宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回はNISAで積立投資を始めた人の、「長期運用」はどれくらい続ければいいのかという疑問から、積み立て・長期・分散投資の効果と、どのように実践すれば良いかを説明します。
- 年金基金も長期分散投資を実践。個人では長期・積み立てはできても分散は難しい
- 投資初心者は成長投資枠でアクティブ型投資信託の積立投資から始める手もある
- 長期投資は10~15年から。長く続ければ自然災害などのリスクも吸収できる
積み立て・長期・分散が重要だと言われるけれど
【質問】
NISAで積立投資を始めました。金融機関の担当からは「できるだけ長く続けてくださいね」と言われていますが、長期運用の期間の目安ってあるのですか?
お金を増やすためにNISAを活用して投資信託を運用する際に、「失敗しない3つの原則」としてよく言われる運用法が、「積み立て、長期、分散」です。
積立投資を継続しながら長期にわたって保有し続けて、なおかつ数の投資先に分散させることです。この運用法を実行することで投資のリスクを軽減でき、安定したリターンを得やすくなることは知られています。
我が国の大切な年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が長期分散投資を実践していることからも、その大切さを理解できます。GPIFは運用ポートフォリオ(資産の配分)を国内債券25%、国内株式25%、外国債券25%、外国株式25%として運用を継続しており、2025年からの5年間も運用方針に変更がなかったことから、海外も含めた分散投資がこれからも必要だということがわかります。
ただ、個人で長期分散投資を実践して、いくつかの商品に投資していくとなると、本当にやれるかどうかは疑問符がついて回ります。
私も複数の投資信託で分散を実践したことがあるのですが、第一に資産配分にブレが生じていくなど、適切な分散ができなくなっていきます。かといって債券中心の商品に投資する場合は、パフォーマンスも変動幅も小さく、長期でやる意味も薄れていきます。
バランス型商品一本で勝負する選択肢もありますが、手数料など含めて商品選びが難儀ですし、長期で保有するほどパフォーマンスに満足できなくなります。
結果として、やはり王道は株式運用となります。日本にしろ海外にしろ、市場に居続けることさえ守れれば、長期投資をすれば一定のリターンを得ることが可能となります。
今回は、この3つの投資原則を深掘りして、実際のところはどうなのかを検証していきます。
積立投資のメリットとNISAの活用法
今人気の、米国株を中心とした株式インデックスの商品などは、つみたてNISAを活用して長期で運用を行う代表格になりますが、これは3つの原則の中でも「積み立て」が最も大きなメリットになると考えています。
スポット買いではなく、定期的に買い続けるつみたてNISAが中心の商品では、コンスタントに毎月お金が集まって、そのお金を運用に回すことで大きなリターンを得られるわけです。逆に、集まってくる運用資金がスポット買いが多い商品だと、投資家は上手く売買しようとして高値づかみをし、安く売ってしまうなどしてしまいがちになり、結果として商品全体のパフォーマンスの低下につながってしまいます。
ところで、アクティブ運用商品を比較してみると、積立投資の比率が高い投資信託では、平均の損益が他の投資信託を上回っているという統計があります。これは何を意味するのか?
定期的に積み立てをしている比率が多いと、それだけ安定して資金も集まります。変な言い方になりますが、商品を運用する方も先の見通しにゆとりができ、あまり目先のパフォーマンスを気にせず、長期運用に力が入れられるということだと思います。
NISA成長投資枠の運用では、アクティブ運用商品の積み立てとスポット買いをしながら、長きにわたり運用することが、より良い結果につながる可能性があるということだと思います。
投資初心者は、つみたて投資枠で積立投資を始めるのは理解できますが、アクティブ運用商品も買える成長投資枠で始めるのが良いと思います。あとは、商品をいくつも買い過ぎないことです。
長期運用の期間は10~15年で考える
次に「長期」。これも大事な言葉です。運用期間は長ければ長いほど、良い結果が伴います。
相談者への回答を先に言いますが、長期運用の期間は最低10年、できれば15年と答えています。
世界経済の動向は、特に悪いことが起きても、10~15年も経てばその影響を吸収できます。例えば日経平均株価を見ると、大きな変動を起こした重要な出来事として、1997年の山一証券破綻、2000年のITバブル崩壊、2008年のリーマン・ショックがありましたが、この11年間、相場は上下動を繰り返しながら動いてきました。さらにその間には地下鉄サリン事件、米国同時多発テロ、イラク戦争勃発もありました。
これらの出来事と、実際の相場の波や景気の波とは必ずしも一致しませんが、長期運用は悪い波から外れた期間も投資を続けることになるので、リスク軽減の効果があります。
特に地政学リスクや自然災害リスクなどは、これからの時代について回る最大のリスクです。これらの予測は誰にもできませんが、リスクの影響を吸収できるほどの長い期間、同じ投資を続けていけば、これらのリスクも軽減できることはわかると思います。
アクティブ型投資信託の長期積立投資の効果
積立投資と長期投資の効果について、国内株式で長期運用を実践している『さわかみファンド』が運用を開始した1999年から、毎月1万円ずつ5年間、10年間、15年間、20年間積立投資を行った場合の収支で検証していきます。

出所:さわかみ投信
当初5年はトントン、10年間ではリーマン・ショック後の下落相場で一時は評価損となることもありましたが、10年後ではトントンでした。
しかし、15年間積み立てを続けた場合は、15年後には積立額の約1.6倍まで増え、20年間では約1.8倍。2025年5月30日現在では、26年間で約2.5倍となりました。まさに長期運用の複利効果がわかります。
株式は長期運用で高いリターンが期待できること、そして積立投資も長期で継続すれば大きな効果を発揮することを改めて認識できます。
最後に「分散」になりますが、最初で説明させていただいた通りさまざまな投資商品を選ぶ必要があり、運用経験が問われるので、最初の一歩は株式をメインとした商品に絞っても良いと思います。