少しずつお金を出し合って、高価な不動産をみんなで所有する

土地や物件を賃貸する“大家さん”の生活に、あこがれたことはありませんか?
不動産を持っていない者にとって、毎月毎月、賃料収入が入ってくる生活は非常に魅力的です。が、少し冷静に考えると、周りが思うほど楽ではない現実もあるようです。

家賃を得るには、当然のことながら賃貸物件を購入したり、所有の土地に物件を建設しなければなりません。土地も建物も、普通に買えばどんなに安くても何千万円もの大金が必要です。
さらに、不動産会社などから物件を購入する場合は「不動産仲介手数料」、ローンを利用して購入すれば「ローン事務手数料」と「ローン保証料」も負担します。そのほかにも、「火災保険料」「印紙代」「登録免許税」「司法書士報酬」「不動産取得税」「固定資産税・都市計画税」などがかかります。入居者の募集や物件管理を不動産会社に依頼すれば、その費用も支払う必要があります。さらに、入居者が見つからない空室リスクや建物の老朽化、金利リスク、価格下落リスクなども抱えなければなりません。不動産を運用するだけでいったいどれだけお金がかかるのか、我々庶民にとっては気が遠くなる話です。

そんな多額の資金を支払わずに、大家になる方法はないものなのでしょうか?
実はあるんです。
競馬には「一口馬主」という制度があります。たとえば「100口」で募集している競走馬を1口所有した場合、支払うお金は通常の馬主の100分の1、その馬がレースで勝ったときに得られる利益も100分の1になりますが、馬主気分を味わうことができ、うまくいけば多大な利益を手にすることもできます。
その一口馬主の不動産投資版というべき金融商品が「J-REIT」なのです。

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J-REIT(Jリート・日本版不動産投資信託)は、Japan Real Estate Investment Trustの頭文字の略称です。投資家から集めた小口の資金を不動産に投資し、その家賃収入などから得られた利益を投資家に分配します(図表)。たくさんの一口馬主が1頭の競走馬を所有するのと同じように、大勢の大家さんが少しずつお金を出し合って、個人では買えない高価な不動産をみんなで所有する仕組み、ともいえるでしょう。

【図表】J-REITの仕組み
J-REITの仕組み

少額投資、リアルタイム売買、分散投資などのメリット

J-REITには、金融商品としてのさまざまな魅力があります。
第1は、少額から投資できる点です。一般的に、投資用のマンションに投資する場合は、数千万円の資金が必要です。J-REITは、数万円から購入できます
第2は、株式と同じ上場商品であることです。証券会社の窓口やインターネット取引を通じて、上場株式と同じように板情報を見ながらリアルタイムの売買ができます。購入にかかる費用は、購入手数料と口座管理費用だけです。
第3は、複数の不動産に分散投資している点。通常の不動産投資では、保有する物件が自然災害などの被害を受けた場合に、大きな損失が発生することがあります。J-REITは、数件から数百件の不動産を運用しているため、たとえ1つの物件に万一のことが起きても、J-REITの価格がある程度下がることはあってもゼロにはなりません。また、不動産の運用をプロに任せられる点も魅力です。

◆主なJ-REITの魅力◆
①実物不動産に投資する場合と比べ、数万円程度の少ない金額から投資できる
②上場商品のため、証券取引所の営業時間中はリアルタイムで取引できる
③複数の不動産に分散投資。1件の不動産が破たんしても価値はゼロにならない

なじみのあるビルも、実はJ-REITの物件かも

J-REITの投資対象は、①オフィスビル、②賃貸住宅、③ファッションビルやショッピングモールなどの商業施設、④倉庫などの物流施設、⑤ホテルや旅館などの宿泊施設、⑥高齢者住宅や医療施設などのヘルスケア施設というように、実にさまざまです。ほとんどが日本国内の不動産ですが、一部の銘柄は海外の不動産も保有しています。
各銘柄は、単一の用途に投資する「特化型」と、複数の用途に投資する「複数型」に大別されます。2018年12月末時点で、61の銘柄が上場しています。

それぞれの投資対象の特徴は以下のとおりです。

①オフィスビル

オフィスは、J-REITの中で最もポピュラーな投資対象です。オフィス型のJ-REITを選ぶ際には、個別銘柄が投資する各オフィスビルの状況を把握することはもちろん、オフィスの平均賃料と空室率の指標をもとにオフィスビル市場全体を見通すことも重要です。

②賃貸住宅・④物流施設

住宅や物流施設は、景気の好不調にかかわらず一定の需要があり、賃料も比較的安定しているといわれています。ともに、オフィスや商業施設と比べると複数年で契約することが多いため、安定的な分配金が期待できます。

③商業施設

商業施設は、人々の消費と密接にかかわるため、景気感度が比較的高い投資対象といえます。近年、インターネット通販などに押され、大手の小売業者の店舗閉鎖もあり、投資に慎重になる投資家も少なくありません。一方で、地元に強いスーパーマーケットなどを有する施設は好調です。買い物以外の付加価値を提供できる商業施設という視点で、銘柄を選ぶのも1つの方法です。

⑤宿泊施設

ホテルは、景気とインバウンド需要の影響を強く受ける銘柄です。2020年の東京オリンピック開催のころまでは、ホテル市況は底堅いと考えられているようです。

⑥ヘルスケア施設

ヘルスケア施設は、高齢化の進む日本にとって、将来的な成長が最も期待できる投資先といえるでしょう。しかし、圧倒的な介護士の不足と不動産の高騰により、新たな物件の取得が進んでいない現実もあります。人手不足が解消されれば、ヘルスケア施設が魅力的な投資対象になると考える市場関係者も少なくありません。

それぞれのJ-REITがどの物件を保有しているかは、ホームページですべて公開されています。
もしかしたら、皆さまの取引先の会社が入居しているオフィスビルや、お知り合いが住んでいるマンション、普段よく利用しているショッピングセンターも、実はJ-REITが保有する物件かもしれません。J-REITへの投資を通じて、そうした身近な物件の“大家さん”になってみるのもいいかもしれませんね。

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