かつて東京都以外の46道府県において「親が泣いて喜ぶ勤務先ベスト3」といえば、県庁、地元マスコミ、そして地方銀行でした。しかし、人口減少や低成長による企業の資金需要の落ち込み、マイナス金利などで、多くの地方銀行が青息吐息の状況です。就職活動や転職活動で目指してもOK! な地方銀行を見抜く4つのチェックポイントを紹介します。

  • 地銀の過半数が実は赤字。安全度は、発行債券の格付けで見極める。
  • 地銀の株価もチェックして。100株1000円以上が目安のライン。
  • 自己資本比率、不良債権比率、預金残高も安全度の判断材料に。

過半数の54行で本業が赤字!

金融庁によると、2018年3月期の決算では、地方銀行の過半数の54行で本業が赤字であり、うち52行が2期以上連続で赤字でした。

地方銀行の「安全度」を見抜くチェックポイント ①格付け

これは正確に言うと、銀行が発行する債券の安全度をランキングしたもので、「Aa」や「BBB」というようにアルファベットの数であらわされます。米国のスタンダード&プアーズ(S&P)やムーディーズ、日本の格付投資情報センター(R&I)などがランキングを行っていて、これらの会社は「格付け機関」とも呼ばれています。

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S&Pの場合、「AAA」(トリプル・エー)が最もランクが高く、次いで「AA」(ダブル・エー)、「A」(シングル・エー)、「BBB」(トリプル・ビー)と続きます。補助記号として「+」(プラス=比較的良い)と「-」(マイナス=比較的悪い)の記号がつく場合もあります。「BB」(ダブル・ビー)以下は「投資不適格」とみなされ、安全性の面で失格の烙印を押されることになります。

こうした格付けは、大きな変更があった際などにテレビや新聞でニュースになるほか、インターネットで格付け機関のホームページにアクセスすれば見ることができます。就職活動や転職活動で地方銀行を目指すときは、銀行の格付けに注目してみましょう。

■おもな格付け機関のホームページ(金融関連)

スタンダード&プアーズ(米国)
日本を含む26カ国におよそ1400名の格付けアナリストを擁し、事業会社や金融機関など約120 万の信用格付けを公表している

ムーディーズ(米国)
日本においても各種債券・プログラムの格付が増えており、ムーディーズの格付を受けている日本の発行体は300社以上におよぶ

格付投資情報センター(日本)
日本を代表する格付会社で、信用格付けをはじめ年金運用コンサルティングや投資信託の評価などの各種サービスも提供している

地方銀行の「安全度」を見抜くチェックポイント ②株価

株価は多くの投資家が参加する株式市場での、その時どきの評価を意味します。つまり、株価が低い企業は「投資する魅力が少ない」とか「経営が危ない」と思われていることになります。地方銀行に限らず、投資する魅力が少ない企業は、就職活動や転職活動ではできれば避けたいもの。就職や転職をするなら、投資する魅力があり、経営が安定している企業を目指したいところです。

株式を公開している銀行の株価は、毎朝の新聞に掲載されていますし、インターネットでも簡単に調べることができます。

現在、東京証券取引所に上場するすべての株式が100株単位で取引されています。過去の経験則から、投資単位が100株の場合は「株価1000円」が目安のラインといわれています。つまり、1000円を割り込んで株価が3ケタの銀行は、株式市場では将来性や収益性が不安視されているともいえます。例えば、投資用不動産に関する不正融資が経営問題に発展したスルガ銀行の場合、問題が発覚した2018年の1年で株価は2000円から500円台へと4分の1に下落しました。

株価の上下にはさまざまな要素が影響するので、1000円を切ったから即その金融機関は危ないというわけではありません。特定の銀行だけ株価が急落したり、長期にわたって1000円ラインを割っていたりするような場合は黄色信号と考えて、就職活動や転職活動の際には気をつけましょう。

就職・転職を考えている地方銀行の株価が下がった時は、ひとまず他行の株価とも比較してみよう

預金残高は、総額より増減率に注目

地方銀行の「安全度」を見抜くチェックポイント ③ディスクロージャー誌

銀行や信用金庫、信用組合は、それぞれ財務内容や営業成績などをまとめたディスクロージャー誌を発行しています。預金者なら誰でも支店の窓口でもらうことができるので、ぜひ請求して一読してみてください。

中身は決算などの数字が並んで、かなりの知識がないと読みこなせませんが、地方銀行などの金融機関に就職や転職を考える際に特に押さえておきたいポイントは、大きく分けて3つです。

1つ目は「自己資本比率」で、これが高いほど経営状態が良いと判断することができます。海外にも営業拠点をもつ銀行は国際基準で8%以上、それ以外の金融機関は国内基準で4%以上を維持することが義務づけられています。それをクリアできていない金融機関には注意しましょう。

2つ目は「不良債権比率」で、文字通り、貸し出しに占める不良債権の割合です。この数字が低いほど貸し出しの焦げ付きが少ないわけです。5%以下が理想で、10%を超えて12~13%ぐらいまで上がっているようだと危険信号です。

3つ目は「預金残高」で、これは総額よりも増減率に注目してください。大きく減少しているようだと、「あの銀行は危なそう」と企業や個人が預金を引き出しているかもしれません。

地方銀行の「安全度」を見抜くチェックポイント ④預金金利

1995年に経営破たんしたコスモ信用組合は、破たん直前に他の金融機関より金利を2%も上乗せした定期預金「マンモス定期」を販売しました。1999年破たんした新潟中央銀行も、郵送手続きだけで済む高金利定期預金を大々的に宣伝しました。

高金利預金は銀行にとってコストが高く、むしろ経営を圧迫します。他行より高い金利を提示している場合、その銀行はいわば「やけっぱち」でなりふり構わず預金集めに走っているか、何か他の思惑があるかのどちらかと考えることができます。

いずれにしても、これは「イタチの最後っ屁」みたいなもので、早晩、破たんへと向かうのがオチでしょう。就活・転職を考えている金融機関が他よりも異常に高い金利を設定していたら、そこは経営が危ないかもと慎重に検討したほうがよさそうです。

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