全世界的には人口はどんどん増えており、将来的にあらゆる資源が不足する可能性があります。人口が増えるほど枯渇が懸念される資源のひとつが「水」でしょう。水は飲料水だけでなく、農業や工業などさまざまな用途で必要です。しかし、危機があるところには、ビジネスチャンスがあるもの。今回は、世界中で今後より重要となってくる水に投資をする投資信託について解説します。
- 「水不足」は全人類の課題。水は経済活動のために欠かせない資源
- 現時点では、水問題に特化した投資信託が3種類、計5本運用されている
「水不足」は発展途上国だけでなく、全人類の課題
日本で暮らしていると、水が不足して生活ができなくなることや、水が原因で命を落とすことはあまり考えられないかもしれません。しかし、アフリカなどの発展途上国では、安全な水を確保することが非常に困難な地域も多くあります。
水は人類が生きていくために必要不可欠な資源であり、国防の観点からも安全な水の確保が重要視されています。今後、世界的に水不足が発生した場合、世界中で水資源の取り合いが発生する可能性が示唆されている状況です。
水不足の解消は経済活動の活性化や食料の安定供給に欠かせません。上下水道が整備されていない地域では、水汲みという労働が発生し子どもが十分な教育を受けられなかったり、女性の社会進出が困難になったりする弊害があります。
また、農業用の水が十分に供給されない場合には、食料を安定的に供給できません。水はすべての経済活動を活性化させるために欠かせない資源なのです。
「水」をテーマとする投資信託
現在、日本には水問題に特化した投資信託が3種類、計5本存在します。SDGsや環境問題全般を対象とする投資信託に比べると、まだ投資信託の数は少なく純資産も少なめですが、これから注目が高まっていくテーマかもしれません。
水関連の投資信託について以下の表にまとめました。
投資信託名 | 純資産総額 | 1年 リターン |
3年 リターン |
信託報酬 (年率・税込み) |
設定日 | 運用会社 |
---|---|---|---|---|---|---|
三菱UFJ グローバル・エコ・ ウォーター・ファンド (愛称:ブルーゴールド) |
37.6億円 | 16.1% | 38.8% | 実質 1.8%程度 |
2007/7/27 | 三菱UFJ国際投信 |
ワールド・ウォーター・ ファンド Aコース |
35.7億円 | 12.2% | 42.5% | 1.87% | 2004/3/26 | 野村アセット マネジメント |
ワールド・ウォーター・ ファンド Bコース |
105.1億円 | 20.1% | 51.0% | 1.87% | 2004/3/26 | 野村アセット マネジメント |
野村アクア投資 Aコース |
11.9億円 | 11.2% | 52.8% | 1.76% | 2007/8/29 | 野村アセット マネジメント |
野村アクア投資 Bコース |
89.5億円 | 18.2% | 61.3% | 1.76% | 2007/8/29 | 野村アセット マネジメント |
※データは2022年2月28日時点、以下同様
三菱UFJ グローバル・エコ・ウォーター・ファンド(愛称:ブルーゴールド)
『三菱UFJグローバル・エコ・ウォーターファンド(愛称:ブルーゴールド)』は、三菱UFJ国際投信が運用する投資信託です。2022年2月末時点で、2007年7月の設定来の累積リターンは+90.7%となっています。
『ブルーゴールド』が投資対象としている企業はアメリカやイギリス、フランスなど欧米の国が多く、通貨も米ドル・英ポンド・ユーロなど適度に分散されている印象です。組み入れ銘柄の業種別比率は、水関連装置が35.8%、公益事業が31.1%、水処理技術が20.9%などとなっており、水に関するさまざまな分野へ投資をしています。為替ヘッジを行わないため、為替変動の影響を受けやすいことには注意が必要です。
取り扱い金融機関は三菱UFJ国際投信のグループである三菱UFJ銀行やネット証券大手のSBI証券、楽天証券など。今回紹介する中では、最も取り扱い金融機関が多い投資信託です。
ワールド・ウォーター・ファンド
『ワールド・ウォーター・ファンド』は、野村アセットマネジメントが運用する、2004年3月設定の比較的古いファンドです。為替ヘッジを行うAコースの2022年2月末時点での累積リターンは+334.3%、為替ヘッジを行わないBコースは449.5%と、確実に実績を上げているファンドだといえるでしょう。
投資対象は欧米を中心とした水関連の企業ですが、米国株式および米ドルの比率が先ほどの『ブルーゴールド』より高くなっています。業種では装置製造・エンジニアリング関連に58.6%、上下水道関連に25.8%投資しており、安全な水の供給に寄与する企業に投資をしています。
現在『ワールド・ウォーター・ファンド』を取り扱っている金融機関は、野村證券のみです。Aコースは為替ヘッジを行うコースですが、為替ヘッジを行わないBコースの方が純資産を多く集めています。現時点での累積リターンもBコースの方が高くなっていますが、今後、為替の影響をできるだけ受けずに水関連の企業に投資をしたいという方は、Aコースを選択するとよいでしょう。
野村アクア投資
『野村アクア投資』は、『ワールド・ウォーター・ファンド』と同じく野村アセットマネジメントが運営するファンドで、設定は2007年8月29日です。
為替ヘッジを行わないBコースの2022年2月時点での設定来累積リターンは+139.1%で、近い時期に設定された『ブルーゴールド』を大きく上回っています。直近3年のリターンも61.3%と、同じ期間で51.0%の運用益を出している『ワールド・ウォーター・ファンド Bコース』より高くなっています。
直近では水質分析を行う企業が主な投資対象で、ファンド全体の36.5%と多くの資金を投じています。他にも建設・エンジニアリング企業に34.3%、水処理企業に16.1%、施設運営企業に11.1%など、水関連のさまざまな企業にバランスよく投資を行っています。
『野村アクア投資』も現時点では野村證券専用の投資信託で、Aコースが為替ヘッジあり、Bコースが為替ヘッジなしです。