日本人の9割以上はポイントを貯めている

「○○ペイ」という言葉をテレビコマーシャルやネット、街中で目にすることが多くなりました。これは、スマートフォン(以降スマホ)のアプリを介した支払いサービス全般を指しています。

筆者は編集者として、2017年くらいからこうした現金を用いない決済手段“キャッシュレス”サービスの進展を追っていますが、2019年に入ってから急激に、多数の「○○ペイ」決済専用端末を導入した店舗を実際に見かけたり、利用してみたというユーザーの声を聞いたりすることが増えてきました。

キャッシュレスを取り巻く業界では、「キャッシュレス化の推進」について語るとき、日本の先を行く中国をベンチマークにする話が引き合いに出されやすい傾向にあります(2016年時におけるキャッシュレス決済の各国比率は、日本が約20%に対して中国は60%超。野村総合研究所「キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識」PDFより)。


中国で急速に広まったキャッシュレス決済。なかでもスマートフォンを使った決済は、クレジットカードやプリペイドカードより導入しやすいため、日本でも広まりを見せている

隣国の目覚ましいキャッシュレス普及スピードに、日本も見ならう部分が多いという意見です。一方で、中国でキャッシュレスが爆発的に広まった背景に、銀行口座を開設できない層が多く存在したり、固定電話やパソコンなどの技術導入が成熟期を迎えるよりも先にスマホが普及したりといった、日本とは異なる部分も目立ちます。

キャッシュレスサービスを提供する1社である楽天は、日本におけるキャッシュレス定着のカギは「ポイント」にあるといいます。確かに日本は、国民の9割以上が何かしらのポイントを貯めているポイント好きの国で、これは海外ではあまり見られない独特の文化です。実際、ポイント関連の決済額の合計は、国内消費支出の3分の1に相当するという調査結果もあります(野村総合研究所「生活者1万人アンケート調査」2015年、「地域経済応援ポイント活用による消費拡大に向けて~利用者視点での論点整理」2016年PDFより)。

そこで今回は、「ポイントを基軸に拡大するキャッシュレス」という角度から、楽天ペイメント株式会社の楽天ペイ事業本部 マーケティング・編成部長の諸伏勇人さんに、楽天ペイについて今後の展望などを伺ってみました。(取材日:2019年1月25日)

諸伏 勇人さん
楽天ペイメント株式会社
楽天ペイ事業本部
マーケティング・編成部長
諸伏 勇人さん

楽天ペイと各カードの合わせ技でポイントを4重取り!?

―なぜ日本のキャッシュレス普及のカギは「ポイント」にあると考えられるのでしょうか。

諸伏 日本には、「○○ペイ」といった決済サービスが登場する前から、クレジットカードやSuica、PASMO、nanacoといった電子マネーなど、キャッシュレス決済手段は複数ありました。それにもかかわらず、キャッシュレス決済比率は2016年時点で約2割にとどまっています。これに対し、ポイント関連決済比率は約3割を占めています。中国や米国では見られない独特のカルチャーであるポイント制度は、日本のキャッシュレス普及の一つのフックになるはずです。

楽天グループの決済サービスである「楽天ペイ」は、「ECからリアルへ」というテーマで2016年10月にスタートしました。前身の「楽天スマートペイ」は、2012年から中小規模店舗を中心に導入を進めてきました。楽天IDは2018年9月末時点で1億以上を誇り、そのほとんどが決済情報と紐づいています。このIDをオンラインの世界からオフラインの世界でも利用できるようにしたのが、楽天ペイです。

―楽天ペイならではの特徴とは?

諸伏 楽天ペイの最大の特徴は、楽天スーパーポイントが街中で気軽に利用できるようになった点です。ネットショッピングを利用する場合、ユーザーが購入される商品価格は高い傾向があり、付与されたポイントは一定の金額に達するまでなかなか使いにくいものがあります。しかし、コンビニなどでも利用できれば、100ポイントや200ポイントといった少額からでも飲み物や軽食の購入に活用できます。

楽天ペイ
楽天ペイ利用時のポイント付与画面

しかも、楽天ペイは、楽天グループが展開する決済サービスの中で、現在最もポイントが貯まるサービスです。例えば、楽天カードなら、100円の決済で1ポイントが貯まります。さらに、楽天カードを登録した楽天ペイを決済に利用すれば、ポイントが1.5倍です。例えば、税込み659円の決済では、楽天カードが6ポイント分、楽天ペイが3ポイント分、計9ポイント獲得できます。

また、お店によっては独自のポイントカードも併用可能です。ローソンを例に挙げれば、Pontaカードを提示すると、Pontaポイントも貯めることができます。ローソンで楽天ペイ、楽天カードに加え、Pontaポイントと、ポイントを3重に獲得できます。さらに、ローソンのように、来店ポイントアプリ「楽天チェック」にも対応しているお店であれば、ポイントの4重取りも可能になります。

楽天は、ポイントの価値はIDの価値にほぼ等しいと考えています。消費者からすると、使わないポイントはいくら付与されても無用の長物でしょう。しかし、どこでも使えるポイントであれば、本来以上の価値が生まれます。ポイントの価値をリアルの世界を介して最大限上げていくことで、ユーザーに「楽天会員でよかった」と感じていただけるサービスを増やしていくことを目標にしているのです。

楽天が発行済みの累計ポイントはすでに1兆超

―2015年の調査では、2020年頃に国内のポイント・マイレージの発行総額が1兆円を超えると想定されていました(※)。楽天スーパーポイントは現在、どのくらい発行されていますか?

野村総合研究所「地域経済応援ポイント活用による消費拡大に向けて~利用者視点での論点整理」2016年 PDF p.7より)

諸伏 過去22年間で発行してきた楽天スーパーポイントの累計は1兆2千億ポイントを超えました(2018年9月時点)。同規模でポイントを発行している企業はほかにないと思います。

楽天グループが展開するスマホ決済サービスを使える場所は、2019年2月1日時点で全国300万カ所を突破しました(スマホ決済対応個所数)。楽天グループでは、Eコマース、デジタルコンテンツ、FinTech、通信など70を超えるサービスを展開する「楽天エコシステム」という独自の経済圏を形成し、さらに、「ID・ポイント・加盟店ネットワーク・70超のサービス」の4つのビジネスの掛け算などで、ネットとリアルの融合を進めています。
楽天ユーザーは、共通のIDでこの楽天エコシステム内の複数のサービスを利用でき、ポイントも貯めたり使ったりすることが可能です。

■楽天エコシステム

2018年7月には、同社が運営する国内シェア第2位のフリマアプリ「ラクマ」と連携し、売上金を「楽天キャッシュ」にチャージすることが可能になりました。これにより、楽天ペイを介せば、ラクマの売上金をコンビニなどの実店舗で支払いに活用することができるようになりました。

―楽天スーパーポイントやラクマの売上金が街中で気軽に使えるようになったのは、かなり画期的ですね。レジで実際にポイント支払いを利用したい時、どんな操作を行いますか?

諸伏 楽天ペイの支払い画面を出していただくと、バーコードとQRコードが表示されます。その左下に「すべてのポイントを使う」という項目が出てくるので、そこにチェックを入れてください。コンビニエンスストアであれば、そのまま店員にバーコードを読み取ってもらって、支払いは完了です(ポイントが購入金総額を超えていた場合)。コンビニにおける楽天ペイの支払いは、1回あたり4,000ポイントまで利用可能です。

日本のキャッシュレスはお得な「ポイント」を基軸に拡大(後編)