車の修理会社、ロボット科学教室、ドローンのパイロットスクール、紳士服のコナカの顧問、AI(人工知能)コンサルタント――と5つの顔を持つ石原潤一さん。斜陽産業から新興産業まで幅広く複数の事業を展開するに至った経緯や、近い将来に備えた経営の姿勢について伺いました。(聞き手・文=南野胡茶)

複数の顔を持つと、見える世界は変わる。コナカ×AIコンサルタント【中編】

他流試合を繰り返し経営者の質と勘を磨く

石原潤一氏プロフィール画
石原潤一(いしはら・じゅんいち)
1973年埼玉生まれ。1995年車の修理会社ストーンフィールド設立。2011年ソフトバンクアカデミア入学。2016年ユニバーサル・ロジック設立。2017年国際UAVビジネス支援協会設立。2018年、紳士服コナカの顧問就任。

―なぜこんなにたくさん事業を展開しているのでしょうか。

石原さん ソフトバンクアカデミアで孫さんに学んだことが一番影響しています。孫さんはかねてより、アカデミア生に「最低でも10社の会社の社長、もしくは社外取締役を務めなさい」と話しています。例えば、自分のいる業界では常識とされることが、他業界では非常識であることが多くあります。「他流試合をすることで経営者としての質と勘が研ぎ澄まされていく。最低10社は取り組まないと自分の業界を客観的に見ることはできないだろう」という教えです。

孫さんから学んだ特に大切な教訓はもう一つあります。それは、「いつも時流に乗る」ことです。会社を大きく発展させるためには、優秀な人材をどれだけ確保できるかどうかがカギと言えますよね。しかし優秀な人材は往々にして独立するリスクも高いです。独立された場合、会社は大打撃を受けて売上げが大きく下がります。だから世の中の会社は大きくなったり小さくなったりを繰り返しているのです。これではなかなか成長しません。そこで孫さんは、「どんな人材を配置しても後ろから来る上昇気流に乗れる産業を探し出して、そこに網を張るべきだ」と説きます。「資金と時間は、8割を潮の流れと風向きを見ることに遣いなさい。残りの2割で実行しなさい」と言うのです。

石原潤一氏(5)

―時流という観点から石原さんの会社を当てはめると…。

石原さん 車の修理事業は斜陽産業ですね。一方、ロボットのプログラミング教室は、2020年に小学校でプログラミング教育の必修化を控えており、まさに時流に乗っていると言えます。実際、広告宣伝費を打たなくてもどんどん受講生が増えているところです。ではドローン事業はと言うと、時流が来る前の産業です。世間で話題になってきてはいますが、ドローン事業だけで仕事として成り立っている方はまだほとんどいないでしょう。それぞれ潮の流れと風向きが異なる業種を運営していると、いろいろな発見があってとても面白いです。

―ソフトバンクアカデミアでは、孫さんの講義以外にどんな学習プログラムがありますか?

石原さん 基本的にはプレゼン練習です。生徒同士が互いのプレゼンに点数をつけ合い、300人中トップ10人は孫さんの前でプレゼン発表を行います。定期的に新規事業プレゼン大会が開催され、その場で新規事業スタートが決まることもあります。

―プレゼン大会を見事勝ち抜き、実際にスタートした事業の事例を教えてください。

石原さん 最近ですと、自動運転事業が挙げられます。2019年7月3日~5日に、アカデミア生が社長を務めるソフトバンクの子会社SBドライブが、自動運転車両の公道走行実証実験を都内で行いました。自動運転に関しては、ソフトバンク本体も同年6月に、新東名高速道路で5Gの車両間通信を用いた車間距離自動制御の実装実験に世界で初めて成功しています。次世代モバイル通信規格5Gは、現行の4Gと比べて通信速度が1000倍になると言われています。通信技術の進展によって、一気にいろんなことができるようになりますね。

2600名の意識改革。0から1を生み出す人材育成

―石原さんがいま一番おもしろいと感じているお仕事はなんですか?

石原さん コナカさんとのお仕事です。2600人の社員が在籍する会社の改革を社長から拝命しています。一部上場企業の改革に関われる機会はなかなかないので。

―どんな経緯でコナカさんの顧問に就任されたのでしょうか?

石原さん 代表取締役社長CEOの湖中謙介氏と食事をする機会があって、そこでAIの話をしたことがきっかけです。ありがたいことに、ぜひうちに来て欲しいと言われまして。大きい会社になればなるほど、社員一人ひとりが会社の歯車になってしまい、全体を俯瞰することができず、自分の頭で考えて行動に移せる人材が少ないと言いますよね? だから、まずは勉強会をやろうと2018年10月にKONAKA維新塾を立ち上げました。KONAKA維新塾では、毎月一回、外部講師を招待しています。そして年に一度は新規事業プレゼン大会を開催しています。2019年1月には第一回プレゼン大会を実施し、すでに事業化に向けて3つの会社が動き始めています。業種は「福祉」「レンタカー」「リクルート」。いずれもコナカならではの案件となっています。

石原潤一氏(6)

石原さん アパレル業界、なかでも紳士服業界は自動車業界と同様に斜陽産業で、どこも右肩下がりです。例えば写真フィルムメーカーの富士フイルムが化粧品などヘルスケア事業を展開しているように、紳士服専門店も他事業に取り組まなければ生き残れない時代が来ています。コナカの目標は、改革スピードをどんどんあげていき、多角化していくことです。いずれは新規事業を年間10社は立ち上げていきたいと考えています。

―年間10社!

石原さん 社員2600名、これだけ人がいれば可能だと思います。紳士服のみの売上高は現在およそ800億円ですが、市場全体が縮小しており、コナカの売上高もどんどん目減りしています。年間10社くらいのスピードで新しい事業の柱を次々に立ち上げていかなければ、この規模の会社を支えることは難しいです。

―勉強会を重ねるごとに、受講生がどんどん能動的になっていく傾向は見られますか?

石原さん まだ劇的な変化はありません。改革というものは難しく、実際に行動に移しているのはほんの一部の人だけです。そもそも参加は任意かつ有料(3000円)なので、ほとんどの人は学びにさえ来ません。

―参加される方はかなり意欲的な層なんですね。

石原さん そういう方々でないと変われないと思ったので、あえて敷居を高くしてみました。社内だけでなく、社外の方も参加できます。社外からの参加者も多いですよ。多種多様な経歴を持つ方々に登壇いただいておりますので、毎回異なることが学べます。KONAKA維新塾へ、ぜひ一度いらしてみてください。