マンション開発・分譲事業を主力とする東証スタンダード市場上場のREVOLUTIONは2023年12月に副社長の新藤弘章氏が社長に就任し、経営刷新を進めています。同社は24年10月に不動産のクラウドファンディングなどをグループで手掛けるWeCapital(東京・港、松田悠介社長)を子会社化。「不動産テック」にも乗り出し、24年10月期の売上高は前の期の約2.3倍に当たる約55億円に膨らみ、最終損益も黒字転換を果たしました。株主優待制度を導入するなど相次いで新たな施策を打ち出し、株価も大幅に上昇しています。経済産業省やマッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパンを経てREVOLUTIONの社長に就任した新藤弘章氏に、新たな経営戦略の動向や今後の見通しを聞きました。

新藤弘章さん

株式会社REVOLUTION 代表取締役社長
新藤弘章さん
東京大学工学系研究科修了後、2014年に経済産業省に入省。2019年にハーバード大学大学院に留学。2021年に同大学院修了後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し、多数の企業戦略策定に携わる。2023年9月に株式会社REVOLUTIONに執行役員として入社、副社長を経て、2023年12月に代表取締役社長に就任。

運用対象を東京都心3区に集中。M&Aも事業の柱に

御社は23年末に経営陣を刷新し、株価も上昇しました。経営陣が変わって事業内容がどう変化したのかを教えてください。

新藤 当社の主力事業の1つはマンションなど不動産を買い取り、リノベーションして再販売することです。
不動産の再販については、経営陣の刷新後に戦略を大きく変更しました。買い取る対象の不動産を、従来の山口県を中心とした地方都市から、東京都の中央区・千代田区・港区の3区に変更しました。都心の一等地は中国など海外投資家などからの需要も多く、収益を押し上げています。不動産のリノベーションは、ハイエンドなデザインを得意とする企業に業務委託しています。

新たな経営陣になって、不動産関連企業のM&A(合併・買収)による規模、収益の拡大も事業の柱の1つとなりました。2024年10月にはWeCapitalを買収しました。
グループで不動産クラウドファンディング(投資型)を手掛けるWeCapitalは、会員数を急速に伸ばしています。クラウドファンディングは新たな分野で成長性も高く、当社との相乗効果は大きいと考えています。

新たな戦略が奏功し、24年10月期の売上高は前の期の2倍以上に膨らみ、最終損益も黒字に転換しました。

REVOLUTIONの経営戦略の変化

経産省やコンサルタント時代の経験を生かす

新たな経営陣の企業戦略が成功し、大幅に業績が改善するということですね。「新生REVOLUTION」の強みを教えてください。

新藤 M&A面での強みは、富裕層とのネットワークの強さや企業価値の正確な把握力です。コンサルタント時代のノウハウをいかし、M&Aの対象となる企業の精密なデューデリジェンス(資産査定)や価値の算定をしています。シミュレーションを通じて市場や売上高の拡大の可能性も推定し、有望な買収先を決定しています。

もう1つの強みは、経産省時代に培った法律の知識を株式譲渡契約書の条文に落とし込むことで買収の効果を最大化することです。ターゲット企業の株式を買収したものの、想定通りに業績が上昇しなかった場合、買収対価を売り手に返還させる「逆アーンアウト条項」を盛り込むなどして、買収リスクも抑えています。M&A仲介会社を使わずに企業買収できるため、多額の手数料を支払う必要もありません。

不動産事業では大企業も含めて多くのライバル企業がいます。御社にはどんな優位性があるのでしょうか。

新藤 当社は経営陣の決済プロセスが迅速で、資金調達や不動産の買い取りまでの時間が1か月程度と速いのが特徴です。
一方、他社では大企業になればなるほど、社内で多くの稟議を通さなければならず、決済までに3か月程度かかることが多いのが現状です。このため、迅速に物件を売買したい企業や個人のニーズに応えきれていないケースも少なくありません。

不動産の購入のための銀行融資が迅速に受けられるのはなぜですか。

新藤 当社は地方銀行や信用組合、信用金庫に強い信頼関係を構築しており、通常より迅速に融資を決めてもらえます。
背景には、当社には多くの不動産のプロが目利きをしており、良い物件を安く購入できる体制になっていることがあります。経営陣を刷新し、新たな経営戦略をきちんと説明していることも信頼につながっています。当社が手掛ける東京都心の一等地の不動産売買には、金融機関が資金を出しやすい面もあります。

