宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回のテーマは、「1億円を貯める方法」という雑誌の見出しを見た人からの相談。甘い話にだまされないことも大切ですが、将来のためにお金を貯めるには、一歩踏み出してみることも必要です。

  • 1億円は貯められなくても、お金の価値観を変えることで「経済的自由」を目指せる
  • 資産形成の一歩を踏み出す方法のひとつは、積立投資による「ほったらかし投資」
  • 公的年金に頼る古い価値観から、資産を自分で作るという新しい価値観に切り替える

株式・投資信託から先物取引まで経験してわかったこと

【質問】
最近のマネー雑誌の表紙に、「1億円を貯める方法」などを見かけます。私は、お金は堅実に貯めるのが一番だと教わっているんで、信じないようにしているっちゃけど、やっぱり質素、堅実、真面目が一番ですよね? だまされたくありませんから。

マネー雑誌ですか~。直近でも掲載されている雑誌がありましたね。日経平均株価が最高値更新に近づくというタイミングの良さもありますが、雑誌は多くの読者に見てもらえるように、「1億円を貯める方法」といった言葉でインパクトを与えて、読者の気持ちを揺さぶっていますね。

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30数年前の私も、そんな言葉に揺さぶられた一人でした。一攫千金を夢見て、浅はかな気持ちで目先の結果を欲して投資したら、損をしてしまいました。

株式、投資信託、先物取引、少額匿名組合出資など、ほぼ一通りの運用を経験したのがこの時期です。短期売買で中国株の利ざやを追い求め、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)が始まれば運用を始めるなどして運用の世界にのめり込んでしまいました。得をしたり損をしたりで、がむしゃらに楽しかったのを覚えています(笑)。その中で、甘い言葉に誘導されて始めてしまった先物取引と、破綻した匿名組合契約は大損という苦い結果となり、眠れない夜もありました。いまだに腹立たしい思いがあります。

投資で失敗
若い頃の投資では失敗してしまったことも。そんな苦い経験から学んだことも多い

私は、投資について「何が危険で、何が安心か」は経験で学ぶことができました。この時期があったから語ることができると思うのですが、「1億円を貯める方法」は難しいです。あまり多くない成功者(お金を稼ぐのが成功者というわけではないのですが)の成功談は、普通の人が参考にするのは難しいものです。しかし、億という数字に惑わされず、お金の価値観を変えることができれば、「1億円」に近づく、すなわち経済的自由を手にすることはできます。

経済的自由とは何か、お金の価値観がどうなのかは、個人個人で違います。資産形成に挑戦して損をするのが怖い、だから私には無理だとか、否定的な思考をする人もいます。経済的自由に近づくには、なぜ投資が怖いのか?を考えて、その理由を取り除いていくしかありません。私は、事実に基づいて「無理だ」を取り除き、失敗があれば「なぜか?」を検証して、否定的な思いをずらしながら前進していきました。

相談者が言うように、お金を貯めるには「堅実が一番」なのでしょうか? そんなことも考えながら、今回からは「自分流の経済的自由」を手にする方法について、数回に分けて考察していきたいと思います。

新しい価値観に切り替えて、投資を少しずつ進めていく

私は連載の最初に「趣味で使うお金の一部を投資に回せば損という感覚は薄まる」「普段はほったらかして、必要なときはすぐ換金できるNISA」と言いましたが、これらの話は主に初めて運用に携わる方に向けたものであり、「経済的自由」のための資産形成は、そのさらに一歩踏み込んだ方向にあります。

資産形成に一歩踏み込む際に、「もうすでにやってみたけど、ダメでした」「妻に、そんなのお金持ちのやること、絶対ダメと言われる」「自分には能力がない」と否定的になりがちです。この否定的感情を、肯定的感情にチェンジできればと考えてみましょう。そのために「ほったらかし投資」は必要不可欠です。欲を出したらいけません。

普段はほったらかして、必要なときはすぐ換金できるつみたてNISA

資産形成は、少しずつ進めていけば感情をコントロールしやすくなります。合わせて、自分の持っている古い価値観を新たな価値に訂正していくことが大切です。古い価値観とは、たとえば以下のようなものです。

古い価値観
①勤勉で、安定な職さえあればいい。
②社会保障と年金があれば老後も安泰だ。
③お金持ちだけが株などに投資している。

これを、次のような新しい価値観に切り替えるべきだと思います。

新しい価値観
①勤勉でありながら金融リテラシーも必要である。
②社会保障と年金を当てにしてはいけない。
③収入に安定はない。お金持ちでなくても資産は自分で作る。

そして、「なぜ、国はiDeCo、NISAと、国民にリスクを取らせようとしているのか?」「少子化が進んで、高齢者が増えればどうなるのか?」など、「なぜか?」を考え、わからなければ調べてみるのです。

生きていくプランを立てるのに年齢は関係ありません。常に若い感覚で、変更可能な価値観を持っておきたいというのが私の意見です。そのためには「自分のためにお金を使う」、すなわちお金の使い方を実践しながら学習することで、現状と向き合えるようになります。相談者の「質素、堅実、真面目」も大事ですが、それだけでは何も変わりません。何事も、一歩前進することが大切です。だまされないように、学習しましょう。

次回も、経済的自由を手にする資産形成の方法を考えていきます。

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