宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回のテーマはREIT。その投資手法とメリット・注意点、NISAでのREITの活用について考えます。
- REITは不動産に投資する金融商品。NISAのつみたて投資枠では投資できない
- REITに投資できる主な方法は単体REIT、ETF、投資信託の3つ
- 分配金が魅力で、少額で手間もなく不動産に投資できるのがREITの特徴
REITはつみたて投資枠の対象商品ではない
【質問】
最近、新聞でREITが売れていると書かれているのを見ました。REITは耳にしたことはあるのですが、深く興味を持ったことはありませんでした。新NISAのつみたて投資枠で積立投資をするのに、REITってありなのでしょうか?
今回はREIT(不動産投資信託)について考察していきます。
前回がETF(上場投資信託)ですから、REITもその流れで、新NISAを活用するのに「何枠」で購入して運用すれば良いのかを考えていきます。
その名の通り、REITは不動産に投資する投資信託のことです。であれば、投資信託の仕組みで運用する商品しかないと思われがちですが、REITもETFと同じく、上場されている投資信託でもあります。
もちろん、以前から不動産を投資対象とする投資信託もあったのですが、上場投資信託(REITでは投資法人と言います)から先に知られていき、今ではREITの商品は幅広いラインアップとなりました。
REITに投資を行うためには、REIT自体を理解しないといけません。相談者のようにNISA制度の「つみたて成長枠」で積立投資が行えると、間違った理解をしてしまう場合があります。
基本的に、REITはつみたて投資枠の対象商品ではありません(バランス型の投資信託などのような、REITを混合した商品はあります)。
REITは分配金が重視される運用商品
不動産投資については、第11回の相談室でも若干説明させていただきましたが、一般的に株式や投資信託とは違った仕組みを持った商品です。
REITは、多くの投資家から集めたお金で不動産を購入して、管理維持していきます。そして、管理している不動産物件を貸すことで賃貸収入を得たり、売却などすることで売却益などを得たりします。この一連の流れを繰り返しながら、決算時に利益からコストを差し引き、投資額に応じたお金を分配金として投資家に支払う仕組みです。
REITは不動産一本に絞った運用であり、その分配金に注目が集まる商品です。テーマ型の投資というわけではないのですが、金利政策などにも影響されやすい面もあり、簡単にはいかない運用商品といえます。
運用で分配金を重視するとなると分配後の下落など価格の高低差が激しくなりかねないことからも、つみたて投資枠には不適合となっているのでしょう。
今回からはREITの種類と、NISAの活用に適しているかなど、数回に分けて見ていきます。
REITに投資できる主な3種類の金融商品
REITといわれる商品は大きく分けると3つの種類があります。
① 単体のREIT
まずは当初説明した、上場している①上場投資法人。単体のREITです。東証のREITは2025年8月15日現在63本(REITと似た仕組みの「インフラファンド」を含んだ本数です)。
投資先もREITによって「商業施設」「オフィスビル」「住宅」「ホテル」「物流倉庫」などさまざまな物件があり、単一の種類もあれば、複数の種類にまたがる物件に投資しているREITもあります。当然、ETFと同じく証券取引所に上場しているので、株式と同じようにNISAの成長投資枠で売買ができます。
② REITのETF
同じくREITに投資する商品に、②REITのETFがあります。要はREIT全体の値動きにより作られる指数への連動を目指すETF(上場投資信託)を購入して、REITに関わる方法です。
例えば東証REIT指数への連動を目指すETFを購入することで、日本のREIT市場全体に投資するのと同じような効果があります。上場しているETFなので、株式と同じく売買ができます。
ただ、手数料として保有期間に信託報酬がかかってきますので注意が必要です。当然、株式投資と同じようにNISAを活用できます。
③ REITの投資信託
そして最後に③REITの投資信託です。最もポピュラーな方法で、初心者でも購入しやすい商品です。
②と同様に複数のREITで成り立っており、唯一、証券会社以外に銀行でも購入できます。そして一般に単体のREITや、REITのETFより安い最低投資金額で買うことができる投資手法でもあります。
REITの投資信託には、主な種類としてインデックス型とアクティブ型の2つがあります。
インデックス型とは、東証REIT指数などの指数に連動するように作られた投資信託のことです。
アクティブ型は、その指数を上回る成果を目指す投資信託で、ファンドマネージャーと言われるプロ運用の手腕が問われます。
投資対象も「国内のREIT(J-REIT)」と「海外のREIT」に分けられ、運用中にかかる手数料である信託報酬なども違ってきますので確認が必要です。
3種類の運用の中でも、投資信託は手数料が高めになります。また、現状でアクティブ型の投資ができるのは①単体REITと③REITの投資信託しかありませんので、積極的な運用が好みの投資家にはお勧めできるかもしれません。
NISAの活用は、成長投資枠の対象商品のみできます。
REIT投資のメリット
REIT投資のメリットは以下の2つが挙げられます。
① 分配金が魅力
投資家にとって、REITの最大のメリットが分配金です。他の投資信託と違って、原則として不動産の運用で得た利益の大部分がそのまま投資家に分配されます。
REITは利益の90%以上を分配すれば法人税はかからないので、一定の分配金が必ず支払われる仕組みとなっています。今年度の東証REIT指数の予想分配金利回りは約4~5%といわれています。
② 手間がかからず、少額で不動産投資ができる
個人が現物不動産を買おうと思ったら大きい資金と、入居管理などの手間と時間がかかります。物件も、リスクヘッジのためにいくつも買うなど分散投資するはほとんど不可能です。
REITなら購入はもちろん、売却も市場や銀行などを経由して毎日、簡単にできます。安価な金額で投資ができるうえ、分散投資も銘柄を複数買うことで可能となります。
REIT投資の注意点
ここまでREITの種類と特徴について説明しましたが、私はやはり、REITは不動産投資に興味がある方向けかなと思っています。
REITは少額で購入でき、分配金も得ることもできますが、分配金=家賃収入と置き換えて投資できる方に向いていると思います。
ただ、値動きも分配金の出方によって左右されるのと、運用している投資法人や投資信託のファンドマネージャーと全国の投資家の投資行動により、価格変動リスクがあるのをわきまえておきたいものです。
そして単体REITも投資信託も、すべてのREIT中心の商品はNISAのつみたて投資枠を使えません。
次回は、これからのREIT運用はどうなのかを、個別の商品にスポットを当てて見ていきます。