学生時代、奨学金を借りて学費にあてていたという方も少なくないと思います。そして卒業後、働きながら奨学金返済をしているという方もいらっしゃるでしょう。問題なく働けている場合は良いですが、急な病気や退職など、収入が減る出来事が起きた場合には、返済が厳しくなるときもあるかもしれません。そんなときはどうしたらいいのか、今回はご紹介いたします。
- 奨学金の返済が困難になった時には、減額返還制度の利用を検討したい
- 返還総額が減るのではなく、返還月額が減額される制度であることには留意が必要
- 返済が滞るとクレジットカードの発行や住宅ローン契約などができない可能性も
奨学金の減額返還制度に必要な手続きと条件
奨学金の減額返還制度とは、当初定めた返還月額を払い続けることが難しい場合に、返還月額を削減するというものです。年間の収入金額が一定以下である場合や、地震などに被災した場合や、傷病に罹患した場合なども申請が可能です。
2024年4月に制度変更があり、返還方法や収入基準は以下の通りとなっています。
減額制度を利用可能な年間収入
給与所得者: 年間収入400万円以下(扶養している子供が2人の場合…500万円以下、3人以上の場合…600万円以下)
給与所得以外の所得を含む場合: 年間収入300万円以下(扶養している子供が2人の場合…400万円以下、3人以上の場合…500万円以下)
選択できる減額割合
返還月額の2分の1、3分の1、4分の1、3分の2
制度を利用するには、減額返還願を郵送か日本学生支援機構の専用ページから提出します。その際には収入証明など、減額理由によって異なる書類も必要になります。
書類不備などもなく日本学生支援機構の審査が無事完了すれば、適用開始希望月の上旬~中旬にかけて「奨学金減額返還承認通知」が到着し、その月から減額返還が適用されます。
あくまで返還のために支払う月額が減額される制度のため、返還総額は変わりません。また、1回の申請につき12カ月間適用され、最長15年まで延長可能ですが、その分返還期間も延びます。

筆者も収入が減少した時期に、減額返還制度と返還期限猶予制度を組み合わせて利用した経験があります。
返還期限猶予制度とは、減額と同じく奨学金返還が困難になった場合、一定期間返還に猶予を受けられるものです。承認を受けられればその期間中は返還が必要ありませんが、こちらの場合もその分返還期間が延びます。
当時、就いていた仕事を体調不良などから続けることが難しいと判断し、転職をしたものの、収入は10万円近くダウンしてしまったため生活費だけでいっぱいいっぱいに。これではまずい、と奨学金の返還を滞納してしまう前に慌てて申請を行ったのでした。
急な病気や退職、被災など避けられない事態での収入減少は仕方のないことです。そういう時にはしっかりと上記のような制度を活用して、まずは生活を安定させるようにしたいですね。
手続きなしで奨学金返還が滞ったらどうなる?
では、手続きをしないで奨学金返済が滞ってしまった場合、どうなるのでしょうか。
実はこちらも、筆者は一度体験があります。その当時は深夜作業などもある仕事に就いていたため、引き落とし用の口座に残高を準備することを忘れてしまったのです。そのため引き落とし日に引き落としができず、滞納となってしまいました。
その際には業務を委託された債権回収会社から電話で、残高不足で引き落としがされなかった旨の説明がありました。翌月の引き落とし時に2カ月分まとめて引き落としができれば問題ないとのことだったので、翌月に引き落としを確認、事なきを得ました。
このように返還が滞ってしまった場合、まずは日本学生支援機構か、機構から委託をされた債権回収会社から電話・書面・自宅への訪問などの方法で引き落としができなかった旨の案内があります。1回目の滞納の時点では、翌月にまとめて引き落としができれば問題ありません。

しかし2回目以降は通常の割賦金に加えて延滞金の支払いも必要となります。さらに延滞が3回以上続くと、個人信用情報機関に延滞情報が登録され、クレジットカードの発行やローンを組むことができなくなる場合もあるようです。
延滞をしている状態では、上記の減額返還制度を適用することができません。経済的な不安がある場合には早めに日本学生支援機構へ相談をし、必要に応じて減額返還制度の申請を行うようにしましょう。
※このページでは制度と手続きの概要をご紹介しています。詳細は日本学生支援機構のウェブサイトを必ずご確認ください。