レポート提供:ニッセイアセットマネジメント(2019年8月21日)

  • 工業生産(前年同月比)が約10年半ぶりの低水準を記録するなど、中国の7月主要経済指標は景気減速が続いていることを示すものが多く見られる。
  • 中国人民銀行(中央銀行)等が新たな経済対策を発表。中国は10月に建国70周年を迎える。景気失速を避けるための追加策に対する期待が中国株式市場を下支えする可能性も。

(1) 7月経済指標は景気減速が続いていることを示す

7月の中国主要経済指標は、景気減速が続いていることを示すものが多く見られます。7月の工業生産は前年同月比4.8%増にとどまりました。伸び率は6月から1.5ポイント縮小し、およそ10年半ぶりの低水準となりました。

個人消費も減速傾向が続いています。小売売上高は同7.6%増と6月の9.8%増から2.2ポイント縮みました。自動車販売は6月より改善したものの、2018年7月以降連続で前年同月割れが続いています。固定資産投資は不動産開発投資が減速し、同5.7%増と6月に比べ伸び率が鈍化しています(図表1)。

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中国政府は、地方政府のインフラ投資積極化のための資金繰り支援策や、2兆元(約30兆円)の減税・手数料軽減策の実施などの経済対策を講じています。しかし、その効果は現時点では明確には表れていないようです。

【図表1】中国主要経済指標
中国主要経済指標
※前年同月比(固定資産投資は年初からの累計値の前年同期比)
出所:CEIC、ブルームバーグデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成

(2) 新たな経済対策を発表

中国人民銀行は8月17日、企業の借入コスト低下などにつながる金利改革を公表しました。上海短期金融市場での銀行間取引金利(SHIBOR)は景気減速等を背景に2018年以降低下傾向をたどっているものの、企業向け平均貸出金利は高止まりの状態が続いています(図表2)。

中国人民銀行は声明文で、優良企業向け優遇金利(最優遇貸出金利)の形成メカニズムを改革・改善し、実質貸出金利の低下を後押しすると表明しました。

【図表2】3カ月物SHIBORと企業向け平均貸出金利
3カ月物SHIBORと企業向け平均貸出金利
出所:CEIC、ブルームバーグデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成

中国国家発展改革委員会(NDRC)は8月16日、内需を刺激するために2019年と20年に可処分所得を引き上げる対策を打ち出すと発表しました。その対策の中には都市戸籍取得に必要な要件を緩和して都市化を積極的に進めることや、給料以外に収入を得る手段を増やすことなどが含まれると説明しました。

(3) 追加対策期待が株式市場を下支えする要因に

景気減速などが嫌気され、軟調に推移していた中国株式市場(上海総合株価)は、新たな経済対策発表などを支援材料に反発し、8月19日には8月1日以来の水準まで回復しました(図表3)。

中国は10月に建国70周年を迎えます。今回の中国人民銀行の金利改革公表などを受け、今後発表される経済指標の内容などによっては、追加対策への期待が強まることも考えられます。米中貿易摩擦の長期化観測が高まりつつある中、株式市場の下支え要因となりそうです。

【図表3】上海総合株価
上海総合株価
出所:CEIC、ブルームバーグデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成

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