米国トランプ政権が関税政策などを利用して貿易不均衡(貿易赤字の縮小)の是正に動いています。それにより、今後の企業環境や業績が見通しづらくなっています。それに伴い、企業の財務が健全かどうかに対する関心が、投資家の間で以前より高まっているように思われます。
ROE(自己資本利益率)を高める施策の中には、財務状況に影響を与える可能性があるものもあります。この記事では、ROEの概要とROEを高める主なる施策、ROA(総資産利益率)との比較の重要性について解説します。

  • ROEは企業の効率性を示す指標。東証の要請でROEを意識する企業が増えている
  • ROEを高める施策には売上増、コスト削減、自社株買い、借り入れなどがある
  • ROA(総資産利益率)との比較も重要で、ROEとの差が大きい場合は注意が必要

ROE(自己資本利益率)とは

ROE(自己資本利益率)は、会社がどれだけ有効に自己資本を活用して利益を上げているかを示す指標です。

ROEは「当期純利益÷純資産×100」で計算します。
上の式からわかるように、ROEは分子の当期純利益を増やすことで高めることができます。また、分母の純資産を減らすことでもROEを高めることが可能です。

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一般的にROEが10%以上ですと優良な企業と言われます。ただし、業種によりばらつきがありますので、銘柄選びに際しては同じ業種内で企業比較をする必要があります。

ROEを高める主な施策

東京証券取引所が上場企業に対して、企業価値向上の1つの方策としてROEを高めることを要請していることもあり、ROEを意識した経営を行う企業が増えています。
以下では、ROEを高める主な施策として以下の4つを挙げて解説します。

ROEを高める主な施策

  1. 売上額を増やす
  2. コストを削減する
  3. 配当や自社株買いにより純資産を減らす
  4. 社債発行や銀行借り入れにより自己資本比率を下げる

貸借対照表と損益計算書のイメージ

1は、売上額を増やすことで営業利益(本業の利益)も増やすことを目的にした施策です。そのため、利益率が下がらないことが大前提となります。

2は、売上額が同じでもコスト(売上原価や販売費、一般管理費など)を抑えることで営業利益を増やす施策です。

3は純資産の中の利益剰余金から配当の支払いや自社株買いを行うことで純資産を減らし、それによってROEを高める施策です。

4は社債の発行や金融機関からの借り入れによって総資産を増やし、それにより自己資本比率を下げてROEを高める施策です。ただし、借り入れた資金を効率的に利用し、売上や営業利益を増やすことが大前提になります。

1、2の施策は、ROEの計算式の分子にあたる当期純利益を増やすことでROEを高める施策です。3、4は、分母にあたる純資産を減らしたり、比率(自己資本比率)を引き下げることでROEを高める施策になります。

1、2と比べると3、4は短期間に効果が期待できる施策といえます。ただし、自己資本を減らしたり、自己資金比率を下がることになりますので、財務リスクを高めることにつながる可能性があります。

ROA(総資産利益率)との比較も重要

ROE(自己資本利益率)を参考に銘柄選びを行う際には、ROA(総資産利益率)との比較も重要になります。

ROE(%) = 当期純利益 ÷ 純資産 × 100
ROA(%) = 当期純利益 ÷ 総資産 × 100

貸借対照表イメージ

ROA(%)は上の式にありますように、当期純利益を総資産(負債+純資産)で割り100を掛けて求めます。
総資産に対する負債比率が低いとROEとROAの差が小さく、負債比率が高いとその差が大きくなります。そのため、ROEとROAの差が大きい場合は、その企業の財務状況に関して慎重にみていく必要があります。

まとめ

以上、ROEの概要とROEを高める主な施策、ROAとの比較の重要性について解説してきました。

トランプ政権の関税政策により不透明な経済状況が続いています。また、米中対立により製造業を米国に戻す国内回帰の動きは長期的なトレンドになる可能性があります。そのような経済環境の変化を考えると、ROEを参考に株式の銘柄選びをする際は、その企業の財務状況(健全性)に関してより慎重な確認が必要といえます。