日本株と米国株が連動しやすいことは、何となく常識として認識している方も多いのではないでしょうか。この記事では、なぜ日本株と米国株が連動しやすいかについてわかりやすく解説します。ただし、日米の株価はつねに連動するわけではありません。後半では株価が連動しなくなる状況についても説明していますので、ぜひ参考にしてください。

  • 米国株が成長すると、日本株も米国人投資家に買われやすくなる傾向
  • 逆に米国株が低迷すれば、損失を穴埋めするため日本株は売られやすくなる
  • 株価は個別の要因で動くため、短期的には日米の株価の値動きが異なることもある

「アメリカがくしゃみをすると日本は風邪をひく」

「アメリカがくしゃみをすると日本は風邪をひく」。この言葉は以前から証券業界で使われてきた慣用句のようなもので、広義には日本経済が米国経済の影響を強く受けやすいことを意味します。言い換えれば、米国株と日本株の価格は連動的に動く傾向があるという意味です。

特に近年は、米国株と日本株が同じような動きをすることが多くなっています。TOPIXとS&P500、もしくは日経平均とNYダウの過去の動きを並べて見てみると連動して値動きしていることが読み取れます(図表1)。これには日本と米国の間の経済的な結びつきの強さや、投資家の投資行動が原因だといわれていますが、具体的にその理由を考えたことのある人は案外少ないかもしれません。

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米国株と日本株はなぜ連動して値動きするのでしょうか? ここからはその理由を探ってみたいと思います。

【図表1】連動しやすい日米の株価指数
2019年1月以降のTOPIXとS&P500の推移
※期間は2019年1月4日~2021年10月26日

なぜ、日米の株価は連動しやすいのか?

日本株の価格変動を考えるときに欠かせないのが、「株式を実際に売買しているのが誰か」という観点です。日本で暮らしていると、日本株は主に日本の個人投資家や年金基金などの機関投資家だけが売買しているような感覚になるかもしれません。しかし、実際に日本株の売買をしているのは6~7割が外国人投資家というデータもあり、日本株の値動きは日本人の関与しないところで変動している可能性も大きいのです。

特にポイントとなるのが、日本株を売買する外国人投資家のなかで、米国人投資家の割合が多いことです。米国人投資家のなかには、日本株の価格変動を見ながらコンスタントに売買するタイプの投資家もいますが、大半の米国人投資家は、米国株に投資したあとの余剰資金を日本株に振る形で投資を行っているようです。

そのため、米国株の調子がいいときにはさらなる利益を求めて、日本市場も含めたさまざまな市場でリスクを取った株取引を行います。米国株が成長しているときはリスクを取りやすいため、日本株も買われやすくなるというわけです。

これとは逆に米国株が低迷している場合は、米国人投資家は損失を穴埋めする必要に迫られます。米国での資産を守るために、海外で保有している株式などのリスク資産をいったん手放すという動きが起きやすくなるのです。こうした場合、日本株はいったん売られ、米国へ資産が還流する流れになります。

もちろん、日本経済と米国経済との結びつきが強いことも株価が連動する理由の一因です。しかし、株価の変動に対する投資家の行動原理が大きな影響をもたらしていることも、株価が連動する理由のひとつであることを認識しておくべきでしょう。

日本とアメリカで株価が異なる動きをすることもある

日本株と米国株は連動した動きを見せる傾向があることは確かですが、短期的には日米の株価が異なる動きを見せることも珍しくはありません。株価は基本的に個別の要因に従って値動きします。例えば、日本政府の経済政策に期待が高まれば株価は上昇しますし、経済界に悪影響を及ぼすニュースがあれば日本株だけが下落することもよくある話です。

最近ではアメリカの株価指数が史上最高値を更新し続けていたものの、日本株は上がりきれず、しばらく停滞していたことも記憶に新しいのではないでしょうか(図表2)。今後も、投資家の動きや世界的な経済のトレンドと関係ないところで、日本だけ、もしくは米国だけに影響を与えるようなトレンドがあれば注意が必要です。

【図表2】やや異なる値動きを見せた2021年の日米の株価
2021年1月以降のTOPIXとS&P500の推移
※期間は2021年1月4日~10月26日

場合によっては、日米で株価が逆の動きをすることも十分ありえますので、「日本株と米国株は連動する」と思い込みすぎないことが大切です。特に金融市場で大きな事件が起きたときには、柔軟な対応が求められるでしょう。

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