本連載は、日興アセットマネジメントの研修機関「日興AMファンドアカデミー」による、銀行や証券会社などで働く投資信託の販売担当者に向けたセミナー講義の内容を採録したものです。
〈記事提供:日興アセットマネジメント ※毎週火・金曜日更新

気付きと覚悟の両方があってこそ

では「60歳で5,000万円の金融資産を持っていられるようになろう」と自分の中でしっかりと腹に落ち、納得あるいは「前向きな覚悟」ができたとします。覚悟だなんておおげさな、と思うかもしれませんが、やっぱり覚悟なんだと思います。だってどこかで一度は元本割れを経験するし、必ず値段が動きストレスがあるのが投資なんですから。

投資にはやはりある種の「覚悟」が必要。
ただし「前向きな覚悟」で。

「何歳でいくらなければダメなんだな」という気付きと、その人にとっての適度な「前向きな覚悟」の両方があって初めて資産運用というのがスタートできるんだと思います。その両方がないとなかなか始められません。逆に、それがないと、何だか相場が良くて隣の人が儲けてるから始める、ということになりがちです。

「トランプ大統領で株はまだ上がるらしい」とか「まだ高い分配金が続くファンドがあるらしい」とか「iDeCoは税金が減らせるんだからやらなきゃ損」とか「つみたてNISAは何でやるのがベストか」といった週刊誌のキャッチコピーみたいな動機で始めてしまうと、うまく行かない気がします。だって一度は元本割れをするんです。くどいですけど。その時、自分はなぜ資産運用しているのか、何のために本当は嫌いなリスクを取っているのかの部分が腹に落ちていないと、下落の状態にきっと耐えられなくなります。

または、すごいマニアックというか熱中してしまいがちなのも、この資産運用の世界の一面のようです。まるで趣味のようになって、私たち顔負けなくらい商品やマーケットを詳しく研究したり、仕事中もネットで株や投信の動きをチェックしたり……。

それを否定するつもりはありませんが、多くの人にとってはたぶん、無頓着とマニアックの中間がちょうどいいと思うんです。「熱くならず冷めすぎず」というか、お金に対してちゃんと向き合うべきだという気付きと「前向きな覚悟」はあるが、ギャンブルじゃないんだからゆったり構えるさ――そういう温度でいるのが良いと思うのですが、そういう人が一番少ない気がします。

「お金を増やす方程式」

私たちがお勧めしたいちょうどいい温度とは、「何が儲かるか」という商品選びに躍起になる前に、一度冷静になって「お金を増やす方程式」について考えてみるという態度です。こちらです。

元本 × 期間 × 利回り = 目標金額

お金を5,000万円なら5,000万円という目標金額にまで増やすには、実は「変数」はこの3つしかありません。
「今いくら出せるのか(元本)」、「何年そのお金を寝かせられるのか(期間)」、そして「じゃあ必要な利回りは何%か(利回り)」の3つです。どれかが小さいなら、他のどれかが大きくならないと目標金額に近付けません。

具体的なケースで見てみますか。例えば40歳、将来の5,000万円を作っていくための軍資金が500万円あるとします。40歳でそんなまとまった金額を持つ人は多くない気もしますが、キリがいい数字ってことで続けます。さて、もうこの人の年金受給開始年齢は65歳と決まってしまってますから、65歳まで働いてもらいましょうね。なので500万円に与えられる期間は25年です。とりあえず運用する利回りを1%にしてみましょうか。

500万円を年利1%で運用
1年複利で運用した計算。表示される結果は何らかの商品の運用成果などを約束するものではありません。また、手数料・税金等は考慮していません。

このように「500万円×25年×1%」は641万円にしかなりません。でもこの人は確実に65歳になっています。

では動かせる変数を動かしましょう。この人、実は預貯金口座にあと500万円ありますので、元本を1,000万円にしますか。いや、ダメダメ。いくら将来が心配だからって、今あるお金のすべてを投資にまわすのはダメです。じゃあいくら残していくら投資にまわすのが適切なのか。FP(ファイナンシャルプランナー)のアドバイスなどでは、「生活費の3カ月分」は預貯金などで安全に残しておかないとダメ、などと言われたりもします。

しかし私は一律の正解や目安なんてないと思います。その人の家族構成や生活スタイルや目先の予定、または性格によって預貯金に置いておくべき金額は異なるはずですから。なので、ここは自分で考えるしかありません。投資にまわしすぎて首がまわらなくなったらシャレになりません。せっかく始めた投資をすぐに解約しなければならなくなっては意味がないです。

第8回 最強にして最良の投資手法、積立投資
第6回 「人生の選択肢を増やす」という動機