レポート提供:ニッセイアセットマネジメント(2019年4月11日)

  • 欧州中央銀行(ECB)は政策金利の現状維持を決定。前回変更された声明文についても概ね変更なし。
  • 引き続きハト派(金融緩和推進派)姿勢が維持され、ドラギ総裁は記者会見で超低金利政策の継続が銀行に及ぼす副作用への対策の必要性について言及した。

ECBは4月10日の定例理事会で、主要政策金利を現状の年率0.00%に据え置きました。前回会合(3月)で今年夏以降から来年以降へと先延ばしされた利上げ時期についてや、利上げタイミングまで保有債券の償還金等の再投資を「長期間」継続するという文言に変更はありませんでした。

記者会見でドラギ総裁は、直近の経済指標の弱さからユーロ圏の経済は「2019年は低成長が継続する」とし、物価についても「基調的なインフレ率は弱まっている」としながらも、景気後退する可能性は「依然として低い」としました。

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4月4日に公表された3月のECB理事会議事要旨では、超低金利政策が銀行にもたらすリスクについて議論がなされたことがわかりました。利上げ時期の先延ばしにより、マイナス金利(預金ファシリティ金利(-0.40%):3つある政策金利の1つで金融機関がECBに預け入れる準備額の金利)が継続され、銀行は金利負担が続くことから、収益性の低下などが懸念されています。

今回の会合後の記者会見でも具体策は検討していないものの、マイナス金利政策への副作用を軽減する支援策の必要性について言及がありました。

4月1日にユーロ圏の3月製造業PMI(購買担当者指数:改定値)が公表され、47.5と前月(2月:改定値)から1.8ポイントの低下となり、2カ月連続で好不況の境目である50を割り込み、約6年ぶりの低水準となりました。

欧州連合統計局から発表された3月のユーロ圏のCPI(消費者物価指数)<速報値:対前年同月比>は+1.4%と2月からは0.1ポイント下落し、ECBが重視するエネルギー・食料・タバコ・アルコールを除く指数も+0.8%と2月から0.2ポイント下落しました。物価は一進一退の状況が続いています。

【図表1】ユーロ圏消費者物価(CPI)
【図表1】ユーロ圏消費者物価(CPI)
出所:ブルームバーグデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成

3月22日にドイツの製造業PMIの大幅低下を受けて2016年以来のマイナスの金利まで低下し、前日にも航空機などを中心とした米欧貿易摩擦への懸念からマイナス圏で金利が推移していた欧州債券(ドイツ)市場は、ECBのハト派的な姿勢や低調な米国経済指標を受けて金利は低下(価格は上昇)しました。

英国の欧州連合(EU)離脱問題を巡る混乱から、ユーロ安(対ドル)で推移していた為替の反応は限定的なものとなりました。当面は英国のEU離脱問題の動向や5月の欧州議会選挙などのイベントを睨んでの展開となると思われますが、弱い経済指標発表などの景気の減速が意識される相場展開には注意が必要と思われます。

【図表2】ドイツ10年国債金利とユーロ・米ドル
【図表2】ドイツ10年国債金利とユーロ・米ドル
出所:出所:ブルームバーグデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成

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