700人以上所属する日本放送作家協会(放作協)がお送りする豪華リレーエッセイ。テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家、そして彼らと関わる様々な業界人たち・・・と書き手のバトンは次々に連なっていきます。ヒット番組やバズるコンテツを産み出すのは、売れっ子から業界の裏を知り尽くす重鎮、そして目覚ましい活躍をみせる若手まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜くユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず!
連載第181回は、俳優、そして『ラジオ深夜便』などの構成でも活躍中の大倉順憲さん。

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♪盗んだチャリンコで走り出す 25の夜

大倉順憲さんの写真
大倉順憲
俳優 放送作家

「お金の話」かあ……涙なしには語れないぜ……
小汚い鞄ひとつで上京してから40年。よく生きてこられたもンだ。
お金にあまり縁が無い。
未だにクレジットカードを持ってない。
スマホも無い。
お金は欲しい。
欲しいけど5兆円貰ってもちょいと困る。
始末に困る。
そこそこ欲しい。
そこそこ欲しいけど自分で稼ぐ努力はしていない。
そこって何処なんだろう。

水への投資 世界的に不可欠な資源への投資機会 BNPパリバ・アセットマネジメント

1982年の冬。
「まいど、おっきにぃ~」
愛想は良いけどぎこちない笑顔で大阪ミナミの繁華街を、ジャリンジャリンと爆音が鳴るベルと鉄パイプがブレーキワイヤーになっている配達専用自転車の荷台に座高より高く缶詰瓶詰袋詰積み上げて走り回るバイト(時給500円)で国鉄ハイウェイバスの片道切符(8000円)を買った。
東京へ行こう。
劇団に入るンや。

大阪の繁華街の様子配達専用自転車に缶詰瓶詰を積み上げて、大阪の繁華街を走り回っていた
Charnc / Shutterstock.com

1983年の春。
何かが変わると思った。
変えなければ何も始まらないと思っていた。
それから27才迄の7年間、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった人気劇団で活動した。
その間、劇団から頂戴したギャラが7000円だった。

高校の学園祭に出演した謝礼2000円と、六本木のディスコで3カ月間ショーダンサーとして踊った(踊らされた)ギャラが5000円、合わせて7000円。
以上だ。
いや、もういちど記しておこう。人気劇団に7年間で7000円だ。
どうやって生き延びてきたのか不思議不思議摩訶不思議。
当人にも分からない。
俺は、飛ぶ鳥だったのかも知れない。

しかも時代はバブルど真ん中。
新宿などの繁華街で、万札ビラビラ振ってタクシー止めてた時代だ。
(理解出来ないお若い方はオジサンオバサンに聴いてね。50才以上に限るけど)

トラリピインタビュー

あ。思い出したぞ。
そんなバブリーな時代に舞台稽古から帰りの電車賃(140円)が無いので自転車泥棒を試みたら高井戸署にもって行かれた。
それも2回だ。
前科2犯だ。
指紋も取られた。
怒られた。自転車は返した。
新宿から西荻窪まで夜中のサイクリングは台無しだ。

ヒモはヒモでも財布のヒモ

そもそも。
当時の俺は酒を呑んでも全部ツケだ。
時は流れバブルは終わり、俺のツケまみれだった歌舞伎町の店は潰れた。
ツケは返してない。
時効だ。
スマナイ。
謝って済むなら警察は要らない。

そういえば、とあるバーのマスターから
「なに!? ジュンケンさん、役者だからモテたんだろうなあ、いいなあ、腹立つなあ」と言われた。

違う違う。
違うよマスター。
そうじゃないんだよ。

ご婦人にお金を使うのがダメなのだ。
そうなって、しまったのだよ。
俺の経済観念が
お金は大事にしなければ。
財布のヒモが堅いんだ!
俺…変わったのかなあ……東京の水が悪いンだ……
しかし、現実は
お金もご婦人も、うたかたの夢の如し。

俺にはバブルは無かったけれど、リーマンショックも無い。
定年も無い。
そもそも就職してない。
あまり働いていない。
だけどけっこう楽しいぞ。

なんだかんだと言っても、朝はコーヒー飲んでるし、夜は酒を呑んでいる。
それでいいじゃないか。

「お金の話」がなんだか半生記になってきた。
いや反省記か。
見ろこのザマを。
バチ当りめが。
バッチリじゃないか。
こんなことばかりしか考えていないから、俺はダメダメ男なのだよ。
たまに競馬に行くと、親父とオフクロの命日馬券を買う。
しかも100円だ。
セコイ。
もちろん当たらない。
親不孝ものめが。
諸行無常。
万物流転。
わが人生に打つ杭はない。

将来の夢は、ヒモと泥棒だ。
そのココロは、決してお縄にならない……

次回はげんまことさんへ、バトンタッチ!

ぜひお越しください!

愚生、企画構成を担当しております落語会。
初台で、毎月末の土曜か日曜に開催しております。
活きの良い二つ目さんをお呼びして……昼下がりに一杯やりながら……ぜひお越しください!

『桃月庵黒酒 落語会』ポスター画像

『第26回 初台わいわい寄席 大人の夏休み特別企画
桃月庵黒酒 落語会』

開催日: 2024年8月25日(日)
開場: 14時/開演:15時 (全席自由席)
終演後~18時迄 懇親会with黒酒(希望者のみ/別途ドリンク代)
会場: SPACEY
東京都渋谷区本町2-14-4 SHビル-B1F(アジアン・パームの地下)
京王新線初台駅北口徒歩7分
予約: お問い合わせ TEL 03-6276-6760
木戸銭: 3000円(1ドリンク代込)
制作協力: office junken jack flash

愚生、脚本・演出を担当しております千葉県東金市のリフォーム会社、㈱関東ホームの PRドラマ第3弾鋭利制作中です。
2024年12月にはWEB公開予定!

第1弾、第2弾はこちらから視聴できます。

■第1弾 関東ホーム 会社紹介ドラマ
■第2弾 関東ホーム 会社紹介ドラマ

一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。

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