迅速な決済が強みということですが、不動産売買の決済のスピードを重視する人は多くいるのでしょうか。

新藤 例えば、「他の投資案件に投資をしたいので、保有物件を売却して利益を確定したい」という投資家は一定数います。一方で予想以上の株式相場の急落が発生した場合、追い証(信用取引の追加証拠金)を支払わなければならなくなった投資家もいます。
こうした迅速な不動産売買のニーズはニッチな分野で、対応できる会社は多くありません。

WeCapitalの子会社化で資金調達の幅が広がる

地方の物件から東京都心の3区に集中して物件を売買する戦略に変更した理由を教えてください。

新藤 東京都心の不動産市況が上昇しており、人口減で価格が低迷している地方の物件に比べて多くの収益を得られるチャンスがあるためです。円安を受けて中国の富裕層をはじめとした海外投資家の購入意欲も旺盛です。少なくとも今後数年は購入した不動産のバリューアップが可能です。
このため、当社は恵比寿や六本木などのマンションや土地などを幅広く購入して、必要に応じてリノベーションし、再販売しています。

REVOLUTIONは24年10月11日付で、WeCapitalを正式に子会社化しました。これにより、どんな相乗効果があると考えていますか。

新藤 銀行融資だけでは足りないような大規模な資金が必要な案件でも、クラウドファンディングを通じて資金を調達できるようになりました。

また、REVOLUTIONの専門知識を活用して不動産クラウドファンディングの対象物件の正確な目利きや出口戦略の策定に貢献できます。クラウドファンディング案件のデフォルト(債務不履行)リスクを抑制できるうえ、物件の購入スピードの迅速化にもつながります。

のれん代償却で赤字の見通しも、収益力に自信

24年10月23日の取引終了後、25年4月末時点の株主から株主優待制度を新設すると発表しました。今回の施策の目的と今後の株主還元の考え方について教えて下さい。

新藤 目的は業績が改善し、利益の一部を株主に還元することです。経営陣を刷新し、個人も含めて株主を重視する姿勢を示す意味もあります。当社は今後も収益を拡大させ、今後も引き続き利益を株主に還元していきたいと考えています。今後は配当を出すことも検討していきます。

24年12月20日に発表した決算では、25年10月期の売上高見通しは前の期の9倍以上に当たる514億円超でした。これは上場企業の増収見通しの中でもトップクラスの増益率です。一方で最終損益は9億円超の赤字になる見通しです。

新藤 WeCapitalの買収や不動産事業の拡大などにより、売上高は大幅に増加する見通しです。一方でM&Aの積極化で「のれん代」の償却費用を15億円計上するため、最終損益は赤字になる見通しです。のれん償却費控除前の営業損益は黒字を確保しており、本業の収益力は引き続き健全です。
例えば、WeCapital社単体では今期(WeCapital社の決算期は2025年9月期)の営業利益は約12億3000万円となる見通しで、引き続き堅調な成長が期待されます。

日本の会計基準では企業を買収する際、買収額が純資産額を上回る分を「のれん代」として計上する必要があります。国際会計基準(IFRS)など海外の会計基準では「のれん代」の定期償却の義務はありません。このため、当社でも27年10月期からIFRS適用を目指しています。また、26年10月には並行開示としてのれん代の償却がない状態でのIFRSの決算書を開示できる見込みです。

不動産取引・不動産投資で信頼できる企業の見極め方

不動産取引をしたい人、あるいは不動産クラウドファンディングなどを通じて投資を検討している人が、信頼できる企業を見極めるポイントは何でしょうか。

新藤 まずは会社が信頼できるのかどうかを見極めることが重要です。
基準の1つは、証券取引所に上場しているかどうかです。上場企業の場合は厳しい基準があり、違法行為があれば上場廃止になることもあります。

保有物件の立地も重要です。東京の一等地の物件は相場が安定しており、今後の上昇も期待できます。立地が良くない場合は値段が安くても需要がなく、投資に失敗しやすくなると思います。