金融と最先端のテクノロジーが交わることで、これまでにはなかった新しいサービスや商品が日々生まれています。本連載では、金融業界の最新動向や新たな分野の金融サービスを紹介していきます。(毎月第3月曜日更新)

話題にしにくい、「お金」のことを話しやすく

働き方や日々の暮らしの役割分担とともに、家計の管理も従来とは違った方法が求められる共働き世帯。ところが、お金についてコミュニケーションを取りながら、共同で家計を管理できている夫婦は少ないそうです。

新婚夫婦や同棲を始めたばかりのカップルは、「このやり方で合っているか不安」「エクセルとアプリ、どちらも使って面倒くさい!」「子どもが生まれるし、そろそろ家計管理をしたほうがいいかな?」など自己流の家計管理に不安を抱いていることでしょう。

お金の管理・貯金をサポートするアプリの「OsidOri(オシドリ)」は、そうした家計管理をこれから始める人たちに役立つかもしれません。

「自分専用ページ」と「家族ページ」の使い分けで、夫婦のお金のプライベートとシェアを両立することができる「OsidOri」。アプリの特徴やリリースにあたりこだわったこと、今後のサービス展開について、株式会社OsidOriの創業者で代表取締役CEOの宮本敬史さんに伺いました。(取材日:2019年9月3日)

OsidOri
宮本 敬史(みやもと・たかし)
株式会社OsidOri 代表取締役CEO
金融企業やFintech企業で企画、営業、システム業務を経験する。金融コンサルティング企業のインフキュリオンでは、金融機関向けのコンサルティングおよび新規事業企画を担当。決済分野におけるキャリアを活かして、2018年6月に「OsidOri」を創業し、2019年8月からお金の管理・貯金アプリ「OsidOri」をリリース。

シェアとプライベートを使い分けて、一緒に家計を管理

―「OsidOri」はどんなアプリなのでしょうか?

宮本 「OsidOri」は夫婦で一緒に、お金をカンタンに管理できるアプリです。アプリとユーザーの銀行口座、クレジットカード、デビットカード、電子マネーなどの情報を連携することで、口座の入出金の履歴や資産残高、各決済手段での支払い履歴をリアルタイムで管理できます。

最大の特徴は、ユーザーのみが閲覧できる「自分専用ページ」とは別に、アプリをペアリングした相手と共同で閲覧・管理できる「家族ページ」を設けた、2画面構成としているところです。

―「家族ページ」は夫と妻でシェアできるページで、「自分専用ページ」は自分だけのプライベートページということですか?

宮本 そうです。例えば、生活費を管理する口座に夫婦で毎月10万円ずつ出し合い、家賃や公共料金、食費などの生活費の支払いにはその口座のお金を充てているとします。

「家族ページ」にその口座の情報を連携させれば、夫婦がそれぞれのスマートフォン上のアプリから口座の収支状況を確認できますし、口座に紐づくクレジットカードも登録して買い物をすれば、カードの引き落とし履歴も閲覧できます。

そして、「自分専用ページ」に登録した銀行口座やクレジットカードなどの残高、収支の情報はアプリに登録した本人だけが見れます。ペアリングをしているパートナーは閲覧できません。

家族ページ自分専用ページ

「家族ページ」(左)と「自分専用ページ」(右)。夫婦のお金のシェアもプライベートも、アプリひとつで管理できる

―他にはどんな機能があるのですか?

宮本 「利用明細」では口座からの引き落としや買い物の履歴などの取引一覧が表示されますが、任意の支出を「家族ページ」にスワイプで移動させることができます。

例えば、「自分専用ページ」に登録したデビットカードで、外食代金を建て替えて支払ったとします。通常はそのまま「自分専用ページ」の「利用明細」に履歴が残りますが、その取引を右へスワイプすると、「家族に振り分ける」という表示が現れ、そのまま画面の端までスワイプすれば、外食の支払いが「家族ページ」の「利用明細」に移動されます。

スワイプで支出を移す夫婦のページに反映

「利用明細」からは、シェアしたい項目のみをスワイプして「家族ページ」でカンタンに共有

また、「Osidori」では「目標貯金」機能があり、そちらで夫婦の金銭的な目標を設定することができます。「住宅購入/頭金」、「子供教育資金」など7つの目標テンプレートのほか、自由な目標も設定できます。

家族の目標設定
「目標設定」機能を使えば、貯金がどの程度進んでいるかなど、目標に対する達成度もわかる

―アプリを利用するにあたって、手数料などはかかりますか?

宮本 「Osidori」のすべての機能は無料で使っていただけます。「OsidOri」は2019年8月にリリースしたばかりのアプリなので、まずは多くの人に使ってほしいです。今後は、機能の拡大とともに有料機能も追加していくことを検討しています。

自身や友人が感じる「不便さ」が起業のきっかけ

―アプリ開発のきっかけは何だったんですか?

宮本 「夫婦間でのお金の管理」には課題があるな、と前々から感じていたことですね。

共働きをしている友人・知人夫婦などへインタビューしたところ、エクセルや既存の「家計簿アプリ」などで管理している人が多かったのですが、お金に関するプライベートな部分と夫婦としてシェアしたい部分が曖昧なままで、そこに不便さを感じていることがわかりました。

夫婦でもお金のことは共有できたほうがいい。けれど、プライベートな部分の確保も必要。でも、現状では金融機関も既存のFintech企業も、それらを兼ね備えたサービスは提供していなかったので起業を決意しました。

―アプリをリリースして、数週間が経ちますが、ユーザーからの反響は?

