本連載は、日興アセットマネジメントの研修機関「日興AMファンドアカデミー」による、銀行や証券会社などで働く投資信託の販売担当者に向けたセミナー講義の内容を採録したものです。
〈記事提供:日興アセットマネジメント

避けられない為替をどう考える?

日本の金利が高く、日本株式が世界一魅力的だったら、海外に投資する必要はありません。しかし多分そうでない今、私たちの資産運用においては世界に目を向けるのが得策でしょう。というか、ある程度そうせざるを得ないと思います。ただその場合、どうしても為替変動リスクというものが出てきます。これについてもう少し話しておきますね。

事実として覚えていただきたいのは、「円安にならないとマズい」ということです。米国株であれば米ドルですし、ブラジルの株式であればブラジルレアルという通貨ですが、私たちが日本円で払い込んだお金は、現地の米国やブラジルの株式を買うために運用会社の中で両替されなければなりません。それらの国の投信を買ったお客様は、実はもはや円ではなく米ドルやブラジルレアルで資産を保有しているわけです。

円安にならないとマズい。

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ということはつまり、米国やブラジルで上場している企業の株価が首尾よく上がってくれたとしても、日本の投信としては円換算して価値を表示しますから、その時々の為替レートによって大きく左右されるわけです。

現地の株価は2割上がったのに、円ドルレートや円レアルレートが2割下がってしまったら、つまり現地の通貨が下がり円が上がってしまったら、プラスマイナスゼロってことです。現地通貨に対して円が上がってしまったら、と言いましたが、それがよくニュースで言う「円高」ってやつです。ということで、海外に投資する投信を持っていたら「円高」になったら困るわけです。為替レートは買った時と変わらないか、変わるなら「円安」方向に変わってくれないと困るわけです。

どうでしょう。OKでしょうか。ではどうなったら円高になったり円安になったりするのでしょうか。これは実は深いテーマでして、今日のこの時間だけでは語り尽くせません。色々な要因があって、先ほど話した株式や債券のようなシンプル化ができません。それでも非常に単純化して一側面だけでシンプル化を試みるとすると、それは「金利差」です。


日本円と現地通貨との金利差が、為替レートが円高もしくは円安に動く要因となる

為替レートとは二国間の通貨の交換比率ですよね。その比率を測るひとつの尺度が金利です。結論だけ言うと、金利の高い(正確にはより高くなると思われる)国の通貨の方が強くなる傾向があります。もし日米でアメリカの方が金利水準が高いのなら、ドルの方が強くなる傾向があるという意味です。つまりドル高、だから反対に言えば円安、です。

確かに、すべての資産には「人気投票」の側面があるという意味では、そりゃ高い金利がつく国の方が人気が出ますよね。同じ期間運用するのに、ほとんど金利が付かない日本の国債を買うよりも、日本円をドルに替えてアメリカの国債を買った方が有利なら、皆両替しますよね。つまり円を売ってドルを買って、そのお金で米国債を買うと。皆がそういう行動をとったら売られまくる円は安くなりそうですね。つまり円安です。「金利が高い国の通貨が高くなりがち」――ひとつの為替決定要因として、覚えておいてください。

金利が高くなる国の通貨は
強く(高く)なりがち
※特に先進国

景気が良くなると金利は上がりやすい

現在の状況に即して考えると、私たち日本人にとって海外資産への投資はまぁまぁ安心かも、ということになります。なぜなら日本は金利がまだまだ低い期間が長引きそうで、米国はじめ海外は金利が少しずつ上がりそうだからです。ちょっと脱線しますが、金利は景気と深い関係があって、一般に景気が良くなると金利は上がっていきます。何で?と思われた人もいるかもしれませんが、逆のシチュエーションで考えると分かりやすいかもしれません。

景気が悪くなると、政府や中央銀行は金利を下げてお金を借りやすくするんでしたよね。だからバブル崩壊以降の日本はずっと低金利なんですよね。今後日本の景気も本格回復してきたら、きっと金利は上げられます。いつまでも金利を低くしていると、また簡単に借りられるお金で不動産を買い上げたりする人たちが出てきてバブルが起こるかもしれませんから。そういうのを未然に防ぐために、多分金利は上げられると思います。今のアメリカがまさにその局面です。2015年12月に9年半ぶりに政策金利という、中央銀行が仕切る金利が少しだけ引き上げられ、その後数回にわたって様子を見ながら「そろりそろり」と引き上げられています。

円ドルレートで言えば、その事象は米ドル高、つまり円安への動きに働きます。日本から海外資産に投資する私たちにとってそれは好都合なことです。ですから為替レートが気になる方は、まずは2つの国の金利動向を確認するのがひとつの手がかりといえます。と簡単に言いましたが、それって結構難しいことなので、さっき話した通り、金融機関の販売員の人に「宿題」として投げかければいいんです。ちゃんと調べて教えてくれますから。

第32回 「途中のリスク」と「最後のリスク」
第30回 リートの特徴と3資産の値動きの比較

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