資産運用セミナーは信用できるのか?

「老後2000万円問題」が騒がれたのは6月初旬のこと。もとより今の20~30代の方は、公的年金制度の先行きに疑問を持っており、年金だけでゆとりある老後が過ごせるとは考えていなかった方が多いと思いますが、将来不足しそうなお金の目安を具体的な数字で示されて、不安をさらに強めた方もいるのではないでしょうか。

そんな風潮を受けて、資産運用セミナーに参加者が殺到しているそうです。

「老後2000万円」動く個人 ネット証券に申し込み急増(日本経済新聞 2019年6月25日)

「老後に約2000万円の備えが必要」とした金融庁の報告書をきっかけに、個人が資産形成へ動き始めている。ネット証券では20~40代の現役世代を中心に、運用益が非課税の少額投資非課税制度(NISA)の申し込みが急増。資産運用を扱うセミナーには募集を大幅に上回る参加希望者が集まっている。

こうした状況を見て、口の悪い人は「金融業界の思惑どおりだな」「不安をあおられて金融機関のカモにされるだけ」なんてことを言っていたりもします。
実際に資産運用セミナーといってもいろいろで、多くは証券会社や銀行が主催するまっとうなセミナーだと思いますが、なかには「5年間で2000万円を貯める」というような売り文句でハイリスクな投資商品を勧めて、買った人は大損、もうかったのは業者だけ、というセミナーもあるかもしれません。


全国各地の銀行や証券会社などで、資産運用セミナーが行われている

下手にセミナーに参加したら、だまされてしまうのではないか?

そんな不安のために、資産運用について学ぶせっかくの機会を逃してしまうのももったいない話です。そこで今回は、「資産運用セミナーでだまされないポイント」を考えてみたいと思います。

投資家のためにならない営業は金融業界も問題視

前提として、公的年金制度に対する不安は、持ち続けた方がいいと思います。

政府は公的年金制度について「将来にわたって持続可能な制度」だと強調していますが、年金が減らないとは言っていません。実際に「マクロ経済スライド」という仕組みによって、2019年度の年金支給額は実質的に減額となります。公的年金は現役世代が高齢者を支える賦課方式であり、今後も少子社会が続くことはほぼ確実なので、年金の支給額は現在の水準を維持することすら難しいと思われます。そのことを前提に、将来のお金のことを考えなければいけません。

その前提に立つのであれば、現時点で生活費にある程度の余裕がある方は、退職後の資金を自分で用意することを考えた方がよさそうです。若いうちから資産運用セミナーに参加し、お金を増やす手段を知ることはとても大切です。現役世代であれば、iDeCoやつみたてNISAの使い方はぜひ知っておきたいところです。

一方で、近年は若い世代を狙った詐欺が増えているようです。年配の方と比べて「押し」に弱い、お金や法律に関する知識が少ない、相談できる相手がいないなどの傾向があり、そうした弱みにつけ込んで、ローンを組まされて高額商品を売りつけられるようなトラブルが報告されています。

金融機関が主催するセミナーでは、さすがにそのような悪徳商法まがいの金融商品を売りつけられることはないとは思いますが、すべての金融機関が必ずしも誠実であるとは限りません。金融機関が目先の利益を優先して、顧客の事情に合わない金融商品を勧めてしまうことへの問題意識は金融業界の中にも以前からありました。
2017年3月には金融庁が「顧客本位の業務運営に関する原則」を公表し、これに応じる形で多くの金融機関が「フィデューシャリー・デューティー宣言」を発表しました。「老後2000万円問題」の発端となった金融庁の報告書「高齢社会における資産形成・管理」も、そうした問題意識の延長線上にあるものといえます。

「画一的なマネープラン」や「一括投資」には注意

金融庁の報告書では、「現役期の顧客への対応」として以下のような対応を提案しています(太字は筆者による)。

■現役期の顧客への対応

現役期の顧客は他の年代に比べ、ネットの金融資産は多くなく、金銭的にも時間的にも生活に余裕は少ない。しかしながら老後の資金も含め、資産形成ニーズを潜在的に保有している。これらの特徴を踏まえた商品やサービスの提供が必要であると考えられる。

・可能な限り、金融以外の資産・負債も含む家計のポートフォリオ全体を俯瞰し、個々の状況に即したマネープランの提案など総合的なコンサルティングサービスの提供。
資産形成のニーズに対して、短期的な取引関係に終わらせず、長期・積立・分散投資等を提案。
顧客との信頼関係の構築により、退職後も含めた長期的な取引関係へと結実。

この報告書は金融業界に向けた提言なので、金融機関が主語になっていますが、顧客である個人投資家の利益にもかなった内容になっています。
この提言を裏返すと、注意すべきセミナーの内容が浮かび上がってきます。

注意すべき「資産運用セミナー」

(1) 個々の家計などの状況を顧みずに画一的なマネープランを押し付けて、とにかく商品を売りつけようとする

(2) 長期・積立・分散投資を勧めず、一括で投資させようとする

(1)の例では、「老後に2000万円足りなくなる」というのを共通の前提のように語り、今すぐに投資を始めなければだめだ、とせき立てる営業手法が考えられます。2000万円というのはあくまで目安でしかなく、それぞれの家計や資産によって運用のあり方はさまざまです。実際の資産運用は「個々の状況に即したマネープラン」が出発点でなければいけません。

(2)の例では、最近では「かぼちゃの馬車」が社会問題になりました。投資家が借金をしてシェアハウスに投資し、その賃料などが投資家の収入になるという仕組みですが、運営会社のずさんな経営のために投資家への賃料の支払いが滞って、投資家は多大な損失を抱えました。

ひとつの資産に集中して投資した場合、その対象が破たんしてしまえば終わりです。投資対象の分散と投資タイミングの分散は、資産運用の基本中の基本です。この基本から外れた提案は、老後のゆとりある生活のための資産運用とは関係ない、目先の一攫千金を狙った投資の話だと心得るべきでしょう。

上の2点に注意しながら、資産運用セミナーを上手に活用して、資産形成に正しく取り組みたいものです。

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