本連載は、日興アセットマネジメントの研修機関「日興AMファンドアカデミー」による、銀行や証券会社などで働く投資信託の販売担当者に向けたセミナー講義の内容を採録したものです。
〈記事提供:日興アセットマネジメント

資産運用は若者のためだけのものではない

ところで、どうでもいい話で恐縮ですが、私は今年52歳です。50歳になってから急に同窓会とかが増えて、かつての同級生に会う機会が多くなってきました。そこで改めて思ったのが「あれれ、普通はこんな感じなのか」ということでした。何かと言うと、私の同級生の多くが、将来のお金のことについてほとんど何も考えないまま50歳になってしまっているように見えたんです。

きっとそこそこの給料をもらっていて、それなりに預貯金もありそうな52歳です。でも、今まで話してきたような「65歳で5,000万円を目指そう。そのために必要なリスクを前向きに取ってやろう」という意識をもって、計画的な資産運用をしているという話は今のところ聞いたことがありません。FX(為替証拠金取引)で儲けたとか、最近だとビットコインで損したとかの話はしているんです。競馬の話みたいに。私には「何の株が儲かるの?教えてよ」という質問ばかりです。

それも仕方ないことかもしれません。これまでの日本では、一度会社に入ったら転職することもクビになることもそうそうなく、一所懸命に勤めていれば老後資金は退職金の名目で会社が代わりにコツコツためてくれるようなシステムだったわけです。将来のお金を考えて自助努力の行動を起こす意識が生まれにくかったのは当然だったと言えます。
でも50代の私の同級生はもちろん、60歳の人も70歳の人も、今日ずっとお話している「前向きな作戦」としての資産運用をすべきだと、私は思います。実のところ、今の日本の投信残高の多くは60代と70代の人によって占められているんですが、どちらかと言うとそれは、お金に余裕のある一部のシニア層が、その一部の余裕資金を有効活用するために行なっている投資である場合が多く、「必要だから取るリスク」といった考え方で行なっている人は多くないように思います。

水への投資 世界的に不可欠な資源への投資機会 BNPパリバ・アセットマネジメント

でも、終身雇用が前提だった企業の在り方がガラリと変わってしまったという事実は、私のような52歳だけでなく、すでに年金を受け取り始めている世代にも間違いなく影響を与えます。ほとんどすべての人が、前向きなリスクの取り方で、その先の人生の選択肢を増やすチャレンジをする必要がある時代に、私たちは入ったと考えるべきだと思います。

何だか小難しい言い方してしまいましたが、こういうのはどうでしょう。まずは現役世代向けコンセプトとして;

5,000万円計画

そしてシニア層には、「10年後にもう1,000万円」というご提案をしてみたいと思います。その方それぞれの事情に合った計画を立てるべきなのは言うまでもない話ですが、先ほどお話した「3,000万円の定期があるでしょ。減らなきゃいいの。減らなきゃ」という方に対しては、「使うというモノサシで測ると意外と使えない(20年間毎月取り崩そうとすると月13.8万円)」という事実をお知らせするとともに、これくらい楽しい作戦の立て方を提案してもいいのではないかなと思ってるんです。

60歳以降は
「10年後にもう1,000万円」
と考えてみる。

証券会社で営業をしている時に、よくお客様に「俺をいくつだと思ってるんだ。もう若くないんだから長期投資なんて関係ないよ」と言われました。でも、その方は誰が見ても長生きする気マンマンですし、証券取引をしているようなシニアの方はほぼ例外なく元気一杯でしたね。私、今ならその人たちに「足元の株式取引はぜひ続けてもらったらいいと思いますが、お客様、それとは別のお金で『10年後にもう1,000万円計画』を一緒に考えてみませんか!」とご提案したいんですよね。

それは、お金持ちに遊ぶ資金を増やす提案をしたいという意味ではなく、その方の10年後の生活設計を一緒に考えた時に、今お持ちのお金は「使うというモノサシ」で測ってみると実は十分ではなく、インフレという敵もやってくるかもしれず、であればシニアの方であっても「将来の選択肢を増やすための前向きなリスクの取り方」をすべきだという提案です。その具体的なイメージが、「10年後にもう1,000万円計画」というわけです。もちろん「10年後にもう2,000万円計画」だっていいと思います。何だかワクワクしてきました。

5%と簡単に言ってしまったが……

1時間目のお話はそろそろ終わりです。「覚悟」だとか「人生の選択肢」だとか、何だか大げさな話ばかり聞かされたな、と思ってらっしゃるかもしれませんね。すみません、つい。
ところで、今までいくつかシミュレーションをしましたが、その際ずっと「キリのよい5%で考えてみましょう」と言ってきました。もし今、目の前に定期預金のような「確定の5%」があれば、迷わずそれを買えば解決です。しかしそんな定期預金など無い以上、裏側にある何らかのリスクを負って「結果としての5%」を目指さざるを得ませんよね。「結果としての」とはどういう意味でしょうか。ちょっと分かりづらいですよね。具体的に説明しましょう。

第12回 投資の成果は「後から振り返るもの」
第10回 投資は5年単位で考えるくらいがちょうどいい

メルマガ会員募集中

ESG特集