現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第77回は、半導体の製造工程で用いられるフォトレジストで世界トップレベルのシェアを誇る東京応化工業(4186)をご紹介します。

  • 東京応化工業は半導体の製造に使用するフォトレジストや高純度化学薬品に強み
  • 世界最高水準の高純度化技術と微細加工技術で生成AIなどの需要増に応える
  • 2024年12月期は最高益を見込む。福島と熊本の製造拠点の稼働にも期待

東京応化工業(4186)はどんな会社?

東京応化工業は、半導体の製造工程で用いられるフォトレジストの大手メーカーです。フォトレジストは半導体製造プロセスで使用される重要な材料の一つで、印刷技術を応用して回路パターンを形成するために使用されます。具体的には、光が当たる部分とそうでない部分を作り出し、これにより微細な回路パターンを作成するのに役立ちます。

フォトレジストは同社やJSR、富士フイルムホールディングスなどの日本企業が強みを持っており、中でも同社が現状グローバルでNo.1のシェアを確保しています。

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もう一つの製品の柱は、高純度化学薬品です。半導体回路の現像液や洗浄液、シンナーなど、こちらも半導体の製造工程に欠かせない存在です。半導体の製造はゴミの混入や金属不純物の混入に非常に弱く、異物が混入した薬剤で半導体を作ると、半導体の歩留まりと呼ばれる良品率が落ちてしまいます。
同社は50メートルの競技用プールにスポイト1滴分の不純物も許さないというレベルの、非常に純度の高い薬剤を製造しています。

東京応化工業は、1936年に創業者の向井繁正氏によって、前身の東京応化研究所として誕生しました。その後、炭坑用キャップライト向け蓄電池材料を苦労の末に開発したのち、1940年に社名を現在の東京応化工業としています。
その後はテレビ向けや電卓向けなど、日本の高度成長に欠かせない製品を開発するともに業績を拡大していきました。

半導体製造のイメージ
半導体の重要な材料であるフォトレジストは日本企業が圧倒的なシェアを持ち、東京応化工業は日本のトップメーカーのひとつ

生成AI向けに成長余地

フォトレジストは、髪の毛1本の直径の5000~1万分の1という非常に微細な半導体に回路を描くために欠かせない製品です。
最近では、生成AI用途の先端半導体向けでも新たな需要が広がっています。生成AI市場の規模は2030年に2110億ドルまで拡大し、2023年から年率平均(CAGR)で53%増と大きな伸びが続くと見込まれています。

AI向け半導体チップではGPU(画像処理チップ)とともに、HBM(高速度メモリー)という次世代メモリーを縦に積み上げて積層し、処理能力やスピードを高めています。積層する際にパンプ(突起)を形成するのですが、このバンプ形成にも同社のフォトレジストが活用されています。

フォトレジストの生産や開発には、同社の強みである世界最高水準の高純度化技術と微細加工技術が用いられています。また、長年半導体メーカーと二人三脚で作り上げてきた材料や製品のすり合わせにより、他社の参入が容易でないレベルのフォトレジストを提供しています。

東京応化工業(4186)の業績や株価は?

東京応化工業は生成AI向けや中国向けの旺盛な需要を背景に、7月に今期の業績予想を上方修正しました。今期2024年12月期は売上高が前期比19%増の1934億円、純利益が56%増の198億円とともに過去最高となる見込みです。為替の円安や、昨年計上した事業再編費用がなくなったことも増益要因となります。研究開発と株主還元などのバランスをとりながら健全な業績成長が続いています。

【図表】東京応化工業の株価(2022年10月~直近、週足)
東京応化工業の株価(2022年10月~直近、週足)

10月19日の終値は3625円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約36万円です。

株価は半導体市況への期待で3月に上場来高値4871円を付けました。その後は半導体株に利益確定売りが入ったこともあり、8月に2800円まで調整しましたが、その後は底入れ機運で持ち直しています。

2026年には、福島県の郡山工場内に約200億円を投資して新設したフォトレジストの生産新棟が稼働を開始する予定です。また熊本県では2025年に新たな高純度化学薬品の製造拠点が稼働する見込みです。

生成AIなどの拡大によるフォトレジストの需要増加はこれからも続くとみており、株価の上昇基調は変わらないと見ています。

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