「争族」という言葉もすっかり定着しました。遺産相続をめぐる親族の争いは、いくら自分が亡くなったあとの話とはいえ、気持ちのいいものではありません。できれば、親族同士の無用な争いが発生しないように前もって準備しておきたいものです。

信託銀行などが遺言に関する手続きを代行

遺産相続は、通常は民法によって定められた法定相続人に遺産が分割される形で行われます。くわしい説明は省きますが、たとえば妻がいて子どもが3人、両親はすでに亡くなっている場合は、法定相続分は「妻が1/2、子どもが1/6ずつ」となります。
もっとも、遺産が現預金だけならいいのですが、不動産などが含まれていると、法定相続分どおりきれいに分割できるとは限りません。その場合は法定相続人同士の話し合いによって、具体的にどの資産をどうやって分割するかを決めるわけですが、そこで「争族」が発生してしまうことはよくある話です。

このような争いを避ける手段が「遺言書」です。本人が生前に遺言書を残していた場合、相続は遺言書に書かれた内容に基づいて行われます。遺言書に「長男に全額を相続する」と書いてあれば、原則としてそれに沿って遺産相続が行われるというわけです。ほかの子どもは不満を抱くかもしれませんが、遺言書が法的に有効であるならば、その内容に従うことになります。

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「遺言信託」とは、遺言書の作成や保管、執行などの手続きをサポートする、信託銀行によるサービスのこと。遺言者が自分の資産の状況を正しく把握するのは難しく、相続しようにも何をどうすればいいのかわからないというケースも多いため、不動産や株式などの財産を扱うプロである信託銀行が代行するというものです。
遺言信託のサービスは1980年代に始まりました。信託協会によると、2017年9月までの10年間で、遺言信託の総件数は倍増したということです。

手数料に見合うかどうかを検討する

遺言信託は、遺産相続にまつわるめんどうな手続きを、銀行が代わりに執り行ってくれるというサービス。当然、それ相応の手数料がかかります。金融機関やサービスの内容によって変わりますが、一般的には100万円以上のお金が必要となるようです。相続する財産の状況によっては、100万円という手数料を高いと感じる方もいるかと思います。

遺言書の作成については、税理士などに協力を仰ぐことができます。その場合は、遺言信託を利用する場合より出費を抑えられますが、財産の管理などについては自分自身で行う必要があります。

遺言信託のメリットが、決して安いとはいえない費用に見合うのかどうかは、サービスの利用を検討するうえで重要なポイントといえます。

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