宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、近年あらためて脚光を浴びている「不動産投資」「REIT(リート)」について考えていきたいと思います。

  • 不動産ファンドには「不動産特定共同事業」と「不動産投資信託(リート)」がある
  • REIT(リート)なら10~20万円ほどあれば、借金しなくても不動産に投資できる
  • 投資信託を通じてリートに投資する「リートファンド」が人気

不動産投資は怖くないし、お金持ちだけのものではない

前回は、関心が高まっている「テーマ型」の投資信託について、ESG(環境、社会、企業統治)を中心とした商品と個別の業種に絞った商品にスポットをあてて、その特徴や使い方について話をしていきました。
企業側も環境、社会、企業統治を重視することが投資家へのアピールにもなり、ESGに配慮する企業への長期投資が急速に広がっているのは事実なので、もし皆さまが株式投資をするのなら、銘柄選択の際に企業の開示情報もそれなりに参考にしていくといいと思われます。

さて、今回も特定の業界という意味では前回と同じ「テーマ型」に属するかもしれませんが、人気が高まっている「不動産」を題材にして考えていきましょう。

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【質問】
不動産を利用して運用する投資信託があるみたいですが、「なんとかリート」と言われても難しくて全然わかりません。そもそも不動産なんて、お金持ちが持つものとしか思っていませんでした。投資信託とはいえ、自分でも不動産を持てるのでしょうか? なんか値段も張りそうだし、リスクも高そうで心配です。

まず、不動産について私なりの考えを述べたいと思います。

不動産は決して、お金があって裕福な方が持つだけのものではないと考えています。
確かに、一般の方が預金がほとんどないところからマイホームを買おうと思ったら、頭金を貯めて20~35年のローンを組み、ローンの支払いと老後資金のために定年を延長しながらようやくローンを完済できる、という厳しい現実はあります。マイホームだけでなく投資先として不動産を買うような人は、「私とは違うお金持ち」と区別したくなる考えも理解できます。

後で触れますが、不動産に投資する仕組みやさまざまな運用方法を理解できれば、不動産投資は決して怖いものではないと思えるはずです。
例えば「不動産ファンド」と呼ばれる商品であれば、誰でも比較的簡単に買うことができます。

トラリピインタビュー

ここで言う「不動産ファンド」は、いくつかの不動産(マンション、ホテル、商業施設、物流施設、医療、介護施設など)に対して、多くの投資家からお金を集めて投資を行い、それによって得られた収益を投資家に分配するという仕組みの商品です。
不動産ファンドは、大きく分けると2つの種類があります。「不動産特定共同事業」「不動産投資信託(リート)」です。

「不動産特定共同事業」と「不動産投資信託」

「不動産特定共同事業」には、①任意組合型②匿名組合型の2つの形式があります。
一般的に知られているのが②匿名組合型です。投資家が匿名組合に資金を出資し、組合がその出資金で不動産を取得し、管理運営を行います。運営によって得られた収益が、投資家に分配されます。

①任意組合型との大きな違いは、任意組合型は投資家が実際に不動産を所有する形となるのに対し、②匿名組合型は不動産を得るのにお金を出資するけれど、現物不動産を取得するのは投資家ではなく組合なので(そのため「匿名」と呼ばれる)、投資家が所有権を持てないなどの制約があることです。
私も匿名組合に出資した経験があります。組合は高い分配金で出資を募り、資金を集めるのですが、収益が悪化すると決まった分配金が出ないことも多々ありました。投資期間もあらかじめ決められたものが多く、元本割れのリスクが高いと言わざるを得ないと思いました。 短期で値上がり益を狙いたい人向けの商品と言えるでしょうか。

そして不動産投資信託(REIT・リート)です。リートは、株式と同じように証券取引所に上場している商品です。証券会社に口座を持っていれば、いつでも気軽に売買することが可能です。リートの収益源は2つあり、ひとつは賃料収入を原資とした分配金による運用益(インカムゲイン)、もうひとつは不動産を売ったときに得られる売却益(キャピタルゲイン)です。
日本のリート(Jリート)は2001年2銘柄でスタートして、今では64銘柄まで増えています。

リートなら借金しなくても不動産に投資できる

よく言われるリートの特徴は、以下の4点です。

分配金利回りが高め(年2~7%)
株式とは異なる値動きが見られやすく、分散投資に向いている
物価上昇(インフレ)が起きると不動産価値と家賃の上昇が起きやすく、インフレに強い
④現物購入の不動産投資と違い、多額の現金を用意しなくても買える(1口あたり10~20万円前後の商品が多い)

一番のメリットは、何といっても「借金しなくても間接的に不動産投資に関わり合いが持てる」ということです。
現物の不動産を購入すれば、うまくいけば年10%を超える家賃収入を得られるかもしれませんが、不動産を買うにはある程度の頭金が必要になります。リートなら10~20万円あれば不動産投資ができます。いつかは現物不動産を買いたいという方も、頭金を用意する手段としてリートを使って資金を貯めることも可能です。

日本のリートが投資する不動産もさまざまです。当初はオフィスやマンション、商業施設くらいしかありませんでしたが、最近は物流施設やヘルスケア施設(養護施設や高齢者向け住宅など)のリートも増えてきました。現在は太陽光発電施設などを組み込んだ「インフラファンド」も6銘柄上場されていますので、調べてみるといいでしょう。

太陽光発電施設
リートの一種である「インフラファンド」には太陽光発電施設に投資するものもある

投資信託を通じてリートに投資する

今回の相談者が話していた「不動産を利用して運用する投資信託」というのは、不動産投資信託(リート)を組み入れた「リートファンド」と言われる投資信託を指していると思われます。
リートそのものに投資するためには証券口座が必要ですが、投資信託であれば銀行などでも買えます。現在は、複数のリートを組み込んで利益を追求するタイプのリートファンドが多数生まれています。日本だけでなく、米国など海外のリートに投資するリートファンドもあります。2019年は日本も海外も不動産が値上がりしたので、リートファンドの人気が非常に高まりました。

リートファンド全般に言えることですが、投資信託なので、販売手数料と運用管理費(信託報酬など)のコストがかかります。個別のリートを買う場合より手数料が高くなることは注意すべきでしょう。

リートの個別銘柄は証券取引所で取引するので、取引時間内(平日9:00~11:30、12:30~15:00)であればいつでも取引できます。リートは換金性が高く、売るタイミングによっては売却益を得られる可能性があります。分配金は、年2回の決算時に支払われます(株式と同じように、郵便局や銀行へ行って現金で受け取るか、口座に振り込んでもらう形になります)。

リートの手数料は証券会社での売買手数料のみですが、株式と同じく上場廃止もありえます。リートファンドであれば、たとえひとつのリートが上場廃止になっても、もともと複数のリートを組み込んでいるので、投資信託の運用は続きます。投資信託を中心に資産運用をしている方で、保有している商品の投資先が株式に偏っている場合は、リートファンドを組み込むことで分散効果を高めて、全体のバランスを取るのもいいと思います。

次回も引き続き「不動産投資」について考えていきたいと思います。

(次回は3月6日の更新を予定しています)

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