離婚件数は1980年の50%増に

突然ですが、インターネット検索エンジンのGoogleで「離婚の準備」と検索すると、約4,320万件の情報がヒットします。音漏れイントロ選手権どうした? 大丈夫か? しばらく記事を書いていなかったのは、そういう事情があったのか……。

ご安心ください。そうではありません。
今回のテーマ「離婚とお金―退職金と年金分割―」のために、離婚について検索しました。

厚生労働省の「平成29年(2017)人口動態統計(確定数)の概況」によると、同年の離婚件数は21万2,262組となり、1980年の14万1,689組と比べ、50%増になっています。一昔前より離婚が増加している現実を踏まえると、その準備について知っておくことは、一般常識になりつつあるのかもしれません。

結論から先にお話ししますと、

◆支給が確実視される退職金は、婚姻期間に応じた部分が財産分与の対象になる
◆夫婦の一方の厚生年金などを分割し、他方の配偶者の年金をサポートする「年金分割制度」がある

ということです。以下、詳しく説明します。

婚姻期間に応じた部分の退職金が財産分与の対象に

退職金について

退職金は、給与と同様に財産分与の対象になります。財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で築き上げた財産を、離婚の際に清算・分配することです。ただ、退職金は、退職後に支払われることが一般的であり、会社の経営状態や退職の理由によっては、支給されない可能性もあります。このため、数十年先に支払われるであろう退職金を、一律に財産分与の対象にすると不都合が生じます。

退職金が財産分与の対象となる場合には、2つのケースがあります。

1つ目は、退職金がすでに支払われているケースです。
この場合は、①実質的な婚姻期間の長さ、②退職金支給にかかる勤続年数と配偶者による退職金形成への貢献割合を基に、財産分与の金額を算定します。退職金の支払いがかなり以前であって、離婚時に相当額がなくなっている場合には、財産分与の対象にならないと判断されるケースも少なくありません。
「定年退職日に離婚を告げられる」という悲しいお知らせは、この点を強く意識していると想像されます。

2つ目は、退職金がまだ支払われていないケースです。
退職金の支給がほぼ確実視される場合でも、全額を財産分与の対象とせず、婚姻期間に応じた部分のみが対象になると考えられています。その際は、勤務先企業の退職金支給規定や支給実態なども考慮されます。若年カップルの離婚では、退職金分割の決定が片方の配偶者にとって不公平となることを避ける観点から、裁判所がその分割を認めないことも少なくないようです。

分割対象となる退職金の算定方法は、判例でいくつかの考え方が示されています。

・別居時に自己都合退職したと仮定し、その場合の退職金相当額から婚姻前の労働分を差し引いた額を対象とする
・定年退職時に受給する予定の退職金から、婚姻前労働分と別居後労働分を差し引き、中間利息を控除して口頭弁論終結時の額を算定する

離婚に拍車をかけてしまうかもしれませんので、詳しく解説いたしません。
ご興味がある方、算定額が知りたい方は、弁護士などの専門家にご相談ください。

厚生年金を分割し他方の配偶者の年金をサポート

年金分割について

年金分割制度は、離婚時や離婚の後に、夫婦の一方の厚生年金を分割し、他方の配偶者の年金をサポートする仕組みです。離婚後の夫婦間の年金額の不公平さを是正する目的で2004年に制定、2007年4月から実施されました。分割の対象となるのは、「厚生年金保険および共済年金」の部分に限られ、基礎年金である「国民年金」や、基礎年金に上乗せする「国民年金基金・厚生年金基金」などの部分は、対象とならないことに留意しましょう。また、支給される年金額自体を分割するのではなく、保険料の算定基礎となる標準報酬を分けるという点も重要です。

年金分割制度には、「合意分割」と「3号分割」があります。
簡単に解説しましょう。

◆合意分割

合意分割では、離婚する夫婦が合意、または裁判手続きにより保険料納付割合の按分割合を決定します。その後、年金事務所に請求することで、婚姻期間に対応する標準報酬額の多い当事者の保険納付記録を、少なかった方の当事者に分割する制度です。

◆3号分割

厚生年金に加入している会社員や公務員(第2号被保険者)などの配偶者で、年収130万円未満の方を「第3号被保険者」と呼びます。3号分割は、2008年4月1日以降の婚姻中に第3号被保険者の期間がある場合に利用できる制度です。「合意分割」とは異なり、当事者間の合意や裁判手続きは不要です。第3号被保険者が年金事務所に請求すれば、当事者に分割されます。

どちらの分割を選んだ方が受け取る年金額が増えるのかは、婚姻の時期などによって異なります。合意分割、3号分割ともに、請求期限が原則、離婚から2年となっているため、制度を活用する場合は十分注意しましょう。

【図表】年金分割の種類

  合意分割 3号分割
離婚日 2007年4月1日以降 2008年4月1日以降
夫婦間の
合意
按分割合(分割することおよび分割割合)について合意が必要。合意ができないときは裁判の分割割合の決定が必要 不要
分割対象
期間
婚姻期間(2007年4月1日以前も含む) 2008年4月1日以降の婚姻期間のうち、第3号被保険者であった期間
分割割合 2分の1を上限 2分の1
請求期限 原則として、離婚日の翌日から2年以内 原則として、離婚日の翌日の2年以内
対象者 第3号被保険者のほか、第1号被保険者、第2号被保険者でも可能 2008年4月1日以降の婚姻期間のうち、第3号被保険者であった期間がある方のみ

離婚は、結婚以上にエネルギーが必要で、しかも、話し合いが長引くケースも少なくないようです。離婚の準備を指南するサイトでは、慰謝料請求の証拠確保よりも、まず、離婚後の生活を安定させるために、貯金や仕事、住居について考えることを、ファーストステップとしているページが多く見受けられます。「お金よりなにより、一刻も早く離婚したい」方は別として、次の生活のためにも、ある種の冷静な準備が必要かもしれません。