宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。第2回目は前回に引き続き、元本割れへの不安に対する回答として、iDeCo、NISA、つみたてNISAの活用法に関するアドバイスをお届けします。

  • iDeCoとNISA。目的に応じて上手に使い分けて。
  • 時間をかけてじっくり増やしたいお金は「つみたてNISA」を。
  • 元本割れが不安なときは、長期投資で「お金に長く働いて」もらおう。

【質問】
投資は元本割れが不安。元本割れしない方法でないと安心できないのですが、どうしたらいいのでしょうか?

いつでもお金を引き出せるようにするならNISAを活用

前回の記事では、元本割れの不安を打ち消すためには、投資を「日常生活で普通に使うお金」と考えて「ほったらかし」の状態を作ること、そのために途中でお金を引き出せない個人型確定拠出年金(iDeCo)から始めてみることをお勧めしました。

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ところで、世帯を持った方からは、iDeCoのように60歳まで引き出しができないなどの制約があると、急な出費や自動車購入、習い事などまとまったお金が必要になったときに困る、と聞きます。この記事を作成しているまさにその時、我が延岡市で台風17号の影響で竜巻が起こったみたいです。自宅から500mしか離れていない場所での出来事。甚大な被害になりそうです。千葉県でも台風の影響で大規模な停電が発生しました。いつ自分自身が被災して、お金の必要性に迫られるかはわかりません。そうなると、すぐに引き出しできないiDeCoは不便です。

「いざというときのために、いつでもお金を引き出せるようにしたい」という方に私がお薦めしたいのは、NISA(少額投資非課税制度)です。NISAはiDeCoと同じく、運用益(値上がり益、分配金、配当)は非課税! ただし、1年間に投資できる上限(非課税投資枠)は120万円と定められています。

NISAができたのは2014年ですが、まだまだ一般社会に浸透しているとはいえません。ある友人からは「金もっちょるもんがやるもんじゃろ? “兄さん”ってなんね?」と言われました(笑)。私の身近なところでは、いまだにNISAも投資も「自分には関係ない、お金持ちがやること」として認識されています。でも、運用益が非課税になるお得な制度は知ってて損はないもの。

災害
災害などに備えて、必要なお金をすぐに引き出せるようにしておきたい

長期運用ならつみたてNISA。引き出しすぎに注意

長期的にじっくりお金を増やしたいなら、2018年から登場した「つみたてNISA」を強く勧めます。一般NISAでは運用益が非課税となる期間は5年ですが、つみたてNISAは20年。コツコツ長い期間積立投資できるのが一般NISAとの大きな違いです。中途の解約もOKで、もちろん運用益は非課税。こんなにありがたい投資法はありませんね! 非課税投資枠は一般NISAより少ない年間40万円ですが、この枠を20年間フルに使用すれば、800万円ものお金を非課税で運用できます。

注意点は、つみたてNISAで投資できるのは、長期の積立投資に適しているとされる一部の投資信託やETFと決まっていること。自身のリスクと相談しながら、適切な投資信託を選ぶ必要があります。できれば、資産運用について相談できる人がいると安心ですね。また前回話しましたように、「納めたお金の元本割れが怖い」という不安を解消するには「ほったらかして忘れる」ことが大切なのですが、そのためには「ほったらかしても問題ない範囲内の金額」で投資できるよう、毎月の投資金額をご自身で調整すれば良いのです。

そして、投資は自身でも楽しまないと長続きしません。利益があれば、多少解約して自分のために使う。これが大事です。「積み立てた額が思ったより増えてない。もしかして、損した?」と感じたときにも、以前に利益を吐き出していたことで、ホッと「上がったときに引き出せて良かった」と安心するはずです。積立投資を長く続けるためには、「ちょっと儲かった」と実感できる機会も大切です。

ただし、途中で引き出せないiDeCoと違って、つみたてNISAは「必要ならばすぐ解約できる」という仕組みがが心の甘さにつながる懸念もあります。価格が上がったからといって多く引き出しすぎて、せっかく非課税で積立投資できる効果が薄れてしまうのを防ぎたいものです。

グルメ
投資で得た利益の一部で少しだけぜいたくを楽しんでみるのも、投資を続けるモチベーションにつながる

投資初心者の方は「お金に長く働いてもらう」ことを意識

iDeCoは老後のために、途中解約ができない状態でお金をじっくり増やすための制度。NISAは単に非課税で投資ができる制度。その中でも、つみたてNISAは長期の投資を応援するものです。思うに、一般NISAはある程度の投資経験がある方向けで、商品に至っては、株式の個別銘柄も含まれます。非課税期間が5年間と短いのと、非課税投資枠が年間120万円もあることも、短期投資向けといえます。

一方、つみたてNISAは投資金額も運用商品も絞られており、短期売買ではなく長期運用でお金を増やしたい投資初心者にとって使いやすい設計です。運用中は元本割れをしてしまう期間もあるかもしれませんが、元本割れするほど投信の価格が下がっている時期には、同じ投信を安い価格でたくさん買えることになるので、値上がりに転じたときは大きな利益となります。そう考えれば、元本割れは決して怖いものではないと思います。

これらの特徴を理解して、資産運用の初心者はできるだけ長く「お金に働いてもらう」ことに徹していきながら、まずはiDeCoやつみたてNISAで投資に慣れることから始めて、自分自身に合った投資スタイルをじっくりと確立していきたいものです。

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