宮本 ツイッターなどSNSの反応を見ていると、「こういうアプリを待っていた」「早速ダウンロードした」など好意的なコメントを頂けています。

同棲を始めた、または結婚する予定、結婚したばかりなど、いままでは一人で暮らしていたけどパートナーと一緒に生活するようになり、初めて特定の相手とシェアをしなければならなくなった人が、「OsidOri」を見つけて使ってくれているのではないかと思います。

今後、サービスを提供していく中で、ヘビーユーザーの方にインタビューを行って、利用した理由や使用感などを聞いて、頂いた感想や意見をサービス向上に活かしていきたいです。

ユーザー登録後のトップ画面タイムライン

ダウンロードしたばかりの「OsidOri」の「自分専用ページ」のトップ。アイコンは好きな画像に変更ができた(左)。画面下の3つのタブのうち、真ん中の「タイムライン」の「お知らせ」に、次にやるべきことをまとめたチュートリアルがあった(右)

目指すは「コミュニケーションの促進」

―日本ではすでに、いくつかの「家計簿アプリ」がリリースされています。競合が多いジャンルに敢えて飛び込んだのはなぜでしょう?

宮本 インタビューをした友人の中には「夫婦の支出入の管理にAの家計簿アプリ」、「自分の支出入の管理にはBの家計簿アプリ」と、2つのアプリを使い分けしているような夫婦が複数いたので、「OsidOri」の機能にはニーズがあるのではないかと考えました。

当社では、「OsidOri」を家計簿アプリとは捉えておらず、あくまで「夫婦間のお金のコミュニケーションを促進するためのアプリ」のつもりで作っています。実は当社のホームページでも、「家計簿」という言葉を使っていないんです。

家計簿の目的は「収支がわかる」ことだと思いますが、「OsidOri」にとってそれは一つの機能に過ぎません。アプリで情報をシェアして、目標を立て将来設計を作れるように促し、夫婦が自分たちのお金についてコミュニケーションを図れるようになる。それが、「OsidOri」が目指す世界です。

―アプリの開発にあたって、どんなところにこだわりましたか?

宮本 「夫婦で共有している部分」と「自分だけが見られる部分」がはっきりするように、画面構成をしっかり分けたことです。

本当は、スワイプするだけで「自分専用ページ」と「家族ページ」を行き来できるようにすることもできたのですが、そうするとどちらのページを使っているのかわかりにくくなってしまいます。

ユーザーから見て、「お互いのプライベートページが簡単に見られちゃうんじゃないの?」と思われないよう、安心感を持ってもらえるデザイン、使用感であることが大前提だったので、UI(ユーザーインタフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)については議論を重ねました。

アプリにどんな機能を盛り込むかもかなり悩みました。初リリース時に機能が多すぎると「難しそう」と思われますし、反対に「OsidOri」独自のユニークな機能を実装してなければ、「便利そう」「ちょっと使ってみようか」と思ってはもらえないので。

シェア画面に切り替え
画面左上のメニューボタン(白い三本線)を押すと、「家族ページ」への切り替えボタンが現れる

夫婦から「家族」へ成長するためのサポート

―将来的にどんなサービスを実装する予定ですか?

宮本 証券口座や加入している保険の情報、ECサイトでの買い物履歴なども「OsidOri」と接続できるようにしたいです。すでに準備は始めており、徐々にアップデートしていく予定です。

加えて、アプリ内のチャット機能のような夫婦間のコミュニケーションを促せる機能も付けたいです。ほかにも、同じぐらいの年収、生活水準の人たちの平均貯蓄額や投資をしているかなどを比較して、資産形成のアドバイスを行えるような、未来の資産づくりのお手伝いができるアプリに成長できれば嬉しいです。

このアプリはホワイトラベルでの提供も考えているので、例えば銀行や保険会社にOEM提供や一部機能の提供をして、お持ちのアプリ内の一機能として活用してもらう形も構想しています。

地方銀行が開催したイベントやアクセラレータープログラムで優勝させていただけるなど、外部からも高く評価していただけたので、なるべく早い段階で企業向けサービスも提供していきたいです。

―「OsidOri」をどのように使って欲しいですか?

宮本 家計管理のやり方は夫婦の数だけあると思います。だから、このアプリも、ユーザーに全機能を使ってもらおうと考えていません。「貯金をバラバラにやっているけど、子供の将来のことも考えなくちゃね。じゃあ、子供の貯金だけ共有してみようか」など、多様な使い方をしてもらいたいです。

便利さだけでなく、夫婦が家族として成長していける、目指したい家族像を実現するためのサポートこそ、我々がユーザーに提供できる真の価値だと自負しています。夫婦の幸せ、ひいては家族の幸せにつながるようなサービスでありたいなと思っています。

―Fintech業界を見渡してどんな印象を受けていますか?

宮本 各社がさまざまな良いアプリやサービスを提供していますが、それらが「ユーザーの課題解決にダイレクトに繋がっているか?」を常に自問することが、Fintech業界全体で行うべきことだと捉えています。

大切なのは、「この金融サービスをどうFintechに落とし込んで広めるか」ではなく、「ユーザーが困っていることをどう解決するか」だと考えており、当社はユーザーファーストを中心に置き、サービスを拡充させていきます。

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