現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第92回は、大手非鉄金属メーカーとして古くから日本のインフラや自動車産業を支え、光ファイバーの世界シェアが高いことから最近では「データセンター関連銘柄」としても注目を集めている古河電気工業(5801)をご紹介します。

  • 古河電気工業は光ファイバーや情報通信ソリューションなどの成長が期待される
  • 強みは「素材力」。北米のインフラ需要やデータセンターの拡大が追い風になりそう
  • 株価はトランプ関税で急落のあと急回復。PERは割安感があり株価の上昇に期待

古河電気工業(5801)はどんな会社?

古河電気工業は日本を代表する非鉄金属メーカーで、電線や光ファイバーなどを手がけています。

事業セグメントのうち、特に成長が期待されているのが光ファイバーと、通信用メタルケーブルをデータセンターやネットワーク通信向けに提供する「情報通信ソリューション」セグメントです。「自動車部品・電池」では、自動車の神経となるワイヤーハーネスなども大きな商流です。EVバッテリー向け銅箔やスマホ向けコネクタなどの「電装エレクトロニクス材料」セグメント、地中送電ケーブルや海底送電システムを手がける「エネルギーインフラ」セグメントもともに需要増が見込まれます。

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古河電気工業は古河財閥の創業者・古河市兵衛が設立した事業を源流とする、創業140年を超える歴史ある会社です。古河市兵衛は日本の勃興期に足尾銅山の経営で「銅山王」と呼ばれていました。市兵衛は産出される豊富な銅を加工して付加価値の高い製品を作るため、1884年に銅の精錬・加工を行う「本所鎔銅所」を設立し、古河電気工業の礎となりました。現在でも古河グループの富士通、富士電機、みずほ銀行、横浜ゴムと並ぶ古河グループの名門企業です。

光ファイバーケーブル
光ファイバーケーブルでは世界でもシェア上位(画像はイメージです)

磨いた技術力と積み上げてきた信頼性の「素材力」

古河電気工業は創業から140年超にわたり、製品の「素材力」を高めてきました。例えば電線に用いられる銅・アルミなど「メタル」を取り扱う技術、光ファイバーの「フォトニクス」、高周波技術など幅広い分野で培った技術力で付加価値の高い高機能製品を生み出しています。

また、日本の電力網を支える電力ケーブルや海底ケーブルなど高い信頼性が求められる分野でも、最先端の技術により、電力会社など顧客から信頼を少しずつ積み上げてきました。近年では、次世代の浮体式洋上風力発電向けシステムや、大容量送電を可能にする直流ケーブル開発といった次世代の製品の開発を進めています。

AIデータセンター時代を迎え、電力需要がさらに必要になるほか、安全保障の観点からも強靱なネットワーク網のニーズが増しています。太陽光、風力など再生エネルギー分野でも同社の高い「素材力」が生きる場面が増えつつあります。

古河電気工業(5801)の業績や株価は?

古河電気工業の今期2026年3月期決算は、売上高が前期比0.1%減の1兆2000億円、営業利益が13%増の530億円を見込んでいます。

成長ドライバーは北米市場における旺盛なインフラ需要です。AI・データセンター向けは力強い成長が続くと予想します。北米ではテレコム市場が回復傾向にあるほか、データセンター投資や通信網の増強が活発化しており、利益率の高い光ファイバー・ケーブルの需要拡大が見込まれます。また、自動車生産台数の回復やEV化の進展も追い風となる見通しです。

【図表】古河電気工業の株価(2024年12月2日~2025年6月6日、日足)
古河電気工業の株価(2024年12月2日~2025年6月6日、日足)

6月6日の終値は7018円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約71万円、予想配当利回りは1.7%です。株主優待はありません。

古河電気工業は同業のフジクラやSWCCとともに、データセンター関連銘柄として注目度が高まっています。1月の年初来高値8304円を付けたのちは、4月の米トランプ大統領による関税ショックで4月7日に3647円まで急落しました。しかし、米マイクロソフトやグーグルなどいわゆるハイパースケーラーによるAI・データセンター向けの投資が高水準で続くと確認されたこともあり、株価は7300円まで急速に戻りを見せています。

今期の予想PER(株価収益率)は13倍台と市場平均を下回っています。1月の年初来高値を上回れば2006年2月高値の11250円まで主な節目はなく、上昇に弾みが付きそうです。