宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回のテーマも「利回り」。前回に引き続き、マンション投資などの現物不動産投資の利回りについて、今回は「地価の変動」に焦点を当てて掘り下げていきます。

  • 現物不動産投資は、赤字の時は給与所得との損益通算ができるなど節税効果がある
  • マンション投資の広告にある利回りは、空室リスクや地価の変動を考慮していない
  • 地価の上昇による売却益を加味した実質利回りは「DCF法」で求められる

現物不動産投資の節税効果

【質問】
こんなに物価も上がってきてたいへん。お金を増やすのにはリスクは当たり前のことじゃけど、金利も上がってきたから、定期預金も良いちゃないですか? 安心、安全パイだし。

今回も相談室第147回で紹介した商品の中で、利回りが3番目に低いと思われる「不動産」を考えます。

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金融商品選びの注意点と利回り商品のランキング

利回り商品ランキング

①債券 10,000円~(1%~)
②外貨預金(米ドル) 30,000円~(3%~)
③不動産投資 30,000円~100,000円(3%~10%)
④投資信託 30,000円~150,000円(3%~15%)
⑤株式投資 マイナス~300,000円(~30%)

前回までに述べさせていただきましたが、「現物不動産」の一番のメリットは「資産」であることです。借入金次第にもなりますが、家賃収入を得ながら長期で運用して、借入金を返済後、最後は現物不動産が自分の資産(財産)になります。

さらに、給与所得がある人なら、利回りがなくても税金を安くする効果もあります。マンションの賃貸収入から経費を差し引いて不動産所得が決まりますが、赤字が出て利回りがマイナスになったときは、そのマイナスを給与所得から引くことができます(損益通算)。ローンを組むことが前提で、給与所得がある間はローンを組みながら節税し、完済すれば実質利回りが上昇する。この節税効果が、マンション投資は利回りゼロでも有利であると言われるゆえんです。

また、相続時に賃貸中であれば、相続課税評価を抑えることもできるため、2重の節税も可能です。最近の物価高により、土地の評価よりも建物自体の評価が高くなっていますが、相続税は固定資産評価に準ずる評価にはあまり影響がないのも安心です。

現物不動産投資の代表格がワンルームマンション投資で、前号で述べたように中古物件であれば約5%の利回りを得ることも、条件付きですが難しいことでもありません。問題は頭金などの投資金額にありますので、大きな返済額にならないように、購入対象物件の価格を決めなければいけません。前号のように、600万円の中古マンションでも入居者が途切れなければ、長きにわたり運用ができていきます。

私も20年前から約3部屋を所有しながら運用して、入居者に賃料をいただいていますが、常に入居者がいてくれるとは限りません。入居者問題はそのまま空室率に跳ね返り、キャッシュフローの計画を変更せざるを得ないことになります。そして、不動産会社の広告に書かれている「5%」などの利回りには、経費が含まれていないことも頭に入れておく必要があります。これは前号で説明していますが、今回は利回りに潜むからくりに焦点をおいて説明していきます。

実質利回りを左右する「地価の変動」

不動産投資のリスクに、地価の変動があるのを忘れてはなりません。購入したマンション価格が、5年後10年後にどうなっているのか? 地価の変動は価格に組み込まれていません。地価が下落すればマンション相場は下がり家賃も下がる。結果として、利回りも下がる可能性があります。

広告に書かれている利回りは、家賃が下がらず賃借人が途絶えないことが前提です。家賃に連動する地価下落のリスクは、首都圏などの都市部での運用と、地方とでは雲泥の差があります。いまだに地価の下落が続く地方での不動産運用は、できれば避けたいものです。投資だけでなく、マイホームの購入時にも利回りを気にしながら、場所などを選定して購入するのも一つの考えです。

ところで、よくある相談に「住むなら賃貸と購入、どっちが良いのか?」がありますが、マイホームの資産価値を目安とするのもいいでしょう。ただし、利回り重視だと住み心地(幸せ感など)に難があるケースが多いため、利回りが低くても住み心地が良いマイホームもあり、これは数字で表せません。利回りはあくまで1つの指標ととらえ、決定要素ではないので、マイホームを終焉の場とするのか、売却まで考えて購入するかは決めておきたい。後者の場合「高く売れる物件」であることは重要な要素になるのかなと感じています。

マンション投資の「単純利回り」と「実質利回り」

地価の変動を加味した「DCF法」で実質利回りを計算

本来の利回りの考え方からすると、元になるのは毎月の家賃収入だけではないことは前号でも説明しましたが、先ほどの地価の変動も利回りに影響します。投資している間に不動産価格が上がればよいのですが、下がる場合もありますので、そこを加味しながら、家賃収入に加えて利回りを計算します。また、ローンを組めば、金利の把握もしなければなりません。

これらを計算に入れながら不動産の価値を判別する方法に「DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュフロー)」があります。不動産を売却する際の価格など、将来のキャッシュフローを現在価格に割り引いて評価していくことなどで、最もシビアな土地の価値判定に基づいて利回りを算出することができます。ただ、この方法は出口(売却する)前提の価格が重要なので、5年、10年後に値上がりすることを想定して算出しないと、儲けが出にくいことになってしまいます。

以上のことから、都市部での運用がいかに大事であるかがわかってきます。前号の中古マンションを例にして、利回りを計算してみます。

中古マンション

  • 価格 600万円
  • 鉄骨鉄筋コンクリート造
  • 専有面積23.24m2、1K
  • 平成3年竣工、築年数34年
  • 総戸数 170戸
  • 13階建ての7階
  • 管理積立費など 年間192,000円
  • 家賃年間収入 536,000円

そのまま利回りを計算すると、1年間の利益(536,000円)から1年間の諸費用(192,000円)を引いたものを投資金額(6,000,000円)で割ると、実質利回り(5.73%)がはじき出されます。

DCF法での実質利回りはどうでしょうか。不動産価格が値上がりした10年後に売却し、手数料などを差し引いて660万円が手元に入ると仮定します。60万円の儲けなので、1年あたり6万円の儲けと考えます。1年の儲けは、家賃(536,000円)から諸費用(192,000円)を差し引いた344,000円ですので、344,000円と60,000円を足して404,000円。600万円の元手で、毎年6.7%の利回りがあることになります。

都市部の不動産は10年後の値上がりが期待できますが、地方の不動産では、10年後に価格が下がってしまうこともありえます。仮に500万円の安値で売却した場合、DCF法では約4%の利回りとなりました。

あとは諸費用にローン金利、入居者が見つからないことを想定した空室率を加味して実質利回りを算出して、そこから損益分岐点を探ることになります。DCF法は不動産を購入する際の指標となりますので、参考にしてみてください。

次回(1月9日公開予定)は、投資信託についての利回りを考えます。