アメリカにはニューヨーク証券取引所とナスダック(NASDAQ)という2つの大きな証券取引所があり、ほとんどの上場企業がどちらかの市場に上場しています。普段は市場を意識する必要はありませんが、米国株取引に本格的に取り組む人は知っておきたい知識でもあります。2つの違いについて概要を簡単にまとめたので、ぜひ目を通してみてください。

世界最大の証券取引所「ニューヨーク証券取引所」

ニューヨーク証券取引所は、世界金融の中心「ウォール街」にある世界最大の証券取引所です。その期限は18世紀末までさかのぼり、ウォール街にある大きな木の下で証券取引が自然発生的に行われたことが起源とされています。

ニューヨーク証券取引所にはコカ・コーラやウォルト・ディズニー、あるいは日本のトヨタ自動車など、誰もが聞いたことがあるようなグローバル大企業が多数上場しています。ニューヨーク証券取引所は世界的に見ても歴史と伝統のある証券取引市場だといえます。

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新興企業向けの株式市場として設立したナスダック

アメリカの主要な証券取引所にはニューヨーク証券取引所ともうひとつ、ナスダック(NASDAQ)があります。ナスダックの創立時期は1971年で、この頃はアメリカ経済の中心が従来の重厚長大産業からIT・テクノロジー系の企業に移り始めた時期です。

こうした時代背景からナスダックは新興企業向けの市場として生まれ、現在ではアップル、アマゾン、マイクロソフト、グーグル(アルファベット)といった名だたるIT企業がナスダックに上場しています。

ナスダック
今をときめく米国のIT企業の多くがナスダックに上場している
Mauryce Caesar / Shutterstock.com

ニューヨーク証券取引所とナスダックの比較表

ニューヨーク証券取引所とナスダックの違いをわかりやすくまとめました。取引時間や規模はほぼ同じですが、市場成立のバックグラウンドの違いや取引の方式など、細部は微妙に異なることが分かると思います。

【図表1】ニューヨーク証券取引所とナスダックの比較(2021年5月時点)
  ニューヨーク証券取引所 ナスダック
特徴 世界最大の株式市場。上場審査が厳しく、一流企業が集まる 新興企業向けでは世界最大の市場。有名IT企業が多数上場
取引時間 9:30-16:00
(現地時間、昼休憩なし)
9:30-16:00
(現地時間、昼休憩なし)
上場企業数 約1900社 約3300社
時価総額 約2700兆円 約2300兆円
取引形式 オークション方式 マーケットメイク方式

米国株の時価総額トップ10のほとんどがナスダック

世界に名だたる一流企業が集まる米国市場ですが、時価総額上位の銘柄は、ニューヨーク証券取引所とナスダックのどちらに上場しているのでしょうか。

2021年9月22日時点での時価総額トップ10銘柄は、以下のようになっています。

【図表2】米国株式の時価総額上位銘柄(2021年9月22日時点)
  社名 市場
1 アップル ナスダック
2 マイクロソフト ナスダック
3 アマゾン・ドット・コム ナスダック
4 アルファベット(議決権なし) ナスダック
5 フェイスブック ナスダック
6 アルファベット(議決権あり) ナスダック
7 テスラ ナスダック
8 台湾セミコンダクター・
マニュファクチャリング
ニューヨーク
証券取引所
9 エヌビディア ナスダック
10 JPモルガン・チェース・
アンド・カンパニー
ニューヨーク
証券取引所

意外とナスダック上場の企業が多いと感じるのではないでしょうか。「GAFA」に代表されるIT系企業の躍進は著しく、時価総額トップ10はナスダック銘柄が目立つ結果となりました。

アメリカの2市場の境界はあいまいに

かつてのアメリカでは、大企業を中心とした「オールドエコノミー」はニューヨーク証券取引所、新興企業などの「ニューエコノミー」はナスダックという棲み分けがされていました。しかし、現在はその違いを意識する企業や投資家も少なくなっています。

日本では新興企業向けのマザーズやジャスダックから東証2部・1部に指定替えすることは頻繁にありますが、アメリカで上場先を変更することは多くありません。現在のアメリカ時価総額上位企業の多くがナスダックで占められているのは、ナスダックに上場した新興企業が成長してもナスダックにとどまっていることが理由です。

日本の投資家の皆さんにとっては、両市場の違いを意識する必要は特にないといって差し支えないでしょう。

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