「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、「トランプ関税」による株式市場の激しい変動から大切な資産を守るために、今保有している株式や資産運用をどうすべきかを考えます。

  • リーマン・ショックでは債券は堅調だったが、トランプ関税では債券も値下がり
  • トランプ関税による株価の下落率は、先進国に比べて新興国では小さい傾向
  • 株式や投資信託の利益を確定して、新興国の投資信託で積み立てるのもあり

皆さん、こんにちは。新緑の爽やかな時季になりました。株価や為替の方はいかがでしょうか? 前稿では「1ドルが142円を下回ることはないでしょう」と書きましたが、皮肉にも前稿がUPされた頃に、1ドルが139円台になってしまいました。お詫び申し上げます。

本稿を書いている今は、1ドル143円台です。1ドル140円割れは、「瞬間最大風速」だったと言えるでしょう。では1ドル140円割れは「もう、無い」と言い切れるか否かは……微妙ですね。

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まさかのトリプル安

トランプ大統領の2期目が決まった時に、1期目の「トランプラリー」を思い出された方もいたのではないでしょうか? 筆者もその一人でした。同時にリーマン・ショックの再来も、何とはなしに予見していました。

リーマン・ショックの時に堅調だったのが債券でした。ちなみにリーマン・ショックの時にも金(ゴールド)価格は下落しています。そこで、あるお客様はドル建ての社債をいくらか買っていたのですが……トランプ関税ショックでは、見事にやられてしまいましたね。株価・為替・債券が同時に下落したトリプル安となりました。

債券ですので、満期まで持ち続ければ額面で償還(=投資したお金が戻ってくる)されますし、満期までの間、利息を受け取ることができます。ただ、ドル建てですので為替の損失はいかんともしがたいですね。

関税発動まで猶予の90日……この間は、どうする?

さて、どういうわけか4月9日(=日本時間では4月10日)に、「関税の発動まで90日間の猶予を与える」という展開になりました。まあこの間も、どうなるのかは何とも言えないところですが。とはいえ、この時間を活かしたいところです。

【図表】金融ショック前後の国・地域別株価騰落率
金融ショック前後の国・地域別株価騰落率
※各国・地域の株価指数は、日本はTOPIX、ドイツはDAX、米国はS&P500、英国はFTSE100、アセアン5はFTSEアセアン40、カナダはS&Pトロント総合指数、中国は上海総合指数、メキシコはS&P/BMV IPC、インドはSENSEX30。コロナショックが発生した2020年2月24日頃および、米国が相互関税を発表した4月2日頃を基準として、その前後における株価(終値ベース)の騰落率。
出所:日本総研の2025年4月24日のレポートを参考に編集部作成

上の図表は、国ごとに2本のバーが伸びています。上のバーはコロナショック、下のバーは今回の「トランプ関税ショック」です。バーの伸びが大きいほど、株価の騰落の幅(=下落幅)が大きかったことを意味しています。日経平均でいうと、3月27日に37,859円でしたが、4月7日は30,792円でした。わずか10日ほどで7,000円も下落したのですから、騰落の幅は大きかったですね。

そして本稿執筆時の、4月25日の終値は35,706円と、1か月前の37,859円に届いていません。一方で、中国・メキシコ・インドなどの、いわゆる新興国株価の「トランプ関税」による下落幅は、日本のそれに比べると「短い」のが分かります。つまり、新興国の株価は「トランプ関税」の傷が浅かったとも言えるでしょう。

新興国の株価の方が、傷が浅かったのは?

新興国の株価の方が、傷が浅かったのはナゼでしょうか? 一つ考えられるのが「旺盛な内需」です。つまり日本とは逆の環境にある、ということです。

日本は少子高齢のうえに、人口が減っています。一方の新興国は、中国は別にして、若い人が多い、つまり労働力が豊富なうえに、人口が増えています。若い労働力が増えているからこそ、内需が旺盛なのです。いわゆる人口ボーナスですね。

利益が見込めるものは確定する?

さて、この90日の間に、利益が見込める株式や投資信託は利益を確定する、つまり売却して現金にするのも良いかもしれません。そして、売却して得た現金のうちの一部を新興国株式ファンドへの投資、できれば積み立て投資に充てるのです。

なお、売却して得た現金の「全て」を投資に充てることはお勧めできません。繰り返しになりますが、「何をしでかすかわからない」人が大統領です。何もしなくても、何気ない、その一言で株価が大きく下落してしまうことだってあり得ます。用心するに如くは無し、です。

もちろん……

ひょっとしたら、このまま何事もなく、時間だけが過ぎていくかも知れません。こればかりは全く予測不可能です。何せ、ああいう人が大統領になっているのですから。何にもせずに、事態の推移を見守るのも、もちろん、有りです。

まとめに代えて

「トランプ関税」は「良い結果は残らない」のは間違いなさそうで、最も悪い影響を受けるのは、他ならぬ「アメリカ自身」とも言われています。そのためか、「ドル離れが加速している」などという記事も見掛けます。

ただ、こうした記事が出た後にドル高(=円安)が進行しています。ニュースに振り回されることがないように、一つひとつ冷静に判断し、行動に移していく、これがベストな答えなのかもしれません。