ではなく、専門のリハビリ病院に転院してもらいます」と説明を受け、知識のなかった私は驚いてしまいました。
てっきり、同じ病院でリハビリもできると思っていたのに!
(※リハビリ病院=骨折の他、脳梗塞や脳出血などの後遺症やで身体機能が著しく低下した患者さんを対象とし、日常生活動作の改善、在宅復帰、寝たきり防止などを効率的に行う医療機関)

家に帰りたがるイメージ
初めての入院。父は「家に帰りたい!」の一点張りだった ※写真はイメージです

しかも、どの病院に転院したいかは、患者本人と相談して家族で決めてくれといわれました。
差額ベッド代の違いや、自宅から見舞いに行く距離などを考慮して、いくつかの選択肢から選ぶのだけど、「家に帰りたい!」としか言わない父に希望を聞くわけにもいかず、私の判断で選ぶことに。
それは、差額ベッド代はやや高め……でも家からバスで見舞いに行ける便利な場所にある新しい病院でした。
4人部屋だと差額ベッド代は0円。ただし、転院して二週間ほどは個室になるので20数万円かかるのですが……。

父がかつての職場で団体加入していた傷害保険がまだ有効で、1日2500円程度はカバーでき、2カ月ほど入院して後半、4人部屋に移ってくれたら、15万円くらいはカバーできるし入院が長引けばもっとお得になる……。
そう思うとほんの少し気が楽になったのでした。
しかし……しかし……。

転院前日になって病院から電話が!
「お父様がハンガーストライキしてます。娘さんから説得してください!」
慌てて病院に行くと、「退院できると聞いてたのに、別の病院に行くとは何事だ!」とカンカンに怒っている父の姿が! しかも、家に帰してくれないなら、何も食べないとごねていたのです。

そこで私は父に言いました。
「明日、退院したらね、家に新しいベッド来るまでちょっと日にちがかかるんだって。だから、ほんの数日、ホテルみたいなところに行くのよ。だったらいいでしょ?」
ホテルという言葉が父に響いたようで「ホテル? ああ、ホテルならいいよ」
そして、翌朝、ワンボックスカーで車椅子ごとリフトアップして乗れるという運転手さんつきの車が迎えに来て、久々に陽光浴びて、病院を後にした父は、驚くくらい上機嫌になっていました。

その車は、介護タクシー。
転院に際して、病院から介護タクシーの手配の仕方を教えてもらいました。
介護認定がなくても使えるし、ネット検索で簡単にみつかります。
あ~あ、車椅子ごと乗り降りできる介護タクシーがあると知っていたら、圧迫骨折のときの病院の往復だってもっと楽だったろうと、ここでも大後悔!

介護タクシー
車椅子ごと乗れる介護タクシー ※写真はイメージです

「これからホテルにいくんだよね」
そして、着いたところは、まさにホテルライクな建物で、エントランスを入るとソファーのあるロビーがあって……。
ホントにホテルだね」と父は喜んでくれました。
もちろん、ホテルではありません。リハビリ病院ですが、今まで入院していた病院のような雰囲気はなく、父の期待を裏切らないなかなか素敵な内装だったのです。
そして、部屋に入ると、こぎれいな家具調のベッドがある個室で、トイレもついているし、ちょっとお洒落なビジネスホテルみたいで……。

いい部屋だねえ、気に入った。ここなら当分いてもいいよ」と、昨日までも頑固で意固地な父とはおよそ真反対の、ご機嫌な父にすっかり変わっていたのです。
だまし討ちのようなやり方でいたが、予想以上に父が、転院先を気に入ってくれて「案ずるより産むが易し」だと安堵したのです。
しかし、ここから再度、ひと波乱あって、それを予想できなかった私はまたまた大後悔してしまいます。

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