本連載では、30代の筆者がiDeCoデビューを試みます。金融機関選びから口座開設、商品選定まで、ときには専門家のアドバイスも聞きながら進めていきます。(毎月第2水曜日更新)

意外と知られていない「浮気防止代」


一色徹太さん
一色FPオフィス

vol.1では、口座管理手数料が無料の金融機関(運営管理機関)に注目しました。金融機関の選び方について、今回はDCアドバイザーの一色徹太さんにより詳しく伺います。一色さん、どうぞよろしくお願いします。

一色さん こちらこそ、よろしくお願いします。

―iDeCoの運用は長期にわたるので、手数料が安い金融機関を選んだほうがいいと思っています。この考え方で問題ないでしょうか?

一色さん はい。口座管理手数料が無料の金融機関は、iDeCo口座の有力候補になると思います。ただし注意すべき点もあります。それは、「運営管理機関変更時手数料」です。その名の通り、運営管理機関を変更するときにかかる手数料のことで、簡単にいえば「浮気防止代」のようなものですね。口座管理手数料が無料の金融機関はほとんど徴収しています。逆に、口座管理手数料が有料の金融機関は、こちらは無料にしているケースが多いです。

―いくらくらいかかるんでしょうか?

一色さん 4320円としているところが多いです。この費用は意外と公になっていない気がして、とあるマネー誌の取材を受けた際、「どうして書かないんですか?」と聞いたことがあります。すると、「広告主に不利な情報なので絶対に出せません!」との答えが返ってきました。

―大事なことなのに……。でも、一度決めた金融機関をずっと使えば問題ないわけですよね?

一色さん そうですね。ただ、iDeCoの運用は基本的に60歳まで、60歳以降に受け取るならもっと長い付き合いになります。期間が長いと、いろいろなことが起こる可能性が増していきます。例えば、スルガ銀行はiDeCoに力を入れている金融機関のひとつです。ところが最近、投資用不動産をめぐる不正融資などの問題が起きてしまいました。不祥事をきっかけに信用できなくなり、「変えたほうがいいかな」と思っている人は少なくないでしょう。

―無料ならどこでもいいというわけではないんですね。

一色さん 経営状態や信用力まで踏み込んで検討したほうがいいと思います。そのうえで、最後まで利用できそうな金融機関を選びましょう。

同じ資産クラスでも信託報酬が3倍以上違うことも

―運用商品のラインアップでは、どんなところを見ればいいですか?

一色さん 各資産クラスのインデックスファンドに注目しましょう。「国内債券型」「国内株式型」「外国債券型」「外国株式型」という4つの資産クラスについては、例外はあるものの、大抵の金融機関は少なくとも1本ずつ用意しています。

【図表1】主な金融機関がiDeCoで取り扱う投資信託の本数

  国内債券型 国内株式型 外国債券型 外国株式型
  インデ
ックス
アク
ティブ
インデ
ックス
アク
ティブ
インデ
ックス
アク
ティブ
インデ
ックス
アク
ティブ
SBI証券 1 2 4 3 1 9 5
松井証券 1 1 1 2 2
マネックス
証券
1 3 4 3 4 2
楽天証券 1 1 2 5 3 1 4 2
大和証券 2 2 2 2 2 6
auアセット
マネジメント

※口座管理手数料が無条件で無料の運営管理機関6社を掲載。
※auアセットマネジメントはバランス型ファンド4本と預金商品を取り扱う

2本以上取り揃えているところもありますが、多ければいいというわけではありません。大事なのは数ではなく、質です。面倒かもしれませんが、具体的な商品の中身を必ず確認しましょう。

―同じ資産クラスのインデックスファンドでも、良い商品とそうでない商品があるということでしょうか?

