医療保険やがん保険について調べ始めると、ネット上の「医療保険やがん保険は必要ない」という意見を目にすることがあります。医療保険やがん保険は、病気・ケガで入院や手術をしない限り、保険料を支払うばかりになってしまう場合もあります。日本の公的保険制度が充実していることもあり、「必要ない」と結論づける人もいるのでしょう。今回は、保険の必要性を考えるポイントになる、公的保険と医療制度について解説します。

  • 高額療養費制度の仕組みと「月またぎ」の注意点
  • 2026年以降に予定されている制度改正で負担増の可能性
  • 「貯蓄」と「保険」の使い分けを再検討しよう

高額療養費制度の概要とその「スキマ」

医療保険やがん保険の存在は、病気・ケガで入院や手術をしたときの出費に備えるためのものです。しかし、日本の公的保険を利用すれば、医療費の自己負担は原則として全体の1割〜3割に抑えられます。

また、公的保険を適用した後の自己負担額が大きい場合は、高額療養費制度を活用することで、負担をさらに抑えられます。

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高額療養費制度とは、年齢と所得に応じて設定されているひと月当たりの限度額を超えた医療費負担が発生した場合、払い戻しを受けられる制度です。

【70歳未満の場合の自己負担限度額】
所得区分 自己負担限度額
901万円超 252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
多数回該当:140,100円※
600万円超901万円以下 167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
多数回該当:93,000円※
210万円超600万円以下 80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
多数回該当:44,400円※
210万円以下 57,600円
多数回該当:44,400円※
住民税非課税等 35,400円
多数回該当:24,600円※

※同じ世帯で過去12か月のうち自己負担限度額に達した月が4回以上になった場合

マイナンバーカードを保険証として利用していれば、手続きなしで高額療養費制度が自動的に適用されるため、より手軽に活用できるようになりました。

しかし、高額療養費制度にもスキマがあることに気を付けなくてはいけません。
注意が必要なのは、入院が月をまたいだケースです。

高額療養費制度は、ひと月の自己負担額が限度額を超えた場合に利用できます。しかし、入院が月をまたぐと、医療費の総額が同じでも月ごとに分かれるため、各月の自己負担額が限度額に届かず、制度の対象にならないことがあります。

【入院・退院が同月だった場合(所得区分:上表のウ)】
入院・退院が同月だった場合
【入院・退院が別月だった場合(所得区分:上表のウ)】
入院・退院が別月だった場合

また、高額療養費制度の見直しが今も検討課題とされている点も注目すべきでしょう。
一度は凍結されていた高額療養費制度の見直しですが、2025年12月末より再度検討され始めています。

案として提示されている主な変更点は、次のとおりです。

  • 限度額上限の引き上げ(2026年8月と2027年8月の二段階実施)
  • 所得区分の細分化(各区分を3区分に細分化、2027年8月実施)
  • 年間上限の導入(2026年8月実施) など

限度額の上限は区分によって異なりますが、約7〜38%の引き上げが予定されています。そのため、入院が月をまたぐ場合は、自己負担がさらに大きくなる可能性があります。
こうした変更に世帯の収入だけで対応しようとすると、家計の自由度も下がってしまうでしょう。

安心のためのコストがリスクを抑えてくれることも

医療保険やがん保険に加入をした場合、確かに月々の保険料支払いが余計なコストに感じられるかもしれません。しかし、そのコストで備えられるのは、医療費負担という、将来大きくなる可能性のあるリスクです。保険が必要かどうかは、その点も踏まえて決めるとよいでしょう。

日々の貯蓄で備えるのもよいでしょう。ただ、貯蓄には必要に応じて何にでも使える、というメリットがあります。そのため、保険で備えられるものは保険で備え、貯蓄は別の使い道に回すという考え方もあります。

自身の家計状況も、国の制度も変わらないということはありません。
それを踏まえて、改めて医療保険やがん保険が必要かどうかを考えてみるのがよいでしょう。

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