ジェットコースターのようなガソリン価格の動き

2018年11月下旬に、原油価格が大きく下落したことが伝えられました。
言うまでもなく、原油はガソリンなどの石油燃料の原材料です。原油価格が下がるということは、ガソリン価格が下がりやすくなることを意味します。実際にガソリン価格は一時期より値下がりしています。

通勤や仕事で自動車を利用している方にとって、ガソリン価格が高いか安いかは重大な問題です。2000年代初頭にはレギュラーガソリンの1リットル当たりの価格が100円を切る頃もありましたが、2008年には180円台まで値上がりしました。当時は満タンまで給油すると車体が重くなって燃費が悪くなるからと、あえて満タンにせず、1回の給油量を10リットルにとどめるなど、こまめに給油して節約する人もいました。

【図表1】レギュラーガソリンの現金価格の推移
(全国平均。2013年1月~2018年11月26日)
【図表1】レギュラーガソリンの現金価格の推移
出所:資源エネルギー庁「石油製品価格調査」

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こうして振り返ると、ガソリン価格はかなり大幅な値上がりと値下がりを繰り返していることがわかります。2008年から2009年にかけてはリーマン・ショックの影響でガソリン価格も100円近くまで急落しましたが、そこから再び170円前後まで上がり、また110円まで下がるという、ジェットコースターさながらの値動きです。

ガソリンの販売価格より値動きが大きい原油価格

ガソリン価格が動く最大の要因は、原材料である原油価格の変動です。
金融業界で重視されるのは、「WTI原油価格」と呼ばれる指標です。原油の産地といえば中東諸国を思い浮かべる方が多いと思いますが、この「WTI原油」は米国で産出される原油のことです。意外かも知れませんが、米国は中東諸国と並ぶ産油国なのです。
2008年以降のWTI原油の値動きは、以下のようになっています(以下のグラフが示すのは正確には先物価格ですが、実際の原油価格とほぼ同じと考えて差し支えありません)。

【図表2】WTI原油先物価格の推移(2008年1月~2018年11月26日、週次)
【図表2】WTI原油先物価格の推移
出所:信頼できるデータをもとにMonJa作成

上記の期間における原油価格の高値は147ドル台、安値は26ドル台で、5倍を超える開きがあります。
日本のガソリン価格と比べると、はるかに値動きが大きいことがわかります。

【図表3】日本のガソリン価格(ガソリン税を除く)とWTI原油先物価格の比較
(2013年1月~2018年11月26日、週次)
【図表3】日本のガソリン価格(ガソリン税を除く)とWTI原油先物価格の比較
※2013年1月第1週を100として指数化
出所:信頼できるデータをもとにMonJa作成

ガソリン価格からガソリン税(53.8円)を除いた価格と、WTI原油価格を比較してみると、値動きの方向は同じですが、WTI原油価格の方が大きく動いていることがわかります。ガソリン価格は原材料費である原油価格に、流通や販売の過程で経費が上乗せされているはずで、経費は原油価格によらずほぼ一定と考えられるので、当然といえば当然なのですが。

原油価格の変動は生活のいたるところに影響を与える

原油価格によって変動するのはガソリン代だけではありません。石油を使うすべての産業が大きな影響を受けます。
すぐに思い浮かぶのは火力発電です。もっとも、現在は火力発電における石油の割合は昔に比べてかなり小さくなっています。エネルギー庁によると、1970年代には日本の全発電量における半分以上を石油が占めていたのが、2016年には全体の9.3%、火力発電の中でも1割強にすぎないので、原油価格が電気代に与える影響はかなり小さくなっています。

このほか、原油価格の変動による直接の影響を受けるのがプラスチックや化学繊維などの石油製品です。さらに原油は化学肥料や農薬の原料でもあるため、食料品の価格にも影響が及びます。
つまり早い話が、「原油が高くなると日用品の物価が高くなる」ということです。

したがって、日本のように原油を輸入する国にとって、原油価格は安ければ安いほどモノが安くなるからありがたいと考えてしまいますが、ことはそれほど単純ではありません。原油価格が下落すると産油国の収入が減り、その規模によっては世界的な経済活動の停滞を招いてしまう可能性があるため、原油が安すぎることも問題をはらんでいるのです。

原油価格が激しく変動する原因や、価格変動が世界経済に及ぼす影響については、また別の機会に考察しようと思います。

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