現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第91回は、「ガスト」や「バーミヤン」などのファミリーレストランを運営し、最近ではネコ型ロボットでも話題のすかいらーくホールディングス(3197)をご紹介します。

  • すかいらーくHDは低価格路線から、インフレを機に高付加価値のブランドにも注力
  • M&Aと海外進出で成長を見込む。「資さんうどん」の東京1号店は連日行列
  • 売上は過去最高を見込み、株価も上場来高値を記録。有望な内需株として注目

すかいらーくホールディングス(3197)はどんな会社?

すかいらーくホールディングス(HD)はファミリーレストランの「ガスト」「ジョナサン」「バーミヤン」「夢庵」など、洋食、和食、イタリアンといった幅広いジャンルを展開する外食チェーンです。

かつて平成のデフレの時代には低価格を武器に「ガスト」などで業容を拡大していました。しかしインフレの時代では戦略的な値上げに加えて、「しゃぶ葉」「藍屋」「ステーキガスト」など高単価のカジュアルダイニングのブランド展開も進め、バランスの取れた事業ポートフォリオとなっています。

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同社の創業は、1962年に創業家の横川端氏ら4兄弟が前身の「ことぶき食品有限会社」を設立したのが始まりです。4兄弟はその後米国を視察し、マクドナルドやデニーズなど開放的で明るい米国の外食業界を見て感銘を受けました。その後1970年に東京・国立市にファミレスの「すかいらーく」1号店を開店し、同社の基礎となりました。

社名の「すかいらーく」は鳥の「ひばり」に由来します。これはことぶき食品有限会社の創業が東京都保谷市(現在の西東京市)ひばりが丘だったことから来ています。

同社は業績が低迷した2006年にはMBO(経営陣による買収)により、非上場化しました。その後投資ファンドによる再生を経て2014年に再度、東京証券取引所1部(現在のプライム市場)に再上場しています。

M&Aによる事業拡大にシフトチェンジ

すかいらーくHDは、2014年の再上場以降、自社ブランドの成長で業績を伸ばしました。2018年の外資ファンドからの独立とコロナ禍での増資を経て、国内市場の成熟に対応するため、M&A(合併・買収)や海外進出を新たな成長戦略としています。

2025年度からの3カ年の中期経営計画では、M&Aを成長の軸とし、2027年までに3~5件、約500億円の投資を目標に掲げています。これは既存事業を補完し、短期的な業績変動に左右されない持続的成長を目指すものです。国内では九州の人気うどんチェーンの「資さんうどん」をM&Aして、関東に進出を開始しています。やや濃い目の味つけと甘さの残るだしの風味が特長で、2月に東京1号店としてオープンした両国店は連日行列ができる賑わいでした。比較的、低単価でファミリー向けという同社が比較的手薄な領域を補完する戦略的なM&Aです。

海外ではマレーシアの超人気しゃぶしゃぶチェーンの「すき屋」を1月にM&Aしました。マレーシアの平均所得が上がり、外食需要が伸びるのに加えてムスリム向けの豚肉を使わないしゃぶしゃぶというブルーオーシャンの分野で、市場からも利益率の高さが評価されています。

すき屋
すかいらーくHDが2025年1月に子会社化したマレーシアの「すき屋」(ゼンショーHDの「すき家」とは無関係です)
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すかいらーくホールディングス(3197)の業績や株価は?

すかいらーくHDの今期2025年12月期決算は売上収益が前期比11%増の4450億円、営業利益が3%増の250億円で、売上高は過去最高を見込んでいます。

【図表】すかいらーくホールディングスの株価(2024年12月2日~2025年5月23日、日足)
すかいらーくホールディングスの株価(2024年12月2日~2025年5月23日、日足)

5月23日の終値は3231円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約33万円、予想配当利回りは0.6%です。株主優待は毎年6月末と12月末時点の株主に保有株式数に応じたグループの店舗で使える優待カードです。例えば100株以上300株未満の株主は半期に1度2000円相当の優待カードがもらえます。

足元では既存店の客数も増える傾向にあり、値上げによる客単価上昇で増収基調となっています。コロナ禍を機に利用が広がった宅配も好調です。あわせてM&Aした資さんうどん、マレーシアのすき屋も好調です。

オンラインクーポンによる戦略的なマーケティング、人材への投資により生産性が向上し、収益の伸びにつながる好循環が続いています。直近では5月15日に上場来高値3313円を付けており、好業績の内需株として物色されています。成長戦略による収益拡大に期待し、引き続きの上昇の期待度も高まっています。