数十年の長期にわたる住宅ローンを返済している最中、まとまった資金が得られたとしたら、あなたはどうしますか? 少しでも早くローンを返済したほうが良いのか、投資に振り向けたほうが良いのか、その答えはタイミングによって異なります。判断する際に注意したいポイントをまとめました。繰り上げ返済するか迷っている人はぜひ参考にしてください。

  • 住宅ローン減税期間中は、基本的には制度を最大限活用したい
  • 余裕資金を投資に回し、金利負担以上の運用益が得られれば繰り上げ返済よりも有利
  • 繰り上げ返済すれば「安心」を得られる。一部は返済、残りは投資も一つの手

住宅ローンの返済中にまとまった資金を得られたら

住宅ローンの返済期間中、資金に余裕ができることもあるでしょう。そのようなとき、住宅ローンの繰り上げ返済をするか、長期投資へ回すかどちらが適切なのでしょうか。

専門家の中には、住宅ローンは余裕があれば積極的に繰り上げ返済したほうが良いという人もいます。しかし、住宅ローン金利が極端に低くなった昨今では、金利負担が必ずしも返済の大きな負担になっているとはいえません。

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住宅ローンには「住宅ローン減税」という税制も関係するため、単純に金利負担と運用成果を比較すると正確な判断ができません。住宅ローン減税期間中と減税期間が終わった後、それぞれで得をする判断基準について考えてみましょう。

住宅ローン減税期間中は繰り上げ返済しないほうがいい?

住宅ローン減税は厳しい景気情勢のなかでも、マイホームを持とうとする個人の住宅取得を支援するための税制です。毎年の住宅ローン残高の1%が10年間所得税から控除され、さまざまな減税制度でも、特に控除額が大きくなりやすいものとして知られています。

例えば、住宅ローンの年末残高が4000万円だとすれば40万円が税額控除となり、確定申告や年末調整で手元に戻ってくるため、節税効果の大きさが分かるでしょう。

なお、「令和4年度税制改正大綱」では、住宅ローン減税の控除率を現行の1%から0.7%に引き下げることが盛り込まれ、優遇幅が縮小される見込みです。

住宅ローン減税期間中は制度を最大限活用しよう

現状では、住宅ローン減税期間中は毎年1%税額控除を受けることができ、実質的な金利負担が大幅に軽減された状態といえます。

この期間中に繰り上げ返済を検討するなら「残りの住宅ローン控除期間から算出した合計控除額」と「繰り上げ返済によって得られる総支払利息の減少額」を計算してみて、メリットの大きいほうを選ぶとよいでしょう。

住宅ローン減税適用期間が終われば繰り上げ返済すべき?

住宅ローンは毎月の収入から返済していくことが一般的なため、退職年齢を迎える65歳までに完済することが基本です。現在の返済計画で返済終了するのが66歳以降になっている場合は、繰り上げ返済で期間短縮しておくと安心かもしれません。

その一方で、住宅ローンの金利は歴史的な最低水準となっています。つみたてNISAなどの個人投資から得られる運用益を、住宅ローンで支払う利息よりも大きくすることは難しくありません。余裕資金は投資に回し、運用して金利負担以上に増やすことができれば繰り上げ返済よりも有利です。

つみたてNISAの運用では、20年の積立投資を続けると一般的に2~8%の利益が期待できるといわれています。もちろん投資に元本保証はありませんので、2%に至らないどころか元本割れする可能性もあります。しかし「2%程度の利益は確保できる」と考えるのであれば、繰り上げ返済ではなく投資に回したほうがお得だといえるでしょう。

繰り上げ返済をすれば手元資金がなくなってしまう

繰り上げ返済をすれば金利負担は減らせますが、将来的に収入が減ったり、大きく支出が増えたりする事態に備えて、手元にお金を残しておくことも大切です。一般NISAやつみたてNISAであればいつでも解約が可能なため、いざというときの資産としても活用できます。


資金を分けて一部を手元に残しておくことも大切

とはいえ、繰り上げ返済をすれば「安心」という大きなメリットが得られるのも事実です。住宅ローン返済と投資に、余裕資金をどれくらいの割合で振り分けるかは、結局のところ本人次第でしょう。投資は元本が保証されたものではありませんので、一部は住宅ローン返済、残りは投資という風に柔軟に考えるのも一案です。

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