一色さん はい。ポイントは2つあり、ひとつは信託報酬です。信託報酬とは、投資信託を管理・運用してもらうための経費のことで、「純資産総額に対して年率○%」という形で設定されています。保有している間は毎日差し引かれるため、長期の運用では見逃せないコストといえます。下図は、各資産クラスについて信託報酬の水準を分類したものです。

【図表2】主な証券会社がiDeCoで取り扱う投資信託の信託報酬(年率)ごとの本数

  国内債券型 国内株式型 外国債券型 外国株式型
  0.5%未満 0.5%以上
1.0%未満
1.0%以上 0.5%未満 0.5%以上
1.0%未満
1.0%以上 0.5%未満 0.5%以上
1.0%未満
1.0%以上 0.5%未満 0.5%以上
1.0%未満
1.0%以上
SBI証券 1 2 3 1 3 1 9 1 4
松井証券 1 1 1 1 1 2
マネックス
証券
1 3 1 3 3 4 2
楽天証券 1 1 2 1 4 2 1 1 3 2 1
大和証券 2 2 1 1 2 2 6

便宜上、「0.5%未満」「0.5%以上1.0%未満」「1.0%以上」と3つに分けていますが、さらに細かく見る必要があります。例えば、国内債券型のインデックスファンドで最も信託報酬が低い商品は0.1296%ですが、一方で0.486%のものもあります。

―3倍以上の差があるんですね。

一色さん どちらも低水準ではありますが、長期間運用するiDeCoではこの差は大きいと考えられます。このような商品間格差は国内株式型や外国株式型でも見られますので、注意したいところです。

運用がヘタなインデックスファンドに注意

一色さん もうひとつのポイントは、ベンチマークとの乖離です。インデックスファンドの運用担当者は、特定のベンチマーク(日経平均など)と同じ値動きをするように運用します。ただ、実際には完全に一致しないケースが多く、この誤差のことをトラッキング・エラーといいます。

―日経平均のファンドなのに日経平均と違う値動きになるということですね。それはちょっと困ります。

一色さん 注意したいのは、ベンチマークに負け続けているインデックスファンドがあるということです。ベンチマークとの乖離は、運用説明資料で確認できます。1年間、3年間、5年間といった期間ですべてマイナスになっているファンドはやめたほうがいいでしょう。

【図表3】「運用がヘタなインデックスファンド」の収益率(イメージ)

  1年間 3年間 5年間
ファンド
収益率
-17.80% -1.16% 2.79%
ベンチマーク
収益率
-16.13% 0.81% 4.74%
差異 -1.67% -1.97% -1.95%

いずれの期間でもファンド収益率がベンチマーク収益率を下回っている

―どうしてそういうことが起きるのでしょう?

一色さん 一言でいえば、運用がヘタということです。長期にわたってベンチマークに負け続けているインデックスファンドは、明らかに運用体制に問題があります。それも人手が足りないなどの根本的な問題でしょう。過去の実績なので将来もそうとは限りませんが、昔から成績が良くないファンドが急に勝ち出すことはほぼありません。運用体制がガラッと変わらない限り、改善しないと思われます。

iDeCoから撤退する金融機関が増えていく

―ほかに見落としがちなポイントはありますか?

一色さん 意外と大事なのが、コールセンターです。三菱UFJ銀行や三菱UFJ信託銀行のように年末年始以外はずっと営業しているところもあれば、土日は営業なしというところもあります。各社によってスタンスに差があるので、営業日と営業時間はチェックポイントにするといいでしょう。

―実際に利用する機会はそう多くないかもしれませんが、長い付き合いになるという意味では、そのあたりの姿勢も確認しておいたほうがよさそうですね。


コールセンターはいざというときに頼りになるだけでなく、その運用体制は金融機関の「やる気度」を見極める基準にもなる

一色さん そうですね。実は、iDeCoビジネスは金融機関にとって全く儲からない赤字事業です。あまり力を入れていなかったり、経営状況が芳しくなかったりする金融機関はiDeCoから撤退するリスクもあり、「やる気度」を見極めることはとても大切です。個人的には、iDeCoから撤退する金融機関はこの先間違いなく増えていくと見ています。

―自分の意思とは関係なく、金融機関を変えざるを得ないケースもあるということですね。前回の記事でも書きましたが、私はSBI証券でつみたてNISAの口座を持っています。管理の利便性を踏まえると同じがいいかなと思っているのですが、SBI証券のiDeCoはどうでしょうか?

一色さん SBI証券は口座管理手数料が無料ですし、ラインアップも申し分ありません。コールセンターは土曜日も営業していますね。経営状況の面でも姿勢の面でも問題ないと思います。

―ありがとうございます。それでは、やはり私はSBI証券でiDeCoを始めたいと思います! 次回は商品の選び方についてお話を伺います。引き続き、どうぞよろしくお願いします。

(次回は8月14日を予定しています)