宮下あきら先生の『魁!! 男塾』(さきがけ!! おとこじゅく)には、マネープランのヒントが満載です。

1985年から6年間、週刊少年ジャンプに連載していた『魁!! 男塾』は、ゴツイ兄ちゃんたちが、戦って、泣いて、戦って、泣いて、最後には友情が芽生えます。この超シンプルなストーリーでTVアニメや実写映画にもなったんだからスゴイ。

戦闘では相手の必殺技に「驚く」シーンがお約束。これに欠かせないのが、民明書房など架空の出版社による架空の書籍を根拠とした説明文です。

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●ゴルフクラブ型のこん棒で鉄球を打ち込む奥義の創始者が「呉 竜府(ご・りゅうふ)」なので、現在このスポーツは「ゴルフ」と呼ばれる

民明書房刊『スポーツ起源異聞』より

●関節を外し、顔を真反対の後ろ側にする技は「李 筴振(り・ばしぶる)」が考案。英語の表裏自在を意味する「リバーシブル」の語源である

太公望書林刊『シルクロードの彼方』より

当時中学生だった私はこの説明文を信じ、近所の書店のオヤジに「民明書房の本はどこですか?」と真顔で聞きました。詳細を説明すると、「漫画ばかり読んでないで勉強しな」と諭され、珍念は大人の階段を一歩のぼりました。

架空の中国人の名前が英語の語源になるはずがないなんて、落ち着いて考えればわかること。しかし、作品に「現実らしさ」を持ち込む宮下先生の巧妙な演出に、ウブな私は「マジかよ!スゲー」と思い込み、走り出してしまったのです。

実は、金融の世界にも運用の初心者が誤解しやすい“演出”があります。代表格が「銀行のキャンペーン金利」。退職金や相続資産を預けたり、投資信託などを購入したりした人には定期預金の金利を上乗せします、というアレです。

<銀行のキャンペーン金利の例>
銀行のキャンペーン金利の例

注意したいのは、パンフレットなどに表示されている年利6%は、最初の3カ月間だけ預金に対して年利6%が適用されるという点です。実際には4分の1の期間に適用されるため、私たちが手にする年利は6%の4分の1=1.5%となります。

銀行がウソを言っているわけではないのです。でも、「年6%」などと大きく書かれていれば、「マジかよ!スゲー」と飛びつくウブな方がいるかもしれません。キャンペーン商品の利用は、窓口やコールセンターで税引き後の受け取り利息や投資信託の購入時の手数料などを確認してから検討したいですね。

『魁!! 男塾』の世界観を鵜呑みにしたおかげで私は成長できましたが、キャンペーン金利の表示を自分に都合よく信じ込むと、その後のガッカリ感はハンパないでしょう。大切なお金です。勢いにまかせて決断せず、一度深呼吸を。

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