年初の株高は先物が主導

日経平均株価は2018年10~12月期に約17.0%下落した。背景には、①利上げ継続と財政刺激効果のはく落で米国の景気循環がピークアウトする懸念、②米国による制裁関税の影響で中国経済が失速する懸念、③英国がEU(欧州連合)から「合意なし」で離脱する懸念などがあったと思われ、これらにより、投資家は世界景気の先行きに慎重な見方を強めたと推測される。

ただ、このような懸念は行き過ぎであろう。①については、1月のFOMC(連邦公開市場委員会)でハト派的な政策スタンスが示され、利上げの不安はすでに払拭された。当社は、米国の実質GDP(国内総生産)成長率は2019年が前年比プラス2.4%、2020年は同プラス2.0%を予想しており、成長ペースは減速するものの、景気後退は想定していない。

②について、中国政府は第13次5カ年計画の最終年である2020年まで「新常態(ニューノーマル)」を徹底する一方、2019年1月からは個人所得税の減税幅を拡大するなど、景気対策を打ち出している。中国の実質GDP成長率は、2019年が前年比プラス6.3%、2020年は同プラス6.1%を予想しており、米国同様、景気後退は想定していない。

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③については、英国議会、EUとも「合意なし」の離脱を回避したい点で一致している限り、多少の紆余曲折があっても、最終的に「合意あり」の離脱で着地する公算は大きいと見ている。

その後、日経平均株価は2018年末から2019年2月末まで約6.9%上昇した。業種別では、電気機器、機械、非鉄金属が、それぞれ約10.6%、約9.1%、約8.6%上昇し、2018年の大幅安とは対照的な動きになった。悲観的な世界景気の見方と、行き過ぎた株安に修正が入ったということだが、株高の持続性についてはやや注意が必要だ。

そこで、海外投資家の動きを確認してみたい。海外投資家は2018年通年で先物を約7.5兆円売り越したが(日経225先物、日経225mini、TOPIX先物、ミニTOPIX先物、JPX日経400先物の合計額)、2019年は1月第1週(1月4日)から2月第4週(2月25日~3月1日)まで、約1.8兆円の買い越しに転じている。株式市場では2月に米中貿易協議の進展期待が急速に広がったが、海外投資家はこうしたなかで先物を大幅に買い戻したと見られる。

一方、現物を見ると、海外投資家は同期間に9800億円売り越している。一般に、海外投資家の先物取引は投機筋など、現物取引は年金などが中心とされているため、年初の株高は長期マネーに支えられたものではなく、期待先行、先物主導のやや投機的な動きと考えられる。

【図表】海外投資家の日本株売買状況

【図表】海外投資家の日本株売買状況
※データは2019年は1月第1週(1月4日)から2月第4週(2月25日~ 3月1日)。金額は累計。
先物は日経225先物、日経225mini、TOPIX先物、ミニTOPIX先物、JPX日経400先物の合計。
現物は東京・名古屋2市場、1部、2部と新興市場の合計。
出所:大阪取引所、東京証券取引所のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

世界景気失速の可能性は低い

以上を踏まえると、世界景気に対する悲観的な見方の修正が続く限り、海外投資家が先物の買い戻しを進め、裁定業者(主に証券会社)による「先物売り+現物買い」の裁定取引を通じ、現物に上昇圧力が生じることが予想される。

米中貿易協議の行方には引き続き注意が必要だが、当社は構造問題の長期化を見込んでいるものの、2018年のような関税引き上げ合戦が再発する恐れは小さいと考えている。また、国内企業の業績見通しは2019年度も控えめなものになると思われるが、株式市場にはある程度、織り込み済みであろう。

世界景気にとってネガティブな材料が浮上すれば、海外投資家はただちに先物売りに転じ、現物株が崩れる公算は大きい。ただし前述の通り、当社は世界景気が大きく失速する可能性は低いと考えている。やや長い目で見れば、日本株は振れ幅を伴いつつ下値を徐々に固め、慎重ながらも水準を切り上げて行く展開を予想している。

J-MONEY 2019年4月号より転載。記事内容は2019年3月25日時点)

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