レポート提供:ニッセイアセットマネジメント(2019年7月25日)

  • 保守党党首選は事前の予想通り、ジョンソン氏が勝利し新首相に就任。合意なき離脱も辞さない政治姿勢に、市場は警戒感を高めている様子。
  • 再び合意なき離脱の可能性が高まれば、年後半の世界経済の景気回復期待に暗雲が漂う可能性も。

保守党党首選はジョンソン氏が勝利

7月23日に結果が公表されたメイ首相の後任を選ぶ保守党党首選は、ジョンソン氏が大差で勝利し、24日首相に就任しました。ジョンソン氏は党首選の公約(図表1)で、EU(欧州連合)離脱は期限である10月31日を厳守し、合意なき離脱も辞さないことを表明しています。一方で離脱方針をEU側と再交渉することで、合意なき離脱が発生する確率は極めて低くなるとも発言しています。ただし、EU側は再交渉を否定しており、英国政府、議会、EUのそれぞれの思惑から妥協点が見つけられない状況が、これまでと同様続くことが想定されます。首相が交代しても厳しい状況に変わりはないとの声も聞かれます。

【図表1】ジョンソン新首相の党首選での主な公約

項目 概要
EU離脱問題 10/31の離脱期限を厳守。ただし、合意なき離脱の可能性はかなり低い。バックストップ条項(アイルランドとの国境問題)を含めたEUとの再交渉を目指す。合意なき離脱の際は、影響を受ける産業に補助金を給付。EUとの再交渉達成まで約390憶ポンドの離脱清算金の支払いを拒否。
移民政策 オーストラリアタイプの移民政策推進。英語が話せるか、職が決まっているかなどの要件を精査する制度を提案。純流入移民を年間10万人以下とする現行制度の(移民数を抑制する方向へ)見直し。
歳出 国が定める生活賃金(生活水準維持に必要な最低時間給)の引上げ。警察関連公務員の2万人増員の財源確保。高速鉄道建設計画の見直し。
ヘルスケア EUへの拠出金を国民健康保険サービス(NHS)の財源に充当。すべての加入者が無償でサービスを受けられる制度を目指す。

出所:各種報道資料のデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

英国の景況感を示す指標は、離脱決定後、離脱に向けた政府方針などが示されいったん回復しました。しかし、メイ政権下での離脱協定案を巡る一連の混乱や強硬離脱を辞さない姿勢のジョンソン氏が首相に就任する見通しなどを受けて直近の景況感指標は、離脱決定直後(2016年7月)の水準まで低下しています(図表2)。英国企業や国民の先行き不安を表す結果となっています。

【図表2】EU離脱決定以降の英国景況感指標の推移
【図表2】EU離脱決定以降の英国景況感指標の推移
出所:ブルームバーグ、欧州委員会HPのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

日々離脱問題を巡るめまぐるしい動きがある中で、市場は「合意なき離脱の可能性」のみを、大きなリスクと捉えられているものと思われます。当初離脱期限(3月末)前後に合意なき離脱の回避を巡り英国政治が混乱した際には、英国のみならず、主要国市場にも連日影響を与えました。党首選終盤を迎えた17日には、ジョンソン氏優勢の報道をうけて合意なき離脱への懸念からポンドは対ドルで一時約2年ぶりの安値をつけました。

労働党は2度目の国民投票実施を支持

新首相の政治姿勢に対して、現閣僚の数名が辞任を表明し、野党労働党は、EU残留を選択肢に含む離脱方針の承認を行う国民投票の実施を公約としました。貴族院では与野党が協力するなど、合意なき離脱の回避を議会で法制化する動きも出ています。引き続き英国政治の混乱が想定されます。

年末に向けて世界景気回復見通しに暗雲も

直近では米中貿易摩擦の激化による世界的な景気後退懸念が漂っていますが、今後は欧米金融当局による緩和的な金融政策、中国政府や再選を目指す米国トランプ政権の景気刺激策などが期待されます。年末にかけて緩やかな景気回復が想定され、一部投資家は年末に向けて主要各国の株式市場は上昇基調で推移するとの見通しを示しています。しかし10月31日の離脱期限に向けて、再び英国政治の混乱が続き合意なき離脱の可能性が高まれば、日本株など主要国株式市場の堅調な見通しに暗雲が漂うことも想定されます。

◆ニッセイアセットマネジメントのマーケットニュース一覧はこちら

【当記事に関する留意点】
当記事は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示記事ではありません。実際の投資等に係る最終的な決定はご自身で判断してください。
当記事は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
当記事の内容は作成時点のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
当記事のいかなる内容も将来の市場環境等を保証するものではありません。
当記事にインデックス・統計記事等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

メルマガ新規登録キャンペーン