金利の上昇により、個人向けの国債や社債が注目を集めているようです。この記事では、個別債券と債券ファンドの概要とそれぞれのリスク、個別債券と債券ファンドの違いについて説明しています。債券投資を検討している方はぜひご一読ください。

  • 個別債券の固定金利型は一定の利子が支払われるが、複利効果はなく単利での運用
  • 債券ファンドは分配金や償還価額が変動するものの、複利効果が期待できる
  • 債券の主なリスクには価格変動リスクや、債務不履行に陥る信用リスクがある

個別債券の概要

債券(個別債券)は、国や企業などが投資家から直接借り入れを行うために発行する、借用証書のようなものです。
債券の多くは定期的に利子が支払われる「利付債」ですが、発行時に価格を抑えて発行し、満期時に額面金額(元本)を支払う、保有中に利子の支払いがない「割引債」という債券もあります。

利付債の場合、その債券の保有者は年2回(半年ごと)など定期的に利子を受け取ることができ、満期(償還時)には額面金額(元本)の支払いを受けます。
金利のタイプは、発行から満期まで利率が一定の固定金利タイプと、半年ごとに利率を見直す変動金利タイプの2つがあります。大半の債券は固定金利タイプです。

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利子は「利率×額面金額」で計算されます。固定金利タイプでは、定期的に支払われる利子は一定(同額)になります。そのため、固定金利タイプの利付債は購入時点で満期までの利益を計算することができます。
計算式は、「満期までの利益=利子の合計+(額面金額-発行価格)」になります。

【図表1】個別債券(固定利付債)の利益のイメージ
個別債券(固定利付債)の利益のイメージ

利付債の発行時の価格(発行価格=投資家が購入する価格)と、額面金額は大きく乖離することはないため、利子収入(インカムゲイン)を期待して投資する投資商品といえます。また、個別債券では利子の再投資は行われないので、単利運用になります。

個別債券のリスク

個別債券の主なリスクは、「価格変動リスク」「信用リスク」の2つです。

価格変動リスクは、債券を満期前に売却する場合に発生するリスクのことです。債券価格(時価)は金利の状況(上昇・下降)や発行体の財務状況などで日々変動するため、価格変動リスクが発生します。
ただし、債券を満期まで保有することで、価格変動リスクは回避することが可能です。

信用リスクは、利子や元本の支払いが遅延したり、支払われなかったりするリスクのことです。

また、外国債券では上記2つのリスクに「為替変動リスク」「カントリーリスク」も追加されます。

債券ファンドの概要

債券ファンド(投資信託)は、多くの投資家から集めた資金を「投資のプロ(ファンドマネジャー)」が、残存期間(満期までの年数)などの異なる複数の債券に分散投資をして、利子や売却益などの収益を投資家に分配する投資商品です。

債券ファンドでは複数の債券に分散投資をすることで、仮に一部の債券がデフォルト(債務不履行)に陥っても、他の債券により損失のダメージを抑える効果が期待できます。

投資している個々の債券から受け取った利子は、新たな債券の購入に充てたり、分配金の原資とします。毎月決算型と呼ばれる収益の多くを分配金に回すファンドや、年1回決算型で分配金をほとんど出さず、利子を新たな債券の購入に充てるファンドなど、ファンドにより運用方針は異なります。
月々の収入を期待するのであれば前者のファンドが選択肢になり、複利効果による資産の増大を期待するのであれば後者のファンドが選択肢になります。

【図表2】債券ファンドの仕組み
債券ファンドの仕組み

債券ファンドの信託期間とリスク

債券ファンドには信託期間について5年、10年などの期間を設定しているファンドもあれば、無期限のファンドもあります。

信託期間は、そのファンドが運用を開始する「設定日」から、運用を終了する「償還日」までの期間です。償還日まで保有していた投資家には、償還価額(償還日の基準価額)と保有口数に応じて償還金が支払われ、そのファンドへの投資が終了します。
また、無期限のファンドであっても、ファンドの口数の大幅な減少などにより繰り上げ償還される場合もあります。

債券ファンドのリスクは「価格変動リスク」「信用リスク」の2つです。また、外国債券へ投資するファンドでは「為替変動リスク」「カントリーリスク」が追加されます。

個別債券と債券ファンドの違い

以下では、個別債券と債券ファンドの違いを「利子と分配金」、「額面金額と償還金」「単利と複利」の3点から見ていきます。

利子と分配金の違い

固定利付債の利子は「利率×額面金額」で計算され、一定の利子が支払われます。

一方、債券ファンドの分配金は投資している債券からの利子と債券の売却益などを原資として、ファンドマネジャーが決算ごとに分配金(1万口当たり)の金額を決めます。そのため、分配金の額は運用状況に応じて変動します。

額面金額と償還金の違い

個別債券は、満期(償還)時には発行時点であらかじめ決められた額面金額が支払われます。

債券ファンドの償還金は、償還日の償還価額(償還日の基準価額)と保有口数に応じて支払われます。そのため、投資元本を上回る場合や、逆に下回る場合があります。債券ファンドの購入時には償還価額を知ることはできません。

単利と複利の違い

個別債券(利付債)は、発行から満期までの間、額面金額に利率を掛けた額の利子が支払われます。
利子を元本に加えて次の元本にすることはありませんので、単利での運用になります。

債券ファンドは、投資した債券からの利子や売却した債券の利益などをファンド内で再投資(新しい債券の購入など)し、純資産を増やし(減る場合もある)ながら、複利で運用します。

【図表3】個別債券と債券ファンドの比較
個別債券 債券ファンド
利子・
分配金
定期的に一定の利子が支払われる 分配金の額は変動する
額面金額・
償還金
あらかじめ決められた額面金額が満期時に支払われる 償還日に支払われる償還価額は事前にわからない
単利・複利 単利運用 複利運用

まとめ

以上、個別債券と債券ファンドのそれぞれの概要と違いについて見てきました。
運用期間やリスク許容度、期待する収益などを考えながら、ご自身の目的に合った債券投資の方法を選びましょう。