本連載は、日興アセットマネジメントの研修機関「日興AMファンドアカデミー」による、銀行や証券会社などで働く投資信託の販売担当者に向けたセミナー講義の内容を採録したものです。
〈記事提供:日興アセットマネジメント ※毎週火曜日更新

顧客が含み損を抱え、悩む販売担当者たち

ところで、価格が変動する商品って、売る方の「覚悟」だって容易なことじゃありません。特に融資と預貯金を本業に信頼を集めてきた銀行が価格変動商品を売るってことは本当に重いことだと思います。それでも、異常な低金利が定着した日本において、顧客の役に立つためには幅広い選択肢を提供することが必要なのだと、銀行の経営者は投信販売をスタートしたんだと思います。

日興AMファンドアカデミーの研修では、私も含めた社員が、今日みたいな話のもう少し「難しい版」を集まってくれた金融マン・レディーたちに話します。しかし、彼らは本当に真面目ですよ。まぁ元々優秀な人が入っているんでしょうけど、本当に真面目に仕事に向き合っていて、私みたいな年齢の者からすると眩しいくらいです。


研修に参加する銀行の投信販売担当者はみんな真面目に仕事に向き合っていて、それゆえに投信の値下がりを気に病んでしまう(写真はイメージです)

でもですね、少しだけ裏を話しますと、彼ら彼女らはすごく悩んでいます。2008年のリーマン・ショックが象徴的でしたが、ここ数年間を除いて、市場環境には基本的にずっと逆風が吹いていました。特に日本人の投資環境としては、為替が一時1ドル80円を割り込むような円高傾向もありましたからなおさらです。日本から海外に投資する投信は、いくら投資した海外の株式などの値段が上がったとしても、為替が1ドル120円が100円になるなどの円高になったら、値上がりが吹き飛んじゃいますからね。

まぁそうした情勢の中、大事なお客様に「含み損」というかたちで迷惑をかけてしまったと悩んでいる人は多かったです。特に銀行の女性などに顕著で、お客様のためになると思って一緒に取り組んだ投信が、一時2割も3割も値下がりして、気に病んで会社に来られなくなってしまった人もいました。「なぜうちの銀行は、お客様に損をさせてしまうものを売るんだろう」と、根源的なところで悩む方も見受けられました。

なお、一般に銀行や証券会社の販売担当者は歩合セールスではありません。つまりお客様の払う購入時手数料の2万円や3万円は一銭も彼ら個人には行きません。彼らの会社には行きますが、個人にキックバックされるような制度にはなっていません。では彼らは何のために投信販売をしているのでしょう。私は2つあると思います。

1つは自分の役割を全うするため。販売担当者として成果を出して会社に貢献したい、上司や周囲に認められたい、と。でも、これって何も悪い事じゃないですよね。どんな仕事でも、こう思わないような人は困ります。もう1つは「お客様に喜ばれたい」。これまで2万人の販売員の方と接してきましたが、皆これをベースに日々格闘している方ばかりでした。

金融機関の担当者を上手に活用する

さっき「正しくたくさん」って話をしましたが、まさに同じことだと思います。いい時ばかりじゃない難しいマーケットにお客様と共に向き合って、「一時はストレス大きくて大変だったけど、あなたから買って良かったよ」と言ってもらいたい、そう思っている方ばかりです。他の金融機関からお金を持ってきてもらったり、お友達を紹介してもらったり。実は私も営業マン時代、これが一番うれしかったですね。

だからお客様は、今日お話ししたような「自分で考えるべきエリア」をしっかり考えた上で、金融機関の担当者を上手に、存分に活用すればいいと思います。

自分で考えるべきエリア
金融機関を上手に使うべきエリア

金融機関を賢く上手に存分に活用する。そうであれば、100万円で2万円の「相談料」は決して高くないと私は思います。また、今日お話ししてきたように長期で保有するのであれば、1年当たりの相談料は計算上小さくなります。例えば10年持ったなら最初の2万円は年当たり2千円ですから。

それでも全部自分でできるという方にとっては、2万円はやはり無駄です。ネット証券などで購入時手数料がゼロのものを買って、2万円を他のことに使うのが正解となります。すべてはお客様次第。どちらでなければならないというものではありません。そしてくどいですが、銀行や証券の投信販売を必要以上に警戒したり非難したりすることは決して正しくありません。資本市場同様、自分の人生設計のために彼らをうまく使う、という態度が正解なんだと思います。

第26回 もうひとつの大事な分散―投信積立
第24回 個人投資家は金融機関とどう付き合うか