700人以上所属する日本放送作家協会(放作協)がお送りする豪華リレーエッセイ。テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家、そして彼らと関わる様々な業界人たち・・・と書き手のバトンは次々に連なっていきます。ヒット番組やバズるコンテツを産み出すのは、売れっ子から業界の裏を知り尽くす重鎮、そして目覚ましい活躍をみせる若手まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜くユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず!
連載第203回は、ネットでラジオドラマ活動中の青木ドナさん。青木さんが愛犬にかけた愛情とおカネのお話とは……?

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たしなみはラジオドラマ

青木ドナさんの写真
青木ドナ
脚本家
放送作家協会会員

2022年に日本放送作家協会九州支部主催の南のシナリオ大賞をいただき、拙作を初めてラジオドラマにしていただきました。
感激でした!
あのシナリオがこんな声のドラマになるなんて……。

で、ハマりました。
放送作家協会の末席に忍び込ませていただいておりますが、その手のお仕事とのご縁はないまま、自分のラジオドラマを手探りで作ってみてはYouTube「青木ドナ ラジオドラマの部屋」に公開し、恥をかきながら楽しんでいます。

2024年は「いばらき推し」の5作のラジオドラマを県内有志の出演で制作しました。
ネット社会の人生百年時代、おばさんがある日突然こんな活動にハマるのもアリ、なのではないでしょうか。

さて、お金のお話ですが、いまどきの若い世代はしっかりもので限られたお金をどう使うかよく考え、「タイパ」という言葉もお好きなようです。
冷静に節約につとめる反面、自分の好きなこと「推し活」などにはガツンとお金をかける。
上手に緩急効かせてお金を使っている。
お金で磨き上げた推しペットとのキラキラ生活をSNSで発信する若いかたも目にします。
昭和世代にとっては、最初ワンコに「洋服?」抵抗感もありました。

ペット推し、されど

しかし、20数年前わたしもあちらの沼に……。
黒のトイ・プードル女子
と暮らし始めたのです。
当時、畑や田んぼがメインの地方の小さな街をお散歩する犬は茶系ミックスがメジャー、そこに小黒一点! センセーショナル・デビューです。
可愛い、可愛い!と、お散歩注目度「メッチャやばい」でした。

トラリピインタビュー

服を着たトイプードルの写真ワンコも老いると寒がりになります。犬に服を着せる日が来るとは…
※写真:筆者提供

でも、わたしはプードル界の常識を知りませんでした。
プードルの毛は伸び続け、可愛さを保つには美容院に通わせる必要があるなんて。そのシャンプー&カット代7000円もかかる。
「トリミング・サロン」で支払いをするたび、深く嘆息したものです。

そこで一念発起、安いバリカンを購入しお家サロンの暴挙にでました。
緊張で目の吊り上がった飼い主が武器を片手ににじり寄る、ただならぬ気配に逃げ、震えるワンコをとりおさえ、必死に刈り込みます。
時間はかかりましたが、戦いはやがて終わるもの。アフターは「シャープなミニ黒羊」程度の見映えで悪くない。

浮いた7000円で何を買おう」などと妄想しつつワンコとお散歩に出ると、早速、道行く品の良い初老男性に我がワンコ、注目を浴びました。
その男性はじっとワンコを見つめ、そしてこちらへにこやかに歩み寄っても来たのです。また、「可愛い!」とお褒めにあずかれるのかもしれない? 
わたしもにこやかに彼を待ちます。
その男性は首をかたむけて、まじまじとうちのワンコを見て、ひとこと。

その犬は……、なんという犬種ですか?

黒プードルの写真彼女には16年4カ月お世話になりました(筆者提供)

……翌月からは素直にプロの手に委ねました。
でも、彼女(ワンコ)との暮らしは実に楽しく、そして、わたしは抗いつつも推し活沼にハマり、ワンコに分不相応なお金をかけることを痛みだと感じなくなりました。
言い訳ですが、楽しかった無駄や失敗は、許容、内包し時間を経ると後悔とともに分解され、ゆたかに生きる旨みに変わる。いまの実感です。

「タイパ」ではないことにお金を費やし、不安を感じる若い方にはささやいてあげたい。失敗しても、無駄に見えても、時間効率悪くても、楽しいと思えるなら大丈夫、いつか利子がついて戻ってくるかも、と。

いつなのか? それがわかったら面白くないんですよ、フフフ。

次回は原哲子さんへ、バトンタッチ!

ぜひご覧ください!
Youtubeチャンネル

青木ドナ ラジオドラマの部屋

冷や汗と恥をかきつつ活動中
よろしければ、お訪ねくださいませ

一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。