通勤や買い物など日常の移動や、デリバリーサービス業の勤務など、自転車を利用する機会が増えた人も多いでしょう。体力次第で県を超えるような移動も可能になる便利さと、交通機関を利用するときのような交通費がかからない点も魅力的なところ。しかし、自転車に乗る場合には、自転車保険についても知っておかなくてはいけません。

  • 自転車保険は、各自治体で加入の義務化や努力義務化が進んでいる
  • 義務化で加入が必要なのは自分が加害者になる場合の補償
  • 自動車保険などに付帯されている場合もあるのでまずは加入している保険をチェック

自転車保険とは? 自分や他人のケガのリスクで備える

自転車はお子さんから高齢の方まで、幅広い年代の方が利用できる、便利で手軽な移動手段のひとつです。一方で心配なのが、交通事故にあうリスクです。

警視庁の「都内自転車の交通事故発生状況」によると、東京都内で発生した交通事故全体のうち、自転車が関わっている事故の割合は46.3%と全体の4割以上を占めており、年々増加傾向にあります。自転車を利用するときは、事故の被害者になる可能性、そして加害者になる可能性もあるのです。そうしたリスクに備えるための保険が、自転車保険です。

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自転車保険とは、自転車を運転しているときの事故で、他人にケガをさせてしまった場合や他人の物を壊してしまった場合の損害賠償や、自分がケガをしてしまった場合の治療費などに備える保険です。

補償内容は、自分が日常生活の中で起きる事故で加害者となってしまったときの個人賠償責任補償が基本です。商品やプランによっては、自分が被害者になった場合の通院・入院費用の補償や、事故の相手との示談交渉を保険会社が行う示談代行サービス、自転車の故障などで自力走行が難しくなったときに搬送を行うロードサービスなどもあるようです。

【図表1】自転車保険商品の一例
保険会社 商品名 概要
損保ジャパン サイクル安心保険 保険金額1億円または3億円と示談交渉サービスを
基本に、本人・家族の死亡・後遺障害や入院も
補償されるプランがある
楽天損保 サイクルアシスト 入院・手術・脂肪・後遺障害に備えられる。
保険料の支払いでポイントが貯まり、
また保険料の支払いにポイントを使用できる
東京海上日動 eサイクル保険 本人型・夫婦型・家族型の3種類から選択できる。
医療相談や介護相談などの付帯サービスが
用意されている

※ここでは保険商品の概要を説明しています。詳細は各保険会社のウェブサイトやパンフレットなどを必ずご確認ください。

各自治体で進む自転車保険の加入義務化

自転車保険は民間の保険会社の商品ですが、各自治体で加入の義務化あるいは努力義務化が進んでいます。令和6年4月現在、自転車保険加入の義務化・努力義務化が条例で定められているのは下記の地域です。

【図表2】地方公共団体の条例の制定状況(令和6年4月1日現在)
条例の種類 都道府県
義務化
(34都府県)
宮城県、秋田県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、新潟県、静岡県、岐阜県、愛知県、三重県、石川県、福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、岡山県、広島県、山口県、香川県、愛媛県、福岡県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
努力義務
(10道県)
北海道、青森県、岩手県、茨城県、富山県、和歌山県、鳥取県、徳島県、高知県、佐賀県

出所:国土交通省「自転車損害賠償責任保険等への加入促進

自転車保険加入が義務化されている地域で自転車に乗る場合、その地域の住民でなくても自転車保険加入が必要となります。また、未成年のお子さんも、保護者がお子さんを保険に加入させなくてはいけません。

自転車保険加入の義務化が進められている背景には、自転車側が加害者の事故で、損害賠償額が高額となるケースが出てきたことも要因としてあげられます。平成25年に兵庫県で起きた、当時小学5年生の児童が加害者となった事故では、約9,500万円の賠償を命じる判決が神戸地方裁判所より出されています。こうした自転車を取り巻く状況を踏まえて、兵庫県では平成27年に「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」が制定され、日本で初めて自転車保険加入の義務化が決定しました。

そして現在では各自治体で、被害者の救済を確実に行えるように、そして加害者側の経済的負担を軽減するために、自転車保険の義務化が同様に進んでいます。

自転車保険の検討時は補償の重複に注意!

義務化と聞いて、自転車保険の加入を急ごうとする人もいるでしょう。しかし、実は既に必要な保険に加入している場合もあります。

義務化で加入が必要なのは、自身が加害者になってしまった場合の損害賠償金を補償する保険です。自転車保険と名前がついていなくても、次のような保険に同様の補償が付帯されていることもあります。

【個人賠償責任補償がある保険の一例】
  • • 自動車保険
  • • 火災保険
  • • 傷害保険
  • • TSマーク付帯保険
  • • 共済  など

これらの保険に加入しており、オプションなどで個人賠償責任補償を付帯していた場合、既に義務化への対応が完了している可能性があります。補償が重複していても、受け取れる保険金が増えるというわけではなく、余分な保険料支払いが必要になる可能性もあります。まずは自身がどんな保険に入っているのか、補償額はどれくらいかを確認しておきましょう。

※保険商品や加入時に選んだプランによっては個人賠償責任補償がない場合もあります。保険証券などで補償内容を必ずご確認ください。

ただし、個人賠償責任補償は自身が加害者になってしまったときの補償です。通勤通学で毎日自転車に乗っていたり、自転車に乗るのが趣味であったり、自転車に乗る時間が普通の人より多い場合は、自分のための補償や幅広いサービスもある自転車保険を検討する、というのも方法のひとつです。上記の保険で補償額が少ないと感じた場合も同様に、自転車保険の検討をしてもよいかもしれません。

自分のニーズに応じた自転車保険選びをすること、そして保険に加入しているかどうかに関わらず、自転車を運転するときはしっかりと安全対策を取ること。自転車に乗る場合は、この2つに気を付けたいですね